ラウンドワン、“値上げで若者殺到”の特殊現象...ほかでは体験できないような楽しみ方を実現

ラウンドワン、“値上げで若者殺到”の特殊現象...ほかでは体験できないような楽しみ方を実現

  • Business Journal
  • 更新日:2019/08/14
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ラウンドワンの店舗(「Wikipedia」より)

ラウンドワンが今年に入ってから絶好調だ。1~3月の既存店売上高は、前年同期比3.3%増、4~6 月が8.1%増だった。2018年4~9月が0.9%増、18年10~12月が2.1%減だったことを考えると、今年に入ってからの伸びのほどがわかる。ラウンドワンに何が起きているのか。

ラウンドワンは、「ボウリング」「ゲームセンター」「カラオケ」、そしてスポーツコーナー「スポッチャ」の4つのサービスを軸としたアミューズメント施設を展開する。ボウリングやゲーセンなどと聞くと、大昔に流行った“オワコン(終わったコンテンツ)”と考える向きがあるかもしれないが、ラウンドワンの最近の動向を見るとそうでないことがわかる。

かつてはどれも一世を風靡したコンテンツだった。1970年ごろにボウリングブームが起きたほか、80年代後半ごろにゲーセンで対戦ゲームに夢中になる若者が続出したり、90年代に入ってからはカラオケブームが到来するなど、どれもかつては「ナウい」(洗練されている)とされたコンテンツとして人気を博した。

ラウンドワンは80年に前身の企業が設立されたのが始まりだ。大阪府泉大津市にゲームセンター併設のローラースケート場を開設。82年にはボウリング場の経営を始めた。90年にボウリングとゲームセンターの複合施設をオープン。99年にはカラオケルームを設置した複合施設の展開を開始した。

ラウンドワンは店舗を次々と増やしていった。2010年代より前までは店舗数は増加傾向を示していた。しかし、08年9月のリーマン・ショックの影響もあり、10年代に入ってからは伸び悩むようになった。店舗数は110店程度で横ばいが続いた。レジャーの多様化や家庭用ゲーム機の普及も相まって、ラウンドワンは徐々にオワコン化し、苦戦するようになった。

既存店売上高は、16年3月期までは厳しい状況が続いていた。08年3月期から16年3月期までの9期において、前年を上回ったのはたった1期のみ。それ以外はすべてマイナスという厳しい状況が続いていた。

店舗数の伸び悩みと既存店の不振で、ラウンドワンの業績は低迷するようになった。12年3月期に895億円あった連結売上高は、16年3月期には835億円にまで減った。14年3月期と15年3月期には、最終赤字をそれぞれ計上している。

付加価値を向上させて値上げが奏功

ところが、17年3月期から風向きが変わった。この頃から人手不足を背景にアルバイト募集時の時給が高騰するようになったことが、ラウンドワンの追い風となった。時給上昇はコスト増につながり利益が圧迫された一方、メイン顧客の若者の所得の上昇につながり、それによりラウンドワンを利用する若者が増えたとみられるためだ。

さらに、体験型の「コト消費」が広がっていることも追い風となった。コト消費といえば、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンが代表的だろうが、どちらも来園者は増加傾向にある。オワコン化したカラオケも近年は手軽に利用できる娯楽として少しずつ盛り返しており、カラオケ大手の業績は好調だ。

こうしたことから、マイナスが続いていた既存店売上高は17年3月期に1.9%増のプラスに転じた。この期は国内8店を閉鎖したことも影響した。続く18年3月期は5.3%増、19年3月期は0.9%増と、3期連続でプラスとなっている。

前述したように19年に入ってからも好調だが、これは1月から順次実施した値上げが影響している。ゲームセンターのメダルの貸し出し価格とスポッチャの入場料を1月から、ボウリングとカラオケの料金を4月から順次値上げしたのだ。ラウンドワンはこれらの値上げが既存店売上高の向上につながったと分析している。

付加価値を高めた上で値上げしたことが奏功した。ボウリングとカラオケでは1月から、スクリーン画面とマイクを通じて、ほかの店舗にいる利用客と一緒に遊べる設備「ラウンドワンライブ」を使ったサービスの提供を開始。ほかの店舗の利用客とボウリングのスコアを競ったり、カラオケで一緒に歌ったりできるようになった。新たな楽しみ方を提案し、付加価値を高めることに成功した。

ゲームセンターでは、新型のゲーム機を適宜投入した。それらが好調だったという。スポッチャでは、電動式ローラースケートを新たに導入するなどコンテンツを充実させている。こうして付加価値を高めた上で、値上げに踏み切ったのだ。

値上げした後に売り上げが上がったというのは、興味深い話だ。というのも、たとえば、客の移ろいが激しい飲食業界では、単なる値上げは客数減、売上減につながりやすく、客単価が上昇しても、客数減を補いきれないケースが往々にしてあるためだ。しかし、ラウンドワンでは、そうはならなかった。それは、ほかで簡単に代替できない魅力がラウンドワンにあるためだろう。コト消費と若者の所得増が追い風となるなか、付加価値を高めたことが功を奏したといえる。

米国事業も順調

ラウンドワンの業績は好調だ。直近本決算の19年3月期連結決算は、売上高が前期比5.6%増の 1013億円、本業のもうけを示す営業利益が8.6%増の114億円だった。売上高は3年連続の増収で、16年3月期(835億円)からは2割強増えている。営業利益も3年連続で増益だ。

業績が好調なのは、オワコンの再生に成功して国内事業が上向いたためだが、米国事業が順調なことも大きい。むしろ米国事業の寄与度のほうが大きいといえる。

米国では10年に1号店がオープン。店舗を徐々に増やしていき、19年3月末時点で32店となった。郊外店が多い日本とは異なり、米国では大型ショッピングセンターに出店している。それにより、ショッピングセンターで買い物を楽しむ家族連れを取り込むことができたほか、夜間は大学生を中心とした若年層を取り込むことに成功した。米国は少子化が進む日本と異なり若年層が多く、またボウリングやゲームセンター、カラオケを楽しめる複合施設が少なかったことが顧客獲得につながった。

米国事業は好調だ。19年3月期の売上高は前期比41%増の163億円と大きく増えた。経常利益は14億円を計上している。同期において全米10州に11店舗を出店し、一気に32店舗にまで拡大した。

米国では今後数年で120~130店にまで増やす考えを示している。中国やロシア、アジア各国への出店も検討しているという。

米国では小売業の不振が追い風となっている。アマゾンなどネット通販の台頭で小売店舗の閉鎖が相次ぎ、出店候補地が増えているためだ。昨年10月には米小売り大手シアーズ・ホールディングスが経営破綻した。ショッピングセンターから退店するケースが増えており、ラウンドワンはその跡地に狙いを定めている。

好調な米国事業と復権しつつある国内事業を背景に、20年3月期は大幅な増収を見込む。売上高は前期比7.9%増の1093億円、営業利益は3.7%増の118億円を計画している。オワコン企業から脱却し、グローバル展開の「ナウい」企業に変わることができるのか。

(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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