<ラグビー>新生ジャパンのフルモデルチェンジは成功するのか?

<ラグビー>新生ジャパンのフルモデルチェンジは成功するのか?

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  • 更新日:2016/12/01
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日本代表の練習を見守るジョセフヘッドコーチ(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ率いるラグビー日本代表の最初のツアーが終わった。10月31日に本格始動したチームは、11月に国内外で4つのテストマッチを行った。

秩父宮での初陣はアルゼンチン代表に20―54で敗れたが、遠征先のジョージア代表戦では、スクラムに押し込まれながらも28―22で初白星、欧州6強の一角であるウェールズ代表には30―33と、あわや金星を記録するまでに肉薄したが、最後のフィジー代表戦は25―38で落とす。準備時間や環境整備の面で不安視されるなか、通算戦績を1勝3敗とした。

グラウンド内外で貫かれていたのはフルモデルチェンジへの姿勢だった。

現体制がようやくスタートしたのは、2015年のワールドカップイングランド大会を3勝で終えて約1年後のことだった。渦中、努めて「勝ちに行きます」と強調していたのは堀江翔太。イングランド大会時の副将で、今回の主将を任されていた。常々、「色んな選手の意見を引き出したい」と言っていた大らかな親分肌。ジョセフとは、チーム作りの考え方がシンクロしていたという。

振り返れば前任者のジョーンズは、早朝練習を含めた複数回のトレーニングや昼寝の時間まで1日のスケジュールを詳細にプログラミング。ディフェンスコーチだったリー・ジョーンズが「彼自身がハードにやる人ですが、スタッフにもハードさを求める」と話すなど、コーチングスタッフへも自らの目線で高い要求を出し続けた。
それに対してジョセフは、ボトムアップ型の組織を形成。自らが出す要求を乗り越えさせるより、各自すべき仕事を見つけて遂行するよう促すイメージか。

主将任命の際は堀江と立川理道の共同主将制を敷いた。ちなみに、直近まで指導していたスーパーラグビーのハイランダーズでも似た形でチームを運営していた。ベン・スミスとナシ・マヌが主将として、プレー中の連携手段などを全選手に涵養。その流れで、2015年度のスーパーラグビーを制していた。

コーチとしてチームに帯同した元日本代表フルバックの田邉淳は、ジョセフの哲学を「グラウンド内外での役割をしっかりと果たしていきましょう、というのが主旨かな」と見立てた。

「選手、マネジメント、コーチ。それぞれには、グラウンドのなか以外にも役割があるんじゃないか…。そういう感じで(チーム作りを)やりたい、という話は聞きました」

フルモデルチェンジのさまは、ラグビースタイルの構築にも表れた。

ハイランダーズ時代にもジョセフと手を組んできたトニー・ブラウンアタックコーチが、主に攻撃面のプランを整理していたのだ。アンストラクチャー(キックの蹴り合いの直後など、互いの組織が整備されていない状態)の状態から、組織的な攻めを仕掛けにかかる。

採用したのは、グラウンドの中央、左右などに満遍なく選手の束を並べる「ポッド」という戦術。エリアや状況ごとに、誰がどの位置に立つべきかが明確化された。35歳で初めて日本代表入りした左プロップの仲谷聖史も、ツアー中に「(左右の)15メートル線の間で自分の仕事をする」と証言した。

イングランド大会までのジャパンは、接点や司令塔の周囲に複数人の層を作る「シェイプ」という戦術を使っていた。しかし、現場サイドはフルモデルチェンジへ前向きに取り組んでいた。思えば、今季からスーパーラグビーに参戦した日本のサンウルブズも、マーク・ハメット前ヘッドコーチのもと現ジャパンと似た人員配列を用いていた。サンウルブズにいた代表選手が「サンウルブズに似ていると思います」と口々に話すなど、変化へのアレルギーは大きくなかったようだ。

プランに紐づけされたスキルも、根気強く醸成された。攻防の起点にキックを使うことから、後方から攻め上がるフルバックとウイングは正確にハイボールを処理しなくてはならない。そのため全体練習後、田邉コーチが捕球の特別メニューを実施していた。

