ビール税改正 「メーカーが努力しては潰される」の繰り返し

ビール税改正 「メーカーが努力しては潰される」の繰り返し

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2016/12/01
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「発泡酒・第三のビール」の市場拡大と増税

酒飲みの敵「ビール税」改正が来年度税制大綱に盛り込まれる。これは現在ビール77円、発泡酒47円、第三のビール28円の税額を55円に統一しようというものだ。

ビールだけに高率の税額が課される理不尽な状況に、ビール業界は繰り返し減税を求めたが、その要求は無視され続けた。そこで各メーカーは商品開発力で反撃に出る。1994年、サントリーが麦芽比率を65%以下に抑え、ビールの定義要件を下回る「雑酒‐発泡酒」に区分される『ホップス』を発売すると、手頃な値段でビール風味が楽しめると、大ヒット商品になった。当時を知るビールメーカー幹部が言う。

「ホップスはビールより麦芽比率が2%下回るだけで、税率はビールより約30%も低くなった。当時350ミリリットル缶のビールが225円で、ホップスは180円。多くの消費者が“50円近く安いのにビールと変わらない”と喜んで買ってくれました」

税収減を恐れた財務省は1996年、麦芽比率が50%を超える発泡酒は税率をビールと同じにする税制改正を行ない、“ホップス潰し”に打って出た。

これに対し、サントリーは麦芽比率をさらに下げて25%未満に抑えた『スーパーホップス』を投入して応戦。各メーカーも麦芽比率50%未満の発泡酒を商品開発し、1998年発売のキリン『麒麟淡麗』などのヒット商品を生み出した。

2003年4月に発泡酒は市場シェアの約5割(月単位)を占めて過去最高を記録。だが、財務省の動きは早く、翌月には酒税法を改正し、またしても発泡酒の税率を引き上げたのだ。さすがにビール業界も「これでは開発努力が無駄になる」と猛反発し、大手ビールメーカーのトップらが街頭で署名活動を行なう抗議行動を始めた。

そして2004年、発泡酒よりさらに税率が低くなる第三のビール『ドラフトワン』をサッポロが発売した。以降、『麦風』(サントリー)、『のどごし〈生〉』(キリン)、『アサヒ新生』(アサヒ)と各社がこぞって新市場に参入していったのである。

「これら第三のビールは、麦芽ではなく大豆タンパク質などを使うか、発泡酒にリキュールを加えて分類カテゴリーを変えるという手法が用いられています。各社、あらゆるアイデアを詰め込んで新商品開発に励んだ賜物でした。

ところが2006年には第三のビールへの増税が実施されました。“努力しても潰される”の繰り返しで、各社、政府とのイタチごっこに疲れ果てている状況です。財務省の税改正はただの“官による民業圧迫”です」(前出・メーカー幹部)

実際、発泡酒や第三のビールのシェアが拡大するたびに増税され、ビール全体の市場はどんどん縮小している。ビール市場がピークを迎えた1994年を「100」とすると、1996年の発泡酒増税で市場は「99」に、2003年の発泡酒増税で「87」に、2006年の第三のビール増税で「85」に減少。2014年は「72」まで落ち込んだ。税制が専門の立正大学法学部客員教授の浦野広明氏が言う。

「財務省は今回の改正の理由のひとつとして、発泡酒や第三のビールなど、ビール以外のアルコール飲料開発に力を注ぐメーカー側の姿勢を俎上にあげ、“それが日本のビールの国際競争力低下を招いている”と断じています。

メーカー側が開発資源をビール以外に振り向けざるを得なくなるよう追い込んだのは、他ならぬ財務省です。ビール税をめぐる財務省の対応がいかに場当たり的なものであるかをよく表わしています」

今回のビール系飲料の税額改正に合わせ、財務省はワインと日本酒の税額を統一する方針も示している。実施されれば日本酒は減税になるが、ワインや缶チューハイは増税になる。庶民の間で増えているチューハイや格安ワイン愛好家にとっては懐の痛む話だ。

財務省とメーカーのイタチごっこは結局、ビールを愛飲する消費者から搾取していることに他ならない。ビールと税金にまつわる話は、昔から庶民イジメの歴史でもあるのだ。

※週刊ポスト2016年12月9日号

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