「パニック障害」って、実際どんな病気? 当事者が描く、苦しみ抜いた地獄の日々。その救いとなったものは......

「パニック障害」って、実際どんな病気? 当事者が描く、苦しみ抜いた地獄の日々。その救いとなったものは......

  • ダ・ヴィンチニュース
  • 更新日:2018/07/20
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『パニくる!? パニック障害、「焦らない!」が効くクスリ。』(櫻日和鮎実/KADOKAWA)

以前勤めていた会社の上司が、ある日を境に出社しなくなったことがあった。どうやら、朝起きられない、家を出ようとすると体調が悪くなる、電車に乗れない、といった症状に悩まされているとのこと。なんとか体調を整えて出勤します。彼女はそう言ったまま、一度も出社することなく退職してしまった。後に聞いた話だが、彼女が患っていたのは「パニック障害」だったという。

パニック障害。ここ数年、よく耳にするようになった言葉だ。しかし、その実態はあまり理解されていないのではないかと思う。ぼくも、その字面から、とにかくパニックに陥ってしまって身動きが取れなくなる激しい症状なのかな……と思っていた。どうやらその認識は誤りのようだ。

このたび発売されたコミックエッセイ『パニくる!? パニック障害、「焦らない!」が効くクスリ。』(櫻日和鮎実/KADOKAWA)では、パニック障害になってしまった当事者が、その日々を丁寧に描いている。この作品を読んで、ぼくは衝撃を受け、同時に自身の無知さを恥じた。

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作者である櫻日和さんもこう描いているように、「パニック」という単語からはどうしても“動的”な症状が連想されてしまう。しかし、実際のパニック障害はまったく正反対。吐き気がしたり、めまいに見舞われたり、頻脈に悩まされたりと、その症状は“静的”なものばかり。だからこそ、その知識がない者からすると、それがどれほど苦しいものなのかがわからない。櫻日和さんの場合は、動悸と過呼吸に苦しめられていたという。

櫻日和さんは、そんな症状に陥ってしまった原因として、「急かされる状況にいたこと」をあげている。電車に間に合わない、仕事が終わらない、そんな日常的な出来事の一つひとつが、彼女をじわじわと追い詰め、パニック障害を引き起こしたのだ。

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本作では櫻日和さんがパニック障害になってしまい、それを少しずつ克服していく様子が詳細に描かれている。しかし、その筆致は非常に軽快。ともすれば重々しくなりがちなテーマにもかかわらず、櫻日和さんはそれをときにジョークを交え明るく解説している。それは、パニック障害というものを広く知ってもらいたいという想いの表れに他ならないだろう。精神的な病を話のネタにするとき、人はどうしても身構えてしまう。それは、安易に触れてはいけないのではないか、という気遣いからくることもある。しかし、それでは正しく認識されない。忙しい現代人ならば誰の身に降り掛かってもおかしくない病だからこそ、櫻日和さんはそれをあっけらかんと描き、しっかり理解してもらおうとしているのだ。現に、本作を読んで新たに知ることが山程あった。これは当事者のみならず、パニック障害とは無縁だと思っている人にこそ読んでもらいたい作品だ。

そして、櫻日和さんが症状を克服していく過程で重要だったのが、理解ある友人の存在である。自身の症状を打ち明けたとき、それを受け入れてくれた友人たち。その存在はなにものにも変え難かっただろう。そのおかげで櫻日和さんは、少しずつ外出できるようになり、外でのイベントも楽しめるようになっていった。

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本作はパニック障害の実態について描いた作品だ。しかし、友人たちとのエピソードを読んだとき、パニック障害云々はさておき、他者とつながることの大切さがじんわりと伝わってきた。それはどんな人にも通ずること。人は決してひとりでは生きていけない。苦しいとき、弱気になったとき、泣きたいとき、側で支えてくれる人がいれば、きっと乗り越えていくことができる。

櫻日和さんは、現在もなおパニック障害に苦しめられている。しかし、非常に前向きな姿勢で人生を捉えている。その姿からは勇気をもらえるはず。

これまで、マンガのテーマとして描かれることの少なかったパニック障害。本作はその理解を深める上で、うってつけの教科書といえるだろう。

それと同時に、冒頭で書いたように、上司がパニック障害になってしまった当時、この作品を読んでいればもっとなにかできたことがあるのではないかと思った。知識は人を救う。本作を読んで、当事者はもちろんのこと、その周囲にいる人物がパニック障害で苦しむ人たちに手を差し伸べられるようになることを願ってやまない。

文=五十嵐 大

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