【OPEC減産合意】サウジは合意優先で「盟主」維持 イランは強気貫き、増産勝ち取る 米金融市場は歓迎

  • 産経ニュース
  • 更新日:2016/12/02

8年ぶりとなる石油輸出国機構(OPEC)の減産合意は、交渉を主導してきたサウジアラビアがイランに歩み寄り、増産を例外的に認めたことで決着した。サウジは合意を優先して盟主の体面を保ったものの、イランはサウジの厳しい財政事情を見透かして強気な態度を貫き、サウジから譲歩を引き出せた。(古川有希、田辺裕晶、ワシントン 小雲規生)

サウジとイランは、それぞれイスラム教のスンニ派とシーア派の中心地で昔から宗教対立があるほか、今年に入り国交も断絶。イランが欧米から経済制裁を受けていた間、欧米原油市場でのイラン産原油の穴埋めはサウジ産でまかなわれていたなど何かと因縁深い。

サウジは歳入の約7割を原油輸出に頼り、油価低迷は財政を圧迫する。だが、ライバルに台頭した米国の新型原油シェールオイルとシェア争いを続けた結果、油価は1月、12年ぶりに1バレル=30ドルを割り込む事態に。2016年の財政赤字は国内総生産(GDP)比で13%に達する見通しだ。

油価低迷は株式上場を予定する国営石油会社サウジアラムコの価値も左右するため、調達した資金で世界最大規模の政府系ファンドを創設する計画も狂う。

一方のイランは、欧米の経済制裁が解除されたばかりであることを理由に、9月のOPEC臨時総会以降も減産の適用除外を主張し続けた。サウジが当初、生産量上限として要求した370万7千バレルに対し、イランは財政赤字が約1%にとどまる“余力”を武器に経済制裁前の水準である約400万バレルを強く主張した。

結局、イランの増産量が約9万バレルに抑えられたことで、「イランは無制限に増産できなくなり、サウジは最大の減産量を請け負うという『痛み分け』になった」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)との指摘もある。

OPECは今後、ロシアなど非加盟国との協議を控える。加盟国が生産枠を守るかどうかも予断を許さず、「市場に与えるインパクトは小さくなっていく」(みずほ証券の津賀田真紀子シニアコモディティアナリスト)とみられている。

OPECの原油減産合意を受け、米国の金融市場で歓迎ムードが広がった。11月30日の米国市場では原油価格が急騰。原油価格上昇で米国の原油関連企業の収益が改善するとの期待から、エネルギー関連株も大幅高になった。

金融アナリストのナイム・アスラム氏は30日、米CNBCテレビに寄稿、「投資家にとって最高のクリスマスプレゼントだ」と減産合意を手放しで喜んだ。

同日の米国の原油先物市場では指標となる米国産標準油種(WTI)1月渡しが前日比9・3%上昇。これを受けて、株式市場でもエネルギー関連株式の指標が前日比4・8%増と跳ね上がった。

なかでも、シェールオイルの開発を手がけるコンチネンタル・リソーシズは30日だけで株価が22・9%上昇した。同社のハロルド・ハム最高経営責任者(CEO)はトランプ次期政権でのエネルギー長官の候補に名前があがり、シェール開発関連の規制の緩和が持論。トランプ氏も「アメリカのエネルギー資源を完全活用する」としており、シェールオイルの生産コスト低下への期待も出ている。

金融市場では「原油価格は今後数週間は不安定な状況が続く」との冷静な見方も多い。原油価格の上昇が米国の原油生産増につながれば、OPECによる減産分を帳消しにしてしまい、過剰供給が解消されない可能性もある。

しかし、世界最大の経済国である米国での生産拡大は世界に前向きな影響をもたらすとの声も強い。2014年秋以降の原油価格の下落は米国での設備投資を減少させ、米国が世界経済のエンジン役を果たせなくなる要因となったからだ。

一方、ロシアはOPECの減産に協力すると表明した。石油や天然ガスなどエネルギーの輸出に歳入を依存するロシアは、原油安によって2015年以降は財政赤字の拡大に苦しんできた。9月の生産高は1145万バレルと旧ソ連崩壊後の最高水準を記録していることもあり、OPECに協力することで原油価格の押し上げを図る思惑がある。

OPECの減産合意で、原油価格は一層の上昇が見込まれる。ガソリンなどの石油製品が値上がりし、個人消費や企業活動に影響を与えそうだ。ただ、円安や株高に結びついて景気にはプラスに働く面もある。

市場関係者によると、レギュラーガソリンの全国平均小売価格は一般的に原油価格が1バレル=1ドル上昇すると70銭程度値上がりする。

石油連盟は減産合意を受け、40ドル台後半で推移してきた原油価格が55ドル程度まで上昇するとの見通しを示す。ガソリン価格も直近の125円60銭(11月28日時点)から130円程度まで値上がりする計算だ。

実際は減産合意を好感した円安で原油の調達コストが上昇し、石油製品の価格はさらに押し上げられる。本格的な冬将軍の到来を控え「灯油の高騰が心配」(石油業界関係者)との声が出ている。

一方、原油安は日銀が掲げる2%の物価上昇目標の障害になっていた。日銀の桜井真審議委員は1日、大津市で記者会見し、OPECが減産合意したことについて「一般論で言えば、原油価格の上昇は他の条件を一定とすれば物価を押し上げる」と歓迎した。

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