ハーレー伝統のロー&ロングのフォルムのまま驚きの走りを実現したHarley-Davidson「Softail FXDR114」

ハーレー伝統のロー&ロングのフォルムのまま驚きの走りを実現したHarley-Davidson「Softail FXDR114」

  • @DIME
  • 更新日:2019/07/21
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未完成な人は、魅力的だ。あるべき自分の姿をめざして努力し、もがき、時には壁にぶつかって挫折し、そこからまた立ち上がる。人が完成形に近付いていく過程は、凸凹して、紆余曲折があって、ドラマチックで、感動する。

未完成な工業製品は、魅力的と言えるだろうか? ほとんどの場合、ノーだ。映りの悪いテレビ、冷えない冷蔵庫、暖かくならないコタツ、遅いパソコン……。彼ら/彼女らがどんなに頑張っていたとしても、そこにドラマや感動を見出すことは難しい。せいぜいイライラして買い替えるぐらいだ。

ところが、である。ことバイクに関して言えば、未完成なほど魅力的ということがあり得る。しかも、十分に。ピーキーなエンジンやクセのあるハンドリングは乗りこなしの楽しさをもたらしてくれるし、ヘンテコなデザインは他にない個性と受け止められる。「バイクは人間に近い乗り物」とよく言われるが、未完成さに魅力があるという点も、実によく似ている。

誤解を恐れず言ってしまえば、そのことを具体的に分かりやすく教えてくれているのが、ハーレーダビッドソンのバイクたちだと僕は思っている。「未完成」というと語弊があるが、ハーレーのバイクには間違いなくスキがある。スキだらけ、と言ってもいい。それが計算尽くであえて作られた意図的なスキなのか、アメリカンの鷹揚さが生み出す天然のスキなのかは分からないが、いずれにしてもそこが大いにライダーを惹きつける。

鼓動と言えば聞こえはいいが、大排気量Vツインエンジンはズダダダンダンと全身を揺さぶる。ボディの迫力に比例して車重があるので、ブレーキングは早めに掛けた方がいい。バンク角は決して深くないので、旋回には気を使う……。

工業製品としてのバイクは、振動をなくし、制動性能や旋回性能を高めることを是としてきた。だがハーレーは堂々とその真逆を行きながら、独自の魅力を振りまき、熱烈なファンを惹きつけて止まないのだ。

よく曲がり、よく止まるハーレー

……と、常日頃から思っていたところへきて試乗したHarley-Davidson Softail FXDR114は、拍子抜けするほど工業製品としてもよくできたバイクだった。ライディングポジションは独特だ。上半身はやや前傾気味ながら足は前に曲げ出し、体がコの字になる。スポーツバイクなのかクルーザーなのか、どっちつかずだ。ずっしりとした車重も直線での怒濤の加速も、いかにもハーレーらしい。

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フォワードステップでのスポーツライディングには若干の心許なさを感じるが、どっしりとした安定感をベースにしたコーナリングが徐々に楽しくなってくる。新しいハーレーの姿だ。

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ロー&ロングなハーレーらしいフォルムは健在。フロントフォークもノビノビと寝ている。このスタイルからは、コーナリング性能の高さが想像しにくい……。

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シンプル&コンパクトなメーターまわり。キーレスイグニッションによりキーホールはない。ディスプレイは5インチで、燃料計を常時表示。ギアポジションやエンジン回転数、後続可能距離などは切り換え表示が可能だ。

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剥き出しのエアクリーナーからトライオーバル形状のマフラーへ。その間をマッシブなエキゾーストパイプがつなぐ。力強い空気の流れを可視化したデザインは、迫力たっぷりだ。

だが、FXDR114はブレーキがよく効くし、何よりも旋回性能が非常に高いのだ。「だが」なんて逆接の接続詞を使うのもどうかと思うが、ハーレーらしからぬスキのなさに思わず「……えっ」と息を飲む。

一般的なハーレーのイメージだと、直進安定性が極めて高くクルージングにはもってこいなものの、旋回に入ろうという時にはそれが災いし、よいしょとハンドルを切ってやる必要がある。そしていったんハンドルが切れ始めると、今度は止めどなく切れ込んでしまい、オタオタする。これはもう車体ジオメトリー的に避けがたいのだから、仕方ない……ものかと思っていた。

そこへきてFXDR114は、見た目こそロー&ロングでハーレー然としているが、今までのハーレー像とはかけ離れたコーナリング性能を発揮するのだ。ごくナチュラルなハンドリングで、なおかつハイスピードでも安定安心のコーナリングが可能なハーレーが存在し得たなんて!

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スポーティな倒立式フロントフォークはショーワ製φ43mm。レイク角は34度もあって基本的に直進安定型だが、ハンドリングは実にニュートラル。コーナリングを楽しめるハーレーだ。

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軽量高剛性なアルミ製スイングアームを採用。スポーツライドへのハーレーの意気込みが感じられる装備だ。標準ではシングルシートが装着されているが、オプションでタンデムも可能に。

よく見れば、マフラーの形状がトライオーバルで若干カチ上げられているなど、バンク角を稼ぐ工夫が見られる。ハーレーのWEBサイトにはリーンアングル(=バンク角)が記載されているのだが、FXDR114は右32.6度、左32.8度とある。これはソフテールファミリーでは最大で、ロードスターの右30.8度、左31.1度よりも深いのだ。

もちろん、コーナーを激攻めできるタイプじゃない。すべてのハーレーがFXDR114になろうとしているわけでもない。ただ、FXDR114は新世代ハーレーの旗手とも言われており、今後のハーレーのあり方を示唆していることは間違いない。

工業製品としての完成度を高め、コーナリングさえも楽しめるFXDR114。実によくできている。スキがない。……ただ、これがハーレーにとって褒め言葉になるなのかどうかは分からない。

取材・文/高橋剛(たかはし ごう)
4輪レース専門誌編集部、広告代理店勤務などを経て、2000年よりフリーライターに。バイク専門誌や釣り雑誌を中心に活動している。好奇心の範囲はバイク、クルマ、釣り、家電、アウトドア、動物など幅広すぎて収拾がつかない日々

撮影/長谷川徹(はせがわ とおる)
広告代理店勤務のカメラマンとして5年間活動し、フリーランスに。雑誌、WEB、カタログなど多彩な媒体で活躍。二輪、四輪レースを始め、バイク、クルマ、人物、ブツとジャンルを問わずキレのよい写真を提供し続けている

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