なぜ10月? “神在月”に出雲に神々が集まる理由は...

なぜ10月? “神在月”に出雲に神々が集まる理由は...

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  • 更新日:2018/01/14
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旧暦の10月10日、稲佐の浜で営まれる出雲大社の「神迎神事」。浜で篝火をたいて神職が神々を迎え、出雲大社へと向かう(撮影/写真家・稲田美織)

「神々のふるさと」出雲。日本人にとって神さまとは何か。全国の神々が集う、旧暦10月「神在月」の出雲を訪ねた。

【「平成の大遷宮」が行われ、本殿が美しく生まれ変わった出雲大社】

掃き清められた砂浜には篝火(かがりび)がゆらめき、白装束の神職たちが祭壇に向かって厳かに祝詞(のりと)を上げた。

「五感が研ぎ澄まされていくような感覚でした」

一心に手を合わせていた松下あいさん(42)は、満面の笑みを浮かべた。宮崎から新幹線と在来線を乗り継いで1人で訪れた。

旧暦10月10日にあたる2017年11月27日の夜、全国から神々を迎える出雲大社(島根県出雲市)の「神迎(かみむかえ)神事」が、出雲大社から西に約1キロの稲佐の浜で営まれた。

「神々のふるさと」。島根県出雲地方はそう呼ばれる。旧暦の10月は全国的には「神無月(かんなづき)」だが、出雲では「神在月(かみありづき)」と呼ぶ。その中核にある出雲大社では、旧暦10月10日から1週間、八百万(やおよろず)の神々を迎える「神在祭(かみありさい)」が行われる。その間、神々は出雲大社境内にある十九社(じゅうくしゃ)に宿泊し、これから1年間の縁結びや農作物の豊凶などを協議するといわれている。

山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)は仏教だが、神道には八百万の神がいる。日本人は古来、森羅万象に神々を感じ、祈ってきた。キリスト教などの一神教と違い、至る所に多数の「神さま」がいるのが日本の特徴だ。日本人にとって神さまとはどんな存在なのか。

冒頭で紹介した松下さんが出雲を訪れたのは2度目。17年3月に初めて出雲を訪れたが、そのとき地元のお年寄りから神在祭のことを聞き、どうしても神事を見たくなった。特定の宗教は信仰していないが、普段から神さまを信じ、元気がほしい時など地元の神社を訪れお祈りする。出雲には神在祭の1週間滞在し、こう思った。

「出雲という名前の通り、雲が山の中腹にかかっている景色や自然、光の感じが神々しく、今までで一番神さまの存在を感じました」

宗教評論家のひろさちやさんは、神さまとは「空気」だという。

「その空気とは、空気が読めない時に使う『KY』の空気。起源は、縄文時代にあると思います。人々は自然の恵みを受けて暮らし、自然によって生かされているという感覚を持つようになりました。この感覚を表現したのが神さま。ですから、神さまはあらゆる場所に満ちあふれていて、私たちは神さまと一緒に生きている。これが、神道の原則です」

神道には、体系的な教義や経典もない。そのため明確な見解を示すのは難しいが、皇學館大学大学院(三重県伊勢市)の櫻井治男特別教授(宗教学)は、日本人と神さまは「ゆるやかで強い絆」で結ばれていると話す。「はるか昔から、あえて意識しなくても神さまの存在を感じていた日本人は、神さまとの間にゆるやかだけど強い、決して切れない絆を持つようになったのではないでしょうか」

出雲大社では日が暮れても参拝者は後を絶たない。境内のあちこちで、出雲特有の二礼四拍手一礼をした後も、目をつむり願い続ける。

江戸時代中期には出雲大社の縁結び信仰が広まった。それが今のように「聖地」として女性から支持を集めるのは、スピリチュアルカウンセラーの江原啓之さんが

10年ほど前にテレビでこの地を「スピリチュアル・パワースポット」として取り上げてからだ。60年ぶりの「平成の大遷宮」のメイン行事「本殿遷座祭(ほんでんせんざさい)」は13年に終わったが、今も年間約600万人が訪れる。

今後の仕事と「ご縁」を求め、神奈川県から初めて出雲を訪れたという女性(40)は言う。

「祈祷(きとう)もしていただいたのですが、その直後から面白い出会いや、久しぶりの人から連絡が来たり、仕事の依頼の連絡が入ったりしました。子どもの頃に神さまにお願いをしてかなえてもらった感覚に近く、神さまの存在を感じ始めました」

一年の感謝の気持ちを伝えに、職場の同僚4人で来た広島県在住の女性(35)はこう話した。

「神さまを感じるけど目に見えない。だけど、目に見えないからこそ、ありがたいのかもしれないですね」

出雲を訪れた人に共通するのは、「神さまを身近に感じる」という感覚だ。目に見えないものに守られている感じだ。出雲に集まった八百万の神が最後に立ち寄る場所とされる、五十数代続く万九千(まんくせん)神社(出雲市斐川町)の錦田剛志(にしきだつよし)宮司(48)は言う。

「日本人は本来、目に見える世界と目に見えない世界のバランスの中で生きてきたはず。だけど、都会での目に見える生活の中でバランスを崩してきました。出雲は、神話では黄泉の国への入り口。つまり、暗闇を感じることができます。そのため、出雲に来るとそのバランスを取り戻すことができるのではないでしょうか」

ではなぜ、神々は旧暦の10月(神在月)に出雲に集まるのか。

神在月の研究を続ける県立古代出雲歴史博物館(出雲市)の学芸企画課長、品川知彦(としひこ)さん(54)によると、諸説あり、神社によって異なると話す。

「たとえば出雲大社の祭神の大国主神(おおくにぬしのかみ)が目に見えない幽事(かくりごと)を支配するため、その下知を受けに出雲大社に集まるという説です」

他にも、陰陽説で極陰(ごくいん)の月(10月)に中央(京都)から見て極陰の方向(北西)、つまり出雲に陽である神々が集うことによって世界が再生するとされる説。神々の母である伊弉冉(いざなみ)が10月に出雲で亡くなったため、「法事」としてすべての神が集まるという説もある。

「諸説あるのは、昔は今より神さまが人間世界に関わる領域が大きく、神さまがどこにいるのかが重大な関心ごとだった。そのため、さまざまな理由が考えられ、神社によって異なる説をとっているのだと思います」(品川さん)

(編集部・野村昌二)

※AERA 2018年1月15日号より抜粋

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