約37万円! Volta世代初のVGA「TITAN V」の怪物級性能を拝む

約37万円! Volta世代初のVGA「TITAN V」の怪物級性能を拝む

  • ASCII.jp
  • 更新日:2018/01/11

2017年は例年になく自作PC界隈のニュースが豊作だったが、ラストを飾ったのはNVIDIAだった。HBM2メモリーを採用する次世代GPUアーキテクチャーとして知られていた「Volta」を採用した“絵の出せる”GPU、「TITAN V」が発売されたからだ。

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“世界最高性能”をうたうTITAN V。これまで黒かシルバーだったカラーリングが金+黒という神々しい輝きを放つデザインに変更されたが、全体のデザインや大きさは従来のFounders Edition搭載のGeForceと大差ない

NVIDIAは2017年5月の時点でVoltaアーキテクチャーを搭載した製品「Tesla V100」をリリースしていたが、Teslaは純粋なGPGPU向け、あるいはグラフィックを仮想化して提供するタイプの製品であるため、ディスプレー出力を搭載しない。だが今回TITAN Vはディスプレー出力を備えた普通のビデオカードなのだ。

2018年1月5日時点において、TITAN Vは米国NVIDIA直販サイトでのみ販売され、価格はなんと2999ドル。TITAN Xpが1200ドルだったことを考えると破格の価格設定だ。日本での販売は決定済みだが、具体的な販売ルートや価格についてはまだ公開されていない。

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TITAN Vは原稿執筆時点で米国NVIDIA直販サイトでのみ販売されている。国内における発売時期および価格は未定だが、TITAN X発売時と同様に販売はAmazon、Teslaの取り扱い実績のある菱洋エレクトロがサポートという形になる可能性が一番高い

NVIDIAによるとTITAN Vは「世界最高性能」のGPUだという。果たしてこの言葉はどういう意味なのか? ワットパフォーマンスでライバルを見事に退けたPascalをVoltaは打ち倒せるのか? 興味はつきない。

そこで今回、筆者は米国直販サイトから個人輸入という形でTITAN Vを入手した(諸経費込みで約37万円。この投資によってもたらされるパワーどの程度のなのか? さまざまなベンチマークを通じてチェックしていきたい。

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こちらはTITAN Vのパッケージ。カード本体に合わせ白+金のパッケージだ

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内部の構造は同じ。もうちょっと特別感が欲しかったところ

メモリースタック1つ分の差

TITANシリーズは、代々GPGPU用カードである「Tesla」シリーズをベースにしているため、スペックも非常にTeslaに近い。そこでTesla V100(PCI-Express版)とTITAN V、そして既存の製品のスペックを比較してみる。

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「GPU-Z」で情報を拾ってみたが、まだ情報の欠落している部分が見られる

まず最も目を引くのがCUDAコア数5120基という強烈なスペック。TITAN Vの前身でもあるTesla V100とまったく同じスペックなのだ。だがTesla V100ではHBM2メモリーが4スタックで16GBなのに対し、TITAN Vは3スタックで12GBまで、帯域も1スタック分少ない3072Bitとなっている。

HBM2メモリーもクロックの低さをバスの太さで稼ぐため、1スタック差はメモリー帯域に大きな影響を与える。交渉メモリー帯域はTITAN Vが653GB/秒に対し、1世代前のTITAN Xpは547.7GB/秒と、思ったほど差は大きくない。HBM2だからといって過度な期待は禁物のようだ。

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NVIDIAの資料を基にTITAN Vのブロック図を筆者が想像したもの。64基のCUDAコアを内包するSMが80基並び5120基のCUDAコア群を構成。Tesla V100では4基あるHBM2メモリーのうち1基が無効化されている

だが、Voltaを語る上でHBM2メモリーよりももっと重要なことがある。それはSMの構造の大きな変革だ。Volta内部には80基のStreaming Multiprocessor(SM)が格納されており、各SM内には単精度浮動小数点の積和演算を行なうFP32ユニット、つまりCUDAコアが64基格納されている(Pascalは128基)。

このFP32ユニットとは別に、SM内には倍精度浮動小数点演算を実行するユニット(FP64)、さらにNVIDIAが推す深層学習分野で高い効果が見込めるテンソル演算を高速実行するTensorコアが8基組み込まれている。

Voltaから搭載されたTensorコアはさておき、FP64ユニットの数の多さが、TITAN Vが現行GeForce、そしてTITAN X/Xpと一線を画している部分といえる。

ゲームの処理ではFP32や16が多く使われるため、PascalでもFP32を多量に削る方向で進化してきた。ちなみに現行GeForceのFP64ユニット数はCUDAコアの32分の1にとどまっている。

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GV100ベースのSMは、1基あたり64基のCUDAユニットに、その半数のFP64ユニットなどが詰まっている。SMあたり8基(図は少々誤解を受ける描かれ方がされているが)内蔵されