次にくる技術トレンドは〝放っておいても自己修復する力〟

次にくる技術トレンドは〝放っておいても自己修復する力〟

  • @DIME
  • 更新日:2017/11/13
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生物が持つひとつの特色に“自己治癒力”がある。スマホなどの便利なガジェットも、破損してしまえば修理に出すなり買い換えたりしなければならないのが物質であることの哀しい宿命だが実は今、物質が自らの力で“自己修復”できるようになる研究が各方面で行なわれているのだ。

■切断されても大丈夫な“磁気インク”ケーブル

この10月、埼玉県の電力施設で送電線のケーブルが燃える火災が起き、電車の運行が止まる事故が起きた。また今月初旬にはJR高崎線の駅で信号通信ケーブルが損傷し、長時間の運転見合わせを余儀なくされた。

特に送電線のケースでは施設の老朽化が指摘されることになったが、もしケーブルに“自己修復”機能があったらこのような事故はきわめて起り難くなるだろう。奇しくもこうした中、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが先頃「自己修復するインク」を開発したことを学術誌「Science Advances」で発表している。

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The Verge」より

同校ナノテクノロジー工学の研究チームは、磁石の原材料に使われているネオジムをマイクロ粒子のレベルにまで微細に砕いてインクにした。この磁気を帯びたインク、いうなれば“磁気インク”を配合した素材で電気回路を作成したのだ。

将来、衣服に組み込む“ウェアラブルデバイス”がますます普及すると考えられているが、この電気回路もまた衣服にプリントすることを想定している。当然衣服は着脱の際や、運動の際に伸縮を余儀なくされるが、その時に回路や機器がダメージを受ける可能性は拭い去れない。また脱いだ服を意図せずとも乱暴に取り扱ってしまうケースもあるだろう。

今回開発された“磁気インク”はそのような将来を見越して、もしもダメージを受けて切断されても“自己修復”する能力を持っているのだ。

「衣服に“プリント”する電子技術として、我々は人間の皮膚と同じように伸縮し、怪我からも自然治癒できる能力を与えたいと思いました」と、研究チームの一員であるアメ・バンドカール氏は「New York Times」の取材に応えている。

研究チームが公開した動画では、シャツの袖に貼られたこの“磁気インク”の回路を布ごとハサミで切断した後、LEDライトを再び点灯させるまでに自然に回復する様子が描写されている。ウェアラブルの用途のみならず、この素材を使って作られた通信ケーブルならトラブルが起っても電車の運行への被害は最小限に抑えられそうである。

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◎動画はコチラ

今の時代、磁石は100円ショップなどでも気軽に購入できることからもわかるように、きわめて低コストで生産できることもこの“磁気インク”の有望な点だ。したがって、身の回りのさまざまな日用品に適応できる可能性が膨らんでいるのだ。実用化が待ち遠しい技術のひとつである。

■破けても穴が開いても“自己修繕”する服

昨年、ペンシルベニア州立大学の研究チームがイカの足(触手)の吸盤にある「環歯」の構造を分析して、自己修復する強力なプラスティックを開発したことが発表されて話題となった。研究チームは自己修復能力が高いイカのDNAを分析して、環歯を復元する働きを担う遺伝子コードを解明。この発見をもとにして自己修復機能を持ったタンパク質を作ることに成功し、それを溶媒剤で固め、自ら傷を治す能力を持ったプラスチックを開発したのである。

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Live Science」より

さらに同チームの研究は進んでおり、イカ由来のタンパク質で布地を修復する技術を開発したことが先日報告されている。転んで服が破けたり穴が開いたりしても、この技術でコーティングされていれば自ら修復されるという画期的な技術なのだ。例えば科学防護服などは穴か開いてしまえばその実用性はほとんどなくなるため、分野によってはきわめて重宝される技術になるだろう。

今回の成果を紹介した動画では、液状タイプのタンパク質でニットの繊維を繋げたり、空いた穴に当て布をして簡単に補修できる様子が繰り広げられている。もちろん接着剤などでくっつけているのではなく、イカを研究して特別に開発されたタンパク質の液体を使い、繊維レベルで“修繕”されたのである。木綿、ウール、ポリエステルなどの一般的な素材で効果を発揮することが確認されている。

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◎動画はコチラ

単に液体に浸して修復するだけでなく、機械式洗濯機で洗うようにして衣服のダメージを回復させる方策も考えられているという。擦り切れてクタクタになった服が、洗剤の代わりにこのタンパク質で“洗う”ことで再び新品に近づくということだ。つまりお気に入りの服をこれまでよりもずっと長く着続けることができるようになるのである。

また医療への応用も考えられていて、体内に埋め込む器具のコーティングに活用したり、傷を早く治す生分解性ジェルとしての開発も構想されているという。食べて美味しいばかりではないイカの秘めたポテンシャルに感服させられる話題ではないだろうか。

■ヒビ割れを自己修復する“生きたコンクリート”

世界各地で地震が頻発している昨今、巨大地震への備えがますます意識されている。時折発覚するマンションの“耐震偽装”などもあり、建物の耐震強度にも厳しい目が向けられている昨今だが、一方で鉄筋コンクリートの建物がいつまでも頑丈であり続けることも不可能だ。

鉄筋コンクリートの致命傷はヒビ割れにある。経年劣化で乾燥が進んだり、小規模の地震などが原因で発生した建物表面のヒビ割れが雨水の浸入を許し、鉄筋をゆっくりと腐食させていくことで強度が徐々に低下していくのだ。

そこで考案されたのがヒビ割れを自己修復するコンクリートだ。オランダ・デルフト工科大学のヘンク・ジョンカーズ教授が開発した“バイオコンクリート”は、ヒビ割れを自ら発見して自力で治してしまうという“生きたコンクリート”なのだ。

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CNN」より

2006年から“バイオコンクリート”の研究に取り組んでいるというジョンカーズ教授は、ある時期にバシラス属のバクテリアに着目した。このバクテリアは、アルカリ性のコンクリートの中で酸素や食料がなくとも長く生き延びて胞子を生み出す能力を持っているからだ。

そして試行錯誤の末、自然劣化する素材で作った極めて小さいカプセルを開発。このバクテリアと乳酸カルシウムをそれぞれ極小のカプセル容器に入れて、コンクリートに混ぜ込み“バイオコンクリート”を完成させたのである。

もしこの“バイオコンクリート”の表面がヒビ割れした場合、雨水などのヒビ割れから浸入した水でカプセルが溶け、バクテリアが“生き返る”のである。生き返ったバクテリアが発芽する過程で、同じくカプセルが溶けて出てきた乳酸カルシウムに反応し、カルシウムと炭酸イオンを結びつける働きが起る。これが結果的にヒビ割れを接合する効果を発揮するということである。

建物の耐用年数が最大で200年にまで伸びるというこの“バイオコンクリート”は、地震が多い日本では特に有望な耐震建築技術として今後さらに注目を集めるものになりそうだ。

文/仲田しんじ

フリーライター。海外ニュースからゲーム情報、アダルトネタまで守備範囲は広い。つい放置しがちなツイッターは @nakata66shinji

※記事内のデータ等については取材時のものです。

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