変革への意欲が奏功したのは、欧州に渡ってからか。

理想の攻めが見られた一例は、ウェールズ代表戦の後半14分だ。

敵陣22メートルエリアでターンオーバーを決めると、左へ、右へとボールを動かしながらゲインラインを突破する。最後は攻撃ラインの先頭に立つフッカーの堀江が、その背後で待つランナーのさらに向こう側へ、角度をつけてパス。スタンドオフの田村優、アウトサイドセンターのティモシー・ラファエレ、アウトサイドフランカーのマルジーン・イラウアと順にバトンを渡し、ウイングの福岡堅樹が楕円球をインゴールへたたきつける。田村のゴールも決まってスコアを20―24とし、7万人の観衆を沸かせた。

ジョージア代表戦でも堀江のパスからの展開でトライを取っていた福岡自身は、こう説明した。

「外でトライが取れるのはいい傾向なので、継続していきたいと思います。全体の流れの中で、あのアタックがある(用意されている)。それが、上手く活きた」

防御は試合を追うごとに改善された。ロックの谷田部洸太郎によれば「最初は集まったばかりで…という部分もありましたが試合を重ねるごとにいい感じでコミュニケーションが取れるようになった」とのことだ。

接点から数えて3人目にあたる選手が、相手攻撃の起点を外側から囲い込むようにせり上がる。「かぶる」と呼ばれる動作でプレッシャーをかけ、ぶつかり合いでは足元とボールの出どころへ2人がかりでのタックルを繰り出す。平易にパスを繋いでゆくジョージア代表、ウェールズ代表には、しばしこのシステムで封鎖することもできた。

課題が明らかになったのは、フィジー代表戦。反則による退場者を出す相手に一時は29点差もつけられた。アンストラクチャーの起点となるキックが、相手の攻撃力を引き出してしまう。過去2戦でも散見されたそんな傾向を、大砲の揃うフィジー代表を前にしても続けてしまった。

福岡は「アタックの時のキックでは、(捕球する相手へ)競りに行って、少しでもクリーンキャッチをさせないことが必要」と反省した。

前半22分には、一時退場処分で1人少ない相手に、敵陣22メートル線上から一気にトライラインまで攻め切られた。ジャパンから観て右側の狭い区画で数的優位を作られ、残された防御役が相手を止めようと突撃。しかし、その背後などでシンプルにパスを繋がれ、スコアを3―14とされた。

本来はできるはずのない数的優位を作られた場面について、田邉は「あそこは、その反対側のラックで人数をかけすぎて、外がド余り(数的優位)になったのだと思う」と分析する。しかし、この場面を引き起こした真の理由は、別のところにあると言った。

満足できる内容だったウェールズ代表戦の次の試合を前に、ウェールズ代表戦前と同質の準備ができていたのかどうか…。アシスタントコーチとして反省していた。

「『真に評価されるべきは、ビッグゲームの次の試合でのパフォーマンス』だということを、コーチ陣、リーダー陣が、(キャリアの浅い選手へ)口を酸っぱくして言うべきだったかな、と」

さらに大きな宿題は「グラウンド外」の問題点だ。今回は国内のトップリーグのスケジュールもあり、アルゼンチン代表との初戦までの準備期間は、約1週間のみだった。好試合もあったために消されそうな記憶だが、今回、指揮官の当初望んでいた選手が揃っていないのも事実だ。複数のキーマン候補が日本協会との話し合いなどを経て、辞退や落選に至っていたのだ。その背景に何があったのかは、改めて精査されるべきだ。

スーパーラグビーの日本チームであるサンウルブズは、今度のジャパンの遠征にも帯同したフィロ・ティアティア新ヘッドコーチを筆頭にスコッドを編成中。初年度に発生した選手の体調管理の問題を改善し、いまのジャパンとほぼ同じ戦術とメンバー構成のもと、連携を図られたい。

ジョセフら首脳陣にとっては、今回が初めてのテストマッチツアーだった。選手らは、戦術理解のブラッシュアップやプレーの一貫性の大切さを再確認。2019年のワールドカップ日本大会に向けた物語の序章としては、上々かもしれなかった。立川とともにオン・ザ・ピッチの先頭に立つ堀江は、こうまとめた。

「自分たちのやりたいラグビーをどれだけ染み込ませるかという部分では、毎試合、毎試合、いい準備ができ、実行に移せた。姿勢と、スマートさがあったかなと思う。あとは、プレーの精度を上げて、それぞれがより役割を明確に(把握)してゆけばもっとよくなる」

現場サイドは、いまの体制下でもっと成長しうると強調する。目標は、日本大会での決勝トーナメント進出だろう。現チームの連帯感を結果に直結させるうえでも、日本ラグビー界全体のレビューやチェックの質が問われる。

(文責・向風見也/ラグビーライター)

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