恋心を利用する狡猾な男の罠。甘い言葉に騙される女と、巧みに操る男

恋心を利用する狡猾な男の罠。甘い言葉に騙される女と、巧みに操る男

  • 東京カレンダー
  • 更新日:2017/12/12

結婚に適した男は、30歳までに刈り取られる。

電車で見かけた素敵な男は大抵、左手に指輪がついている。

会社内を見渡しても、将来有望な男は30歳までに結婚している。

そんな現実に気づいたのが、大手不動産会社勤務の奈々子・28歳。

同世代にはもう、結婚向きの男は残っていない。ならば・・・。

そうして「青田買い」に目覚めた奈々子は、幸せを掴むことができるのか・・・?

先週、先輩社員・中村に誘われ、二人で食事に行くことになった奈々子。それ以来、奈々子にはある変化が訪れていた・・・?

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「奈々子ちゃん、お疲れさま。これ、差し入れ」

中村が奈々子の耳元で囁き、チョコレートを置いた。

奈々子は顔を上げ、恥ずかしさを隠しながら中村に会釈すると、二人の間に甘い時間が流れた。

「明日までには資料の作成も終わります。遅くなり申し訳ありません」

周囲に親密さを悟られぬよう、丁寧な敬語を使うことでビジネス上の関係を強調する。

「ありがとうございます」

さっき耳元で“奈々子ちゃん”と呼んだ時とのギャップに、奈々子はくすぐったいような気持ちになった。

二人で食事をして以来、中村と奈々子は急速に距離を縮めていた。

今の奈々子は、中村から頼まれた仕事で目が回るほど忙しい。だがそれでも頑張れるのは、彼のためだろうか・・・?

−違う、違う。私は責任感が強いだけよ。

自分のための言い訳を繰り返す。

「岡田さん、この資料なんですけど・・・」

作業の手をとめてぼおっと中村の後ろ姿を見ていると、新入社員の田中が大量のファイルを持って奈々子のところにやって来た。

「ごめん、後にして」

ピシャリと言うと、しょんぼりと席に戻る田中のことは気にせず中村の背中に目を戻す。

あの夜、中村は奈々子を抱きしめた。その温もりが今の奈々子の原動力といっても過言ではない。

あの夜。中村と奈々子に何があったのか・・・?

心の隙間を塞ぐ優しい言葉に騙される?

その日、待ち合わせ場所である東京ステーションホテルの入り口に向かうと、すでに中村の姿があった。

ライトアップされた東京駅に佇む彼の姿は、まるで絵画のように美しく、直視出来ない奈々子は思わず地面に目を逸らす。

しかし、地面に映し出された彼のシルエットまで美しく、奈々子は観念するように顔を上げて中村の元に向かった。

「お待たせしてすみません」

「ううん。岡田さんとの食事が楽しみで、10分も前に着いちゃったよ」

ニコッと笑った中村が「行こうか」と、奈々子を促した。

『焼鳥 瀬尾』へ到着すると、二名用の半個室に通された。

「この席しか空いてなかったんだ」

中村は、何かの秘密を共有するように、いつもより小さい声で言った。いきなり二人きりの空間に押し込まれた奈々子は、緊張で萎縮する。

−ここしか空いていなかったって、本当かしら。 実は意図的にここを予約したんじゃないの・・・?

奈々子が頭の中で中村の真意をあれこれ想像していると、中村が顔を近づけてこう言ってきた。

「肌めっちゃきれい。触りたくなるわ」

中村の綺麗な茶色の瞳に見つめられ、奈々子の心臓がドクンドクンと大きく鼓動する。軽くパニックに陥った奈々子は、うまい返しも見つからず、モジモジすることしか出来ない。

無言が続く奈々子を見かねたのか、中村は話題を仕事に切り替えた。

「ねぇ、横浜の倉庫街の案件について詳しいの?」

「今日倉庫で資料を探してた件ですよね。何度か関わってるので。あの案件、色々問題だらけなんですよ。資料が会社別になっていたり・・・」

「ふぅん」

それからひと通りその件で話すと、最後に中村が一瞬ニヤリと笑ったように見えたが、すぐにいつも通りの涼しげな顔に戻った。

ーあれ、私何か変なこと言った・・・?

