「本当にうまい野球選手」をプロとOBが選んだらこんな結果になった

「本当にうまい野球選手」をプロとOBが選んだらこんな結果になった

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/03/23
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先日、エンゼルスの大谷翔平が「一番野球がうまい選手になりたい」と語り、話題になった。では、プロの目から見て「本当にうまい選手」とはいったいどんな選手なのか。各世代のOBたちに聞いた。

現役最高のバッターは内川

「プロのピッチャーからすると、うまいバッターとは『インコースをさばく技術が高い人』です。なぜなら、人間の腕をたためる角度には限界がある。

特にインコースの高めのボールは、体勢を崩さずに強い打球をフェアゾーンに打ち返すのは至難のワザです。それがダントツにうまいのが、落合博満(元中日)さんと篠塚和典さん(元巨人)でした」(元中日・川崎憲次郎氏)

今回、「内角打ちの達人」として川崎氏が名前を挙げた両名が「うまいバッター」としてもっとも多くの6票を集めた。

三冠王を3度獲得した落合の打撃の凄みを、かつての広島のエース・大野豊氏が語る。

「普通、『体が開く』、すなわち、身体の正面がピッチャーに見えてしまうバッターは、体勢が崩れやすいので怖くないんです。

ところが、落合さんの場合は思い切り身体が開いているのに軸足に体重がしっかり残っているから、ボールを自分の間合いに呼び込み、曲がり際や落ち際のボールにも崩れずに対応できる。

『打ち取ったり』という絶対の自信を持って投げたボールを何度ヒットにされたかわかりません」

同じく広島OBの山崎隆造氏は、篠塚の名前を挙げた。

「打撃のうまさは、『柔らかさ』と直結するんです。柔らかさにおいて篠塚さんは卓越していた。通常、左バッターが三塁線ギリギリに打った打球は、スライスがかかって、ファールゾーンに切れていきます。

ところが、篠塚さんの打球は、三塁線と並行するように真っ直ぐ飛んでいく。ボールの角度を目でしっかりとらえて、打球の角度を計算し、なおかつ手首を柔らかく使って打つという一連の動きを、一瞬でこなしているんです。センスの塊でした」

いっぽう、往年の名選手たちと並んで名前が挙がった現役選手が、今週本誌のモノクログラビアに登場している内川聖一(ソフトバンク)だ。

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西武V5時代のリードオフマン、石毛宏典氏が語る。

「内川のバッティングを見ているとよくわかりますが、ランナーがいないときは引っ張り気味の打球を打つのに、ランナーがいれば柔軟に流し打ちしてタイムリーを稼いでくる。あれは、状況判断能力と技術の両方を兼ね備えてはじめてできること。

彼は、インパクトのタイミングで右の肘をぐっと絞って、体からバットを離さないから、あれだけの打球をコントロールできる。間違いなく現役最高のバッターだと思います」

では、ピッチャーの「うまさ」とは、いったいいかなるものなのか。

切れ味鋭いシュートで通算165勝を重ねた元巨人・西本聖氏が言う。

「個人的には、大谷翔平(エンゼルス)やダルビッシュ有(カブス)のように、力強い速球で押して三振をとるタイプのピッチャーは、『すごいな』とは思っても、『うまい』とは感じません。

私が唸らせられるのは、球速に恵まれなくても、コントロールを武器に巧みに勝ち星を積み重ねるタイプのピッチャー。

極端なことを言えば、10球中8球ぐらい狙ったところに投げられる技術さえあれば球速は必要ない。球種とコースの組み合わせを工夫すれば、実際には130kmのボールを150kmに見せることだってできるからです」

コントロールを駆使した打者との駆け引きのうまさにおいて、最多の4人のOBが名前を挙げたのが、江夏豊(元阪神)だ。

江夏の円熟期、広島時代のチームメイトだった前出・大野氏が語る。

「ふつう、僕らは初球に投げた球がストライクかボールかによってその後の投球の組み立てを変えていきます。

ところが、江夏さんは最初から自分の狙ったところに投げられるから、投球前にすべての配球を想定し、その通り投げれば、打ち取ることができる。

ご本人から直接『1球目はここに投げて、2球目はこうすれば、3球目で打ち取れるんだ』と教えてもらったこともあるのですが、生涯マネすることはできませんでしたね」

プロ野球史上歴代7位の284勝を挙げた元阪急・山田久志氏は、江夏の驚異的なコントロールの源泉は、独特の「間」にあったと分析する。

「同じ投手の目から見ているとわかりますが、江夏のフォームには、振りかぶって足を上げてバッターに向かっていく瞬間に、0コンマ何秒という間があるんです。

あのわずかな時間で、江夏の目は、ストライクゾーンと、バッターの動きをとらえている。あれこそが、唯一無二のプロのワザです」

では、対戦するバッターの目から見て「うまさ」を感じるのは、どういうピッチャーか。

ミスタードラゴンズこと立浪和義氏が言う。

「現役選手の中で抜群なのはオリックスの金子千尋だと思います。あれだけいい直球を投げられるうえに、変化球も自由自在。本当に器用です。

彼のピッチングフォームを見ればわかりますが、ストレートと変化球で腕の振りがまったく変わらない。予測がつかないんです。対戦したら、苦戦させられるだろうなと思うピッチャーです」

