残業のメカニズムを科学的に解明してみえてきたその元凶とは

残業のメカニズムを科学的に解明してみえてきたその元凶とは

  • 政治山
  • 更新日:2018/02/15

パーソル総合研究所が残業をテーマに大規模調査を実施

働き方改革の掛け声に乗り、多くの企業が残業削減を中心とした労働環境改善に取り組んでいる。ところが、現場から聞こえてくる声は、ぼやきなのかうめきなのか、どうも後ろ向きな印象だ。そもそも、なぜ残業は発生するのか。なにが原因なのか。パーソル総合研究所が、東京大学准教授の中原淳氏との共同研究で、そのメカニズムを解明している。その結果は、予想通りといえるものだが…。

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残業状態企業でよくある光景

研究は、会社員6000人を対象に、残業の実態をヒアリングするアンケート調査を軸に実施された。その結果、残業が多い業種は、1位運輸業、郵便業、2位情報通信業、3位電気・ガス・熱供給・水道業がトップ3。職種では1位配送・物流、2位商品開発・研究、3位IT技術・クリエイティブ職という結果となった。1位の業種・職種はやはり慢性的に人手不足といわれているもので、予想通りといえる結果だった。

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パーソル総合研究所調べ

ではなぜ、残業が発生するのか。人が足りないから、業務量が多いから。確かにそうかもしれない。同調査では、そうした状況の背後にまで切り込み、そのメカニズムを解明。残業が発生する職場に見られる特徴として、次の4つを挙げている。

残業解明に関する4つのキーワード

「集中する」。「感染する」。「麻痺する」。「遺伝する」。まるで、病にでもかかったようなワードが並ぶが、まさに慢性残業企業は、重篤な疾患にかかっている病人同様の状態に陥っているというのが、同調査チームの見解だ。

それぞれ説明しよう。「集中する」は、上述のように優秀な部下ないし上司に残業が「集中する」ということだ。アンケートでは、上司の60.4%が優秀な部下に優先して仕事を振っていると回答。手っ取り早い“業務効率化”の手段として、上司が優秀な部下に優先的に仕事を回している実態が浮き彫りになっている。

加えて、上司も、働き方改革の手前、部下に残業を頼みづらくなり、結果、巻き取るように仕事を自宅に持ち帰る風呂敷残業で対応していることも明らかになっている。つまり、残業は、優秀な部下、そしてマネジメントする上司に集中するというわけだ。

もっとも、この「集中」は、働き方改革によって、限定的に留まっているとも捉えることができる。ところが、一部の人間が残業をしていると「先に帰りづらくなる」というのが人間心理。上司が残業していればなおさらだ。実際、同調査でも上司の残業時間と帰りにくい雰囲気の比率は比例してアップしている。これが残業の「感染」だ。

さらに、残業時間が月60時間を超えてくると、奇妙な現象が発生する。なぜか幸福度と会社への満足感が上昇するのだ。これについて中原教授は「語弊があるかもしれませんが、長時間労働によって価値・意識・行動の整合性が失われ、合理的判断力が鈍っているので“麻痺”としました」と解説。本来なら疲弊し、幸福度は下がりそうだが、ランナーズハイのように、働き過ぎにより、感覚が正常とずれることで引き起こされる弊害というワケだ。

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パーソル総合研究所調べ

まさに職場を蝕む元凶のような「残業」の負の影響力。調査ではこの残業が、若いころに残業をたくさんしていた上司のもとで働く部下ほど長くなる傾向があることもつきとめている。「残業は当たり前」。そうした上司が、残業を嫌う部下を正当に評価せず、染みついた価値感を押し付ける結果、それを部下が受け継ぐ、つまり「遺伝」してしまうという負のスパイラルだ。まさに残業は、風邪ウイルスどころでなく、悪性腫瘍の様に性質が悪く、周囲の組織に浸潤し、全体に広がっていく…。

米企業が実行した残業撲滅の究極策の気になる成果

まさに残業のイメージをデータで明解にしてくれたわけだが、こうしてそのメカニズムが分かれば、残業の蔓延はどこかで食い止められるようにも思える。現実に、業務の割り振りを工夫し成果を出している企業や上司が残業削減を率先し、大幅な削減に成功した企業はある。だが、より多くの企業にあてはまる、“特効薬”のような解決策となると、そのハードルは上がる。中原教授も抜本解決には「中長期で職場全体で是正していくしかない」と現状の中では真の解決は一筋縄にはいかないことを見通している。

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残業メカニズムを解説する中原氏

働き方改革が推進される中で、なんとも、先が見えづらい状況だが、もしも、給料泥棒的な不良社員を排除するという荒療治をしたらどうなるのか。現実味はないが、ふとそんな不謹慎なことも頭をよぎる。実はこれ、米企業のネットフリックスが過去に実施している。その結果どうなったのか…。3割もの大量解雇となったが、なんと人員減による負担増の懸念をよそに、不良社員による不手際のフォローなどの“雑用”が消滅し、かえって仕事の質は高まり、業務スピード向上が実現している。

ダメ社員排除については、米不動産業界の大物、バーバラ・コーランがこんなことを言い放っている。「ネガティブな人が1人いることで、15人の優れた人材のエネルギーがいつの間にか失われる」。そして言葉通り、そうした社員をバッサリ切り捨てている。日米の文化の違いがあり、日本では現実的でない施策だが、“悪いもの”を排除することによる一定以上の効果は期待できそうだ。

日本から残業を撲滅することは可能なのか…

ちなみに、人材コンサルなどを手掛ける米・ギャラップが実施した、従業員のエンゲージメント調査によると、日本は「熱意あふれる社員」がわずか6%という結果になっている。32%の米国の5分の1だ。意外に感じる結果だが、冷静に考えれば、忠誠心は立派だが、そこに熱意はないと考えれば、納得はいく。とはいえ、保身重視のクールな社員が蔓延する日本で、優秀な人材が残業の“犠牲者”になっているとしたら、これほどの理不尽はないし、未来もない…。

調査チームは今後、残業削減と組織コンディション向上を両立させる有効な打ち手を明らかにしていくとしているが、表面的な施策だけでは困難なのは明白だ。かなり大胆か、長期にわたる“治療法”でなければ、根治は難しいだろう…。あらゆる常識をリセットする、本当の働き方改革―。そこまでしなければ、日本の職場にはいつまでもモヤモヤが滞留し、明るい道筋はみえてこないだろう。

提供:瓦版

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