中村の表情の変化が気になったが、気にし過ぎも良くないと自分に言い聞かせ、他の話題を探す。

最初こそ警戒していた奈々子だが、お酒も手伝って次第に気分が開放的になっていった。

それを察した中村が、待ってましたとばかりに奈々子を口説き落としにかかってきた。

「奈々子ちゃん、会社ではしっかりしてるのに、酔うとこんなに色っぽいなんて。ぐっとくるわ」

さらに中村は、奈々子の頭を撫でながら「頑張り屋さん。たまには頼って良いんだよ」と囁く。

奈々子は戸惑いながらも素直に嬉しく、仕事では埋めることの出来ない心の隙間が、愛情で埋められていくような温かさを感じた。

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「今日はありがとうご・・・」

奈々子がお礼を言ってタクシーに乗り込もうとすると、中村が奈々子を思い切り抱きしめた。

「ごめん、可愛すぎて、つい…。今日はありがとう。また明日」

突然の出来事に驚いたものの、中村は自分に好意があると確信した奈々子は、帰りのタクシーで手帳を開き、クリスマスイブにハートマークを書き込んだのだった。

中村の意図が明かされる。その意図とは?

好意を利用して騙す男

−やっと終わったぁ!

奈々子が、資料の作成を終えたのは21時過ぎ。渾身の力作が出来上がった。

ふぅーっと伸びをすると、奈々子は背後に人の気配を感じた。

恐る恐る振り向くと、そこに立っていたのは田中だった。奈々子は、中村ではなく田中が立っていたことに落胆する。

「どうしたの、お化けみたいな顔して」

「僕、営業向いてないと思うんです」

田中は今にも泣きそうな顔で、奈々子に訴えてきた。

「だから、ラーメン食べに行きませんか?」

「だからって何よ?接続詞おかしいわよ」

「すいません。岡田先輩にアドバイスをいただきたくて」

面倒見の良い奈々子は、普段なら付き合うところだが、今回は残業で疲労が溜まっていたため見送ることにした。

それに、明日は中村に資料を渡す予定だ。お礼に食事に誘われるかもしれないから、今日は肌の手入れを入念にしておきたい。

「ごめん、今日はパス。来週はどう?」

「分かりました・・・」

田中は、がっくりと肩を落として残念そうに席に戻っていった。

その後ろ姿を眺めながら、年下が相手だと自分はいつも頼られる側、リードする側になるのかぁという漠然とした不安がよぎる。

昔から、しっかりしている、面倒見が良いと言われてきた奈々子。しかし本心は、弱音を吐いたり、時には厳しい助言をくれるような頼れる相手が欲しいのだ。

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翌朝奈々子は、中村から会議室に呼ばれた際に資料を渡した。

中村に頼まれて作成した、横浜一帯にある倉庫の築年数マップだ。

今まで各倉庫の所有会社ごとに資料がまとめられていたため、地域別にはなっていなかった。それを奈々子が、各倉庫の所有会社を調べて築年数を洗い出し、それらをマップにまとめたのだ。

奈々子が資料を渡すと、中村が目を大きく見開いて資料を眺め、感嘆の声をあげると、「奈々子ちゃん、さすがだよ。本当にありがとう」と奈々子の手を握りしめた。

奈々子は、お礼の食事への誘いを待ったが、今日はないようだ。

−中村さんも忙しいのかな。また今度に期待しよ。

がっかりしたものの、まずは中村の喜ぶ顔が見れてほっと一安心だった。

翌日。営業部全体の戦略会議が行われ、運営側として準備を進めてきた奈々子も参加させてもらうことになった。

課長達の冗長なプレゼンの後は、いよいよ中村の出番だ。

上質そうなスーツをビシッと着こなし、スマイソンのドキュメントケースを片手に持って颯爽と現れた中村の姿を見つめる。周囲を見渡すと、会場にいる女性達全員もうっとりと彼を見つめていた。

プレゼン資料がスクリーンに映し出され、タイトルを見た奈々子はあれ?と思った。

「横浜倉庫街における戦略的な開発について」

プレゼン終盤、中村はここぞという場面で、奈々子が作ったあのマップを写し出した。

すると、それまではしんとしていた会場から、「おぉ」「こりゃ素晴らしい」という感嘆の声が沸き起こった。

プレゼンを終えた中村に、執行役員や部長達が質問する。

「先ほどのマップは中村くんが作ったのかね?」

「はい。今まで、当社の情報は所有会社別に保管されていました。これでは地域の把握が難しいので、今回マップを作成しました」

上層部の満足気な声を聴きながら、奈々子は、自分の世界がガラガラと崩れ落ちていくのが分かった。

中村のプレゼン内容はすべて、奈々子が指摘した会社の抱える問題点だった。それに、あのマップを作成したのは紛れもなく奈々子なのだ。

−騙された・・・。

中村は、奈々子に近づいて情報を引き出し、さらには奈々子の好意を利用して仕事を頼み、自分の手柄にしたのだ。

奈々子が気を失いそうになっていると、ガタンと誰かが椅子から立ち上がる音が聞こえた。

ふと目をやると、田中が顔を真っ赤にして、怒りに満ちた目で中村を睨みつけて、こう言った。

「中村さん。その資料を作ったのは・・・」

▶NEXT:12月13日 水曜日更新予定
次週、新入社員の田中が男気を見せる?!案外しっかり者だった?

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