「地検特捜部と全面対決も辞さない姿勢」を大成建設が見せる理由

「地検特捜部と全面対決も辞さない姿勢」を大成建設が見せる理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/02/15
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理解できない点

首都圏を走る小田急線沿線の新百合ヶ丘駅からバスで約15分。大学や市民健康施設などが立ち並ぶ住宅地の幹線道路(尻手黒川線)沿いに、高い塀に囲まれた一角があり巨大クレーンが何本も立っている。

工事車両が出入りする時以外、中をうかがうことは出来ないが、行われているのはリニア中央新幹線のトンネル発進立杭となる非常口(直径36メートル、深さ100メートル)の建設工事である。施主のJR東海は、2015年10月2日に開始した公募競争見積方式で選定手続きを進め、16年11月7日、大林組JVに決め、契約を結んだ。

この「東百合丘非常口」の工費は明らかにされていないが、同じ大林JVが受注、リニア中央新幹線事件の引き金となった「名城非常口」の工費が約90億円とされており、その程度の金額だろう。

実は、この工事は大成建設優位で進んでいた。その証拠に、約1万8500平方メートルの敷地を取得していたのは大成である。同社は、12年3月、前所有者の化学メーカーからこの土地を先行取得。まだリニア中央新幹線のルート公表前の段階で、大成はリスクを取ったのだが、JR東海が選んだのは大林だった。

この思惑違いの逆転劇が、リニア談合の曖昧さの証明である。同時に、ここには、二度、三度と家宅捜索を受け、検察に散々イジメを受けながらも、談合を認めずに突っ張り続ける大成の意地が秘められている。

「特捜VS大成」の対立構図は、既に周知のものとなり、マスコミの司法担当記者はその様子を詳しく伝え、『週刊文春』は「リニア捜査が重大局面 大成建設<段ボール40箱>証拠隠し」(2月16日号)と報じた。

大成顧問のヤメ検が、特捜検事が大成の役職員らを社長室に呼び出し、「ふざけるな!」と怒鳴りつけて威圧する捜査手法を批判、<大阪地検特捜部の証拠改ざん問題があったにも関わらず、検察の体質が変わっていないことを示すもの>という「抗議書」を送付すれば、特捜部はOBをあざ笑うように、その後も家宅捜索に入り、大成が幹部寮に隠していたリニア関係資料40箱を押収した。

この種のケンカが面白くないハズがない。

ただ、理解できないのは、弱ったとはいえ公訴権と捜査権の二つを持ち、起訴しやすい方向で捜査を進めることが出来るという意味で、「最強の捜査機関」には違いない特捜部に、なぜ大成が刃向かっているのか、という点である。それを解く鍵となった「東百合丘非常口」とはどのようなものか。

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リニアの研究を続け、山梨実験線で走行試験を繰り返していたJR東海は、07年4月、東京―名古屋間に25年開業(その後27年に)を目標としたリニア建設計画を公表、それを受けて国が直線ルートでの整備計画を発表したのは11年5月だった。

川崎市麻生区の麻生区民会館で、リニアに関する環境アセスメントの説明会が開かれたのは11年10月で、その際の質疑応答で示されたルートは、3キロの幅で大雑把に示したもので、「詳しいルートの公表は環境アセスなどの諸手続が進んだ約2年後を予定。立杭のための非常口は5~10キロごと、広さは1万平方メートルぐらいで設置位置は未定」と、説明された。

全面対決

環境アセスを経て、JR東海が東京―名古屋間の正式な駅とルートを発表したのは13年9月である。12年3月にこの場所を取得していたということは、非公表のハズのルートと非常口候補地を、大成は正確に知っていたと考えるのが自然だろう。客観的にみればそれを伝えたのはJR東海以外には考えられず、スーパーゼネコン4社のなかで、リニア担当幹部に最も深く食い込んでいたという大成元常務が、情報を入手していた、ということではないか。

であれば、受注は大成となるのが“筋”である。ルートは決まったが、正式発表前にJR東海が購入するのははばかられる。だが、一等地ゆえ、抑えておかなければ他に売却される恐れがある。そこで、信頼関係がある大成に、先行取得してもらったということだろう。そのうえでJR東海は、正式発表後の15年3月、大成から購入している。

談合が、かつての「業務屋」と呼ばれる談合担当が施主や仲間内との「貸し借り」だけで決まる時代なら、受注していたのは間違いなく大成だろう。だが、結果は大林だった。

リニアで談合仲間だった大成元常務と大林の前副社長は、早稲田大学理工学部土木工学科の同級生。二人の間でなんらかの「貸し借り」があった可能性もあり、JR東海が「汗をかいた大成を裏切った」という単純な話でもあるまい。

ただ、公募にせよ、JR東海は工事契約手続きにおいて、複数の業者から見積書と技術提案を受け、価格と安全面と技術面を総合的に判断して決める。それに向けて土木営業のリニア幹部は提案をしているのであって、調整はしても、それは営業努力の範囲内だという自負がある。そのうえ、「受注予定表」はあっても、その通りに決定はなされておらず、談合ですべてが決定しているわけではない。

大成は、この論理で突っ張るのだろう。その証明が「東百合丘非常口」である。

検察にとっては誤算だろう。久々に特捜部が手がける本格案件で、幸先は良かった。公正取引委員会からリニア談合の相談を受けていた特捜部は、昨年12月9日、証拠が挙がっている大林JVの「名城非常口」の偽計業務妨害容疑で捜査に着手した。

過去、談合摘発が続いて弱気になっていた大林は、あっさりと白旗を揚げ、課徴金減免制度(リニエンシー)に逃げ込んで罪を認めた。特捜部は、スーパー4社の一角が落ち、さらに清水建設がリニエンシーに応じ、大林、清水の両社が特捜部のいうままに供述するのだから、大成と鹿島建設も、認めざるを得ないと楽観していた。

だが、ここまで両社、特に大成が突っ張っている以上、全面対決だ。年度内決着に向けて、押収した40箱から決め手となるような証拠が出てくるのかどうか。「特捜VS大成」からは、目が離せない。

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