働き方改革の本質は労働量の維持ではなく〝働く質の改善〟にあり!

働き方改革の本質は労働量の維持ではなく〝働く質の改善〟にあり!

  • @DIME
  • 更新日:2017/12/06

現在、さかんに言われている「働き方改革」。育児・介護休業制度の充実や在宅勤務制度の整備などの仕組みをつくったり導入を検討している企業は多いだろうが、日本マイクロソフトのワークスタイル変革を綴った『新しい働き方』(講談社)は、このような日本企業の取り組みは「成功しない」と一刀両断する。働き方改革で求められているのは、労働量の維持ではなく働き方の質改善であり、個人や企業の生産性を高めるものになっていないからだ。

本書の著者は、本当の働き方改革について、「時間・場所・個人の事情やハンディキャップを問わず、それぞれが持てる能力をそれぞれに最大限発揮できる環境を企業が用意し、その中で一人ひとりが『アチーブモア』(今よりももっと/より多くのことをできるように、といった意味)を実現する、すなわちより成果をあげ活躍する」(SESSION-1,15ページ)と言う。では、日本マイクロソフトはどのようにしてワークスタイルを変革し、一人ひとりがアチーブモアを目指せる環境を整えたのだろうか?

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■なぜ日本マイクロソフトはワークスタイル変革に取り組んだのか

日本マイクロソフトは2011年2月、都内5拠点にあったオフィスを品川に統合。そのオフィスは見学者が後を絶たず、最近では「ワークスタイル変革の聖地」とも呼ばれるほどだという。

会社の事業内容もあり、最新のITインフラを導入しやすく、時間・場所・個人の事情やハンディキャップを問わず働ける環境をつくりやすかったのは確かだろう。しかし、ITインフラの導入に関して言えば、その気になればどこにでもできることであり、日本マイクロソフトだからできたことではない。大事なのは、ワークスタイル変革の実行に至る強い動機ではないだろうか?

日本マイクロソフトが2011年にワーウスタイル変革に着手したのは、社内に問題を多く抱えていたからであった。労働生産性が上がらない、コスト効率が低い、女性の離職率が高い……。このほかにもまだ問題を抱えており、企業として非常に危うい状況に追い込まれていたという。この状況に危機感を覚えた経営陣が、ワークスタイル変革を決意した。

ただ、時間をかけて醸成された働き方や企業風土は、そう簡単には変わらない。ワークスタイル変革の難しさを、著者は次のように記している。

「ただし、単にICT(情報通信技術)を入れて終わりではありません。『なぜワークスタイル変革をするのか?』という企業としてのビジョンを社員が理解しなければ変革は進まない、と考えました。

『ワークスタイル変革』を実行するにあたって、従業員のマインド、労働環境、人事制度など、変革を阻害するさまざまな要因が次々立ちはだかりました」(SESSION-6,199ページ)

そして強い動機だけでなく、経営陣の強い決意も不可欠だ。覚悟を示し、本気であることを行動で示すことに限る。SESSION-6で、このように言及している。

「変革に着手した当時の日本マイクロソフトも、やはり同じような問題(2015年のテレワーク週間に賛同法人企業各社に協力いただいた意識調査結果で明らかになった、ワークスタイル変革を阻害する要因)が次々噴出しました。これらの『ワークスタイル変革』の阻害要因を、ひとつずつ潰していったのです。

『ここで立ち止まるわけにはいかない』

経営陣は本気でした」(SESSION-6,199-201ページ)

経営陣が本気であることを示すことによって大きく前進することになった、日本マイクロソフトのワークスタイル変革。すべての従業員のマインドチェンジを徐々に、確実した実行した後に、ITツールを拡充し、働きやすい環境を整えた。

■テレワーク勤務制度は「性善説」に立って導入

また本書で示唆に富んでいるのが、テレワーク勤務制度に関する見解だ。

日本マイクロソフトでは導入済みだが、現在、働き改革に取り組んでいる日本企業でも、家などオフィス以外の場所で仕事ができるようにテレワーク勤務制度を取り入れたり、導入を検討しているところがあるだろう。もし、導入を迷うとしたら、上司が見ていないところで怠けたり、サボったりしないかだと思われる。

この点に関する日本マイクロソフトの見解は、「性善説」に立つというものだ。次のように説明している。

「確かに、オフィス以外で仕事をする社員の中には、モラル不足で、勤務時間内であるにもかかわらず、テレビの前で寝転んでいる輩がいるかもしれません。しかし、性悪説に立ってしまうと、自由と責任を与えることができなくなってしまいます。リスクがあっても性善説をとり、評価制度で確実に管理しいていくことのほうがフェアであり、企業の生産性という観点から見ても健康的ではないか--それが私たちの考えです」(SESSION-6,203-204ページ)

外資系企業から「性善説」というワードが飛び出すとは思ってもみなかった。信じると同時に自由と権限と責任を与え、定期的に評価。評価も「いかに長く働いた」ではなく「いかに成果が出せるか」という観点から行なう。フェアで透明性が高いマネジメントが、テレワーク勤務制度導入の成否を決めるのだろう。

とかくITシステムの導入と社内制度の整備だけで語られがちな働き方改革だが、マネジメントの変革もセットで行なわないとうまくいかないことを、本書を読むと痛感させられる。

■自分を内円と外円に捉え直すことから始まるアチーブモアな働き方

そして最後に、日本マイクロソフトのワークスタイル変革が目指したアチーブモアについて触れておきたい。

本書では著者の例として、アチーブマモアな働き方をするために、まず自分を内円と外円に捉え直すことを挙げている。内円は自己管理など自分でコントロールできる領域、外円は外部環境など自分でコントロールできない領域のこと。この定義を踏まえた上で、アチーブモアな働き方をするため大切なことを次のように説明する。

「内円を広げるためには、自分の『強み』を把握することが重要です。自分のキャリアやバックグラウンドの中で、自分の能力、他者に勝てる領域、勝てない領域の棚卸しをするのです。そのうえで、自分にできないこと、勝てない領域については割り切ってあきらめることも、『最少の時間で最大の成果を生み出す』というエッセンシャル思考において非常に有効です。成果のためには、捨てる勇気、やらないことを決める覚悟も必要なのです。(中略)

自分の強みが理解できたら、いま置かれている環境で『アチーブモア』、すなわち、より多くの成果が出せることは何かを考え、そして、それを生かしてどんな自分になりたいのかという目標を立てます。最初は小さな成果、成功に思えても、行動を積み重ねることが自信につながり、自分の内円をどんどん押し広げることができるのです」(SESSION-3,93-94ページ)

経験を積み重ね上の立場になれば、内円の大きさは変わる。しかし、自然に内円が大きくなるのを待つのはアチーブモアな働き方ではない。意識的に内円を拡大することを目指して成果を少しずつでも積み重ねることが、アチーブモアな働き方なのだ。

日本企業でも目標管理による人事評価が普通になったが、内円を拡大することを明確に意識した目標設定ができているかどうかは別問題。働き方改革は、働く人の意識改革でもあるといえそうだ。

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『新しい働き方』

講談社 刊

越川慎司 著

1400円+税

文/大澤裕司

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