AI表情認識は、売り上げに最も効果的な商品陳列さえも導き出す

AI表情認識は、売り上げに最も効果的な商品陳列さえも導き出す

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2017/11/14
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AIは顧客が商品を手に取った順番とその表情を解析し、効果的な商品陳列を提案できる可能性がある

こんにちは。微表情研究者の清水建二です。

近年、私たちの表情を分析し、感情を推定するAIの開発及び実用化が加速の一途を辿っています。本日は、表情分析の人間側の一専門家として、これからの表情認識AIの可能性について考えたいと思います。

オーソドックスな表情分析の手順に沿って、人間の分析者がしていることとAIが出来ること・出来ないことのプロセスを簡略化して紹介及び考察します。

表情分析の手順は、顔の動きの記述、顔の動きの意味付け、解釈という3段階があります。本稿では、消費者の表情と購買との関係性を明らかにすることを目的とした調査を仮定して説明します。

◆表情認識AIが結構できること――顔の動きの計測

(1)顔の動きの記述

様々な消費者がA商品とB商品の二つを見て、どちらかを購入していきます。各商品を見ているときの消費者の顔の動きを表情分析の有資格者を持つ分析者が観察します。

例えば、A商品を見ているときの一人目の消費者の顔の動きは「上まぶたが引き上げられている」、B商品のときは「眉が中央に引き寄せられる」+「唇が上下からプレスされる」、A商品を見ているときの二人目の消費者の顔の動きは…と言った要領で、消費者の全ての顔の動きを記録していきます。必要に応じてそれぞれの顔の動きの強さや顔に現れている時間も記録します。

(2)顔の動きの意味付け

次にそれぞれの顔の動きについて感情などの意味付けをします。この意味付けのプロセスは、主にこれまでの科学実験から明らかになっている知見を利用します。

例えば、「眉が中央に引き寄せられる」「唇が上下からプレスされる」動きは怒りあるいは熟考、「上まぶたが引き上げられる」は驚き、です。

この(1)(2)の作業を人間の分析者が行うと分析の難易度によりますが、1分の表情動画に100分ほど時間がかかります。膨大な時間を消費する作業なのです。

しかし、これらの作業を表情認識AIはリアルタイムでやってのけてしまいます。様々なメーカーが販売している表情認識AIのカテゴライズ可能な感情数は、おおむね幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・驚き・恐怖の7種類です(中立を含めれば8種類あります)。

ただ、まだ感情数に限りがあり、複合的な意味を持つ顔の動きを7つの感情に自動変換してしまうため、顔の動きの意味付けを誤解してしまうことがあります。例えば、「唇が上下からプレスされる」動きは怒りあるいは熟考の可能性がありますが、AIの出力結果だけを見ると、この動きが怒りとカテゴライズされてしまうことがあります。

したがって現状においては、(1)(2)の作業を表情認識AIに任せつつも、AIの識別範囲を超える7表情以外の感情に関わる顔の動き(例えば、罪悪感・誇り・畏れ・欲望・恥など)や複合的な意味を持つ顔の動き(熟考・顔で行われる各種ジェスチャーなど)の意味付けには専門家の分析及びチェックが必要です。

◆もし、AIが感情の解釈までしてくれるようになったら……?

(3)解釈

最後に、消費者の感情や認知過程の解釈をします。つまり、なぜ消費者はそのときその感情を抱くのか? を考える段階です。感情の原因を探る、いわゆる、心を読む、という段階と言えます。

商品の売れ行きと全ての表情データを集計します。A商品よりもB商品が売れたとしましょう。またB商品を見ているときの消費者の顔の動きは熟考表情が大半で、A商品を見ているときの消費者の顔の動きは驚き表情が大半だったとします。

したがって、商品購買と熟考表情とには関連がある、もっと言ってしまえば、驚きを引き起こす商品よりも熟考を引き起こす商品の方が売れる、という推論を下すことになります。

例えば、「商品を見ている間に熟考を浮かべるということは、商品を使っているイメージが消費者の脳裏に浮かんでいる可能性が考えられる。そのため、消費者にイメージを想起させるような『考えさせる』商品説明やパッケージを工夫することで、特定商品の売り上げが増加するであろう」そんな解釈をします(これは架空の調査なので、実際にそうした関係があるのかどうかはわかりません)。

この解釈の段階ですが、AIはまだ出来ません。現時点で表情認識AIを用いた研究・調査では、(1)顔の動きの記述及び(2)顔の動きの意味付けをAIに任せ、その検出結果に表示された数値を人間の研究者やマーケティングに携わる人が観て、解釈しています。

解釈には感情のメカニズムに関する知見や調査分野の知見、そしてときに経験則が必要になります。今後、表情認識AIに専門家らの専門知・実務家らの経験値に搭載させることで(3)の解釈までAIがしてくれるようになり、AIが私たちのビジネスや生活をより良くする提案までしてくれるようになると思われます。

(例)
店長:さて、今月のAIはどんな提案をしてくれるかな?

AI搭載システムを起動させる店長

AI:化粧品セクションのA商品とD商品との位置を変えて下さい。その結果のA商品売り上げ増加率予想は30%に向上します。

店長:なぜだろう?

解説ボタンを押す店長

AI:A商品→D商品という順でお客さんは商品を見ますが、A商品を見ているときの方がお客さんの嫌悪感が低下しています。A商品もD商品もシミやソバカスなど自分の見せたくない部分を消すことから満足が得られる商品です。D商品→A商品と置いた方が、お客さんの嫌悪感が徐々に低下し、A商品に対する魅力度が増すことが予想されます。したがって、売り上げを増加させるにはD商品とA商品の場所を変えるべきです。

近い将来、こうした提案をしてくれるAIが登場することが十分期待できます。

【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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