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走塁のうまさでは、1065盗塁の日本記録をもつ、福本豊(元阪急)が集中的に票を集め、他を突き放した。

福本と日本シリーズで対戦した元巨人の投手、関本四十四氏が言う。

「小柄なのに歩幅が広いとか、スタートの早さとか福本さんの走りには卓越した部分がたくさんある。

でも、あれだけの数を積み上げられた最大の要因は、塁に滑り込むときのスライディングのスピードがぜんぜん落ちないことにあります。普通、塁が近づくにつれて、ややスピードを落とすものです。でも、福本さんは最高速で突っ込める。天性の技です」

古田と谷繁二大捕手の違いとは

キャッチャーについては'90年代~'00年代のセ・リーグを代表する二人が票を分け合った。古田敦也(元ヤクルト)と谷繁元信(元中日ほか)だ。

同時代の阪神のエース、藪恵壹氏が語る。

「キャッチャーのうまさは、投手に気持ちよく投げさせるかどうかに尽きます。その点において、『動』の古田さん、『静』の谷繁が最高です。

古田さんが捕ると、いわゆる『際どいボール』が全部ストライクに見える。あれは、『フレーミング』です。

ストライクゾーンに入るか入らないかというギリギリのボールを捕球する瞬間に、古田さんはミットをすばやく内側に寄せてストライクに見せてしまう。審判の目を騙すわけです。

これに対して、谷繁はサインを出すとミットをピタッと止め、絶対に動かしません。ピッチャーは足をついてボールを離す瞬間に、キャッチャーのミットを目視している。

谷繁は、そのタイミングにあわせて『動かない的』を作り出しているのです。おかげで、コントロールのしやすさが格段に違う」

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身体能力か、それとも堅実さか。見方が2つに割れたのが、守備のうまさだ。

いちばん票を集めた(4票)のは広島の現役セカンド・菊池涼介だ。

自身もセカンド守備の名手として知られた仁志敏久氏(元巨人ほか)は、菊池の才能を絶賛する。

「プロ野球の歴史で菊池に並ぶ人間はいないと思います。守備は、反射能力、脚力、肩の強さと、野球の動きのなかでトータル的な能力が一番試される。だから、どんなに練習しても上達に限界があるんです。

その点、菊池はスライディングをして捕って、投げるという一連の動作を一瞬でこなすことができる。あれは天才というよりほかない。1試合に何回もファインプレーを出せる集中力も驚異的です」

一方で、前出の広島OB・山崎氏は、菊池の才能を認めたうえで「本当に『うまい』のは宮本慎也(元ヤクルト)だ」と語る。

「彼は捕球からスローイングに至るまで、最後まで基本を崩さず、お手本のようなプレーをします。どんな打球に対しても、基本を崩さずに対応することが、じつは一番難しい。

『華麗な守備』と『基本の守備』は違う。宮本は難しい打球をファインプレーにしないでひっそりと処理しているからこそ、うまいのです」

基本に忠実な守備の名手として、もうひとり名前が挙がったのが、小坂誠(元ロッテほか)だ。

長年、ロッテの主軸として活躍した山崎裕之氏が言う。

「ロッテ戦の解説をしていると、『これはヒットになるな』という打球が飛んだ先に、すでに小坂がまわりこんでいるという場面が幾度となくありました。

彼は、チームのピッチャーがどんなときにどんな球を投げるか、バッターがどんな打球を打つかを事前に予想できるから、打った瞬間に動くことができる。打球が飛んでくる前に勝負がついているのです」

プロ独特の視点を参考にすると、野球の見方がガラリとかわる。野球を見るのがもっと面白くなるはずだ。

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OB一覧①(五十音順・敬称略)/新井宏昌(近鉄ほか・'75~'92)、石毛宏典(西武ほか・'81~'96)、江本孟紀(阪神ほか・'71~'81)、大野豊(広島・'77~'98)、川崎憲次郎(中日ほか・'89~'04)、関本四十四(巨人ほか・'68~'78)、武田一浩(日ハムほか・'88~'02)、立浪和義(中日・'88~'09)、デーブ大久保(巨人ほか・'85~'95)、得津高宏(ロッテ・'67~'82)、仁志敏久(巨人ほか・'96~'10)
OB一覧②(五十音順・敬称略)/西本聖(巨人ほか・'75~'94)、松沼博久(西武・'79~'90)、藪恵壹(阪神ほか・'94~'10)、山崎武司(中日ほか・'87~'13)、山崎裕之(ロッテほか・'65~'84)、山崎隆造(広島・'77~'93)、山田久志(阪急・'69~'88)、若松勉(ヤクルト・'71~'89)

「週刊現代」2018年3月24日号より

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