サウジ皇太子、ライバルなき権力の座への道

サウジ皇太子、ライバルなき権力の座への道

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/11/13
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【リヤド(サウジアラビア)】サウジアラビアでは高齢の国王とその息子が、伝統だった総意による統治をぶち壊し、汚職の取り締まりを加速している。これまでに拘束された王族は数十人に上る。

世界最大の王室が徐々に縮小され、2人の重要人物に絞られつつあることが王族などの一斉拘束によってこれまでになく明確に示された。その2人とはサルマン国王と息子で後継者のムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32)である。父親がおよそ3年前に即位してから、皇太子はライバルなき権力の座への道を歩んでいった。

誰も手出しができないと考えられていた年長の王子たちはサルマン国王の下で、権力から遠ざけられたり発言を封じられたりしている。事情に詳しい関係者によると、政府が現在行っている汚職捜査の一環で、それ以上に多くの王族が銀行口座を凍結されたり、海外への渡航を禁止されたりしている。

関係者の一人によると、王室内では「誰もが逮捕や資産凍結におびえている」という。

黒い線:王位継承者、赤い丸囲み:拘束された王子、黄色の丸囲み:昇格された王子、灰色の丸:直系血族

これらの措置によって政治的権限はもっぱら王室の一つの家系に集中。サルマン国王とムハンマド皇太子は敵がほとんどいない状態で思い切った経済・社会改革を進めることが可能になった。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに所属するアナリストで、サウジ政府に批判的なマダウィ・アル・ラシード氏は「サルマン国王とその息子の舵取りで、サウジアラビアは今までとは異なる王国、つまり権力が1カ所に集中し、その他の権力中枢が排除される王国になりつつある」と話す。「サルマン国王と息子の統治に逆らうことは許されないということだ」

ミスター・エブリシング

サウジアラビアの王位はこれまで、近代サウジを建国したアブドゥルアジズ・イブン・サウード国王の息子のうち6人の兄弟間で継承され、歴代国王は兄弟のリーダーとして統治に当たった。年長の王子が閣僚の大半を占め、何十年も同じポストにとどまることも珍しくなかった。省庁は王室内のさまざまな家系の支配領域と化していた。

今、サルマン一族以外に政府中枢で大きな影響力を持つ年長の王子はいない。王子が大臣を務める省庁は3つの治安関係の省だけで、ここまで少ないことは過去になかった。

サルマン国王と息子の統治に逆らうことは許されないということだ

最近まで幅広い政治的影響力を握っていたムタイブ・ビン・アブドゥッラー王子は、故アブドゥッラー国王の息子で、サウジに3つある主要治安部隊の1つである国家警備隊のトップだった。

サウジ政府高官はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、ムタイブ王子が調達関連で数百億ドル規模の不正を行った罪に問われており、機器の運転や維持などの契約を自身の会社に発注した疑いが持たれていると述べた。

閣僚ポストにあるもう一人の王子はアブドゥルアジズ・ビン・サウード・ビン・ナエフ王子で、最近、内相に任命されたばかりの若い王子だ。しかし内務省は7月に多くの権限を奪われ、以前ほどの影響力はない。国家安全保障の任務はサルマン国王直属の新たな組織に移管された。

ムハンマド皇太子への権力集中はますます進み、「ミスター・エブリシング(全てを牛耳る男)」というあだ名までついた。皇太子は国防から石油政策、経済改革に至るまで政府の主要ポストの全てを握っている。

重要ポストに就くサルマン国王の息子はムハンマド皇太子だけではない。ハレド・ビン・サルマン王子(29)は今年4月、サウジアラビアにとって海外での最重要ポストである駐米大使に就任した。

しかし、ムハンマド皇太子は間もなくサウジ王室の頂点に立つだろう。王立裁判所に近い複数の人物によると、サルマン国王は数カ月のうちに退位し、ムハンマド皇太子に譲位するとみられている。サルマン国王は退位することで円滑な権力移行を監督し、王室内での不和回避に一役買うことができるという。

首相の地位引き継ぐ可能性

王立裁判所に近い人物によると、ムハンマド皇太子がサルマン国王から首相の地位を引き継ぐ可能性もある。首相の座に就けば、皇太子は正式な立場でサウジの日々の運営を仕切ることができる。

王室の他の家系にとって心強いことに、サウジにある13の州の知事と副知事は全員が王子だ。6月に出された王室政令は、ムハンマド皇太子が自身の息子に王位を渡すことを認めていない。しかし王室に近い多くの関係者は、皇太子が統治するとみられる数十年の間に政令は簡単に変わる可能性があると話す。

サウジ政府の代理人にコメントを要請したが、回答はなかった。

サウジ司法長官によると、これまでに201人が汚職捜査との関連で拘束された。その多くは高級留置所と化したリヤドのホテル「リッツ・カールトン」に拘留されている。ホテルは12月末まで予約を受け付けていない。

億万長者の投資家、アルワリード・ビン・タラル王子も拘束されている。タラル王子は国外で最も広く知られているサウジ王室のメンバーの一人で、資金洗浄、収賄、強要の罪に問われている。

最近までサウジで最も力のある王族の一人だったムハンマド・ビン・ナエフ氏も反汚職運動の標的となった。事情に詳しい関係者によると、ナエフ氏は拘束されてはいないが、先週、銀行口座が凍結された。

王室関係者に近い筋や王室ウォッチャーによると、こうした動きに反発はあるものの、少なくとも今のところは、内部の反対が現在の指導部を本格的に脅かす可能性は低いという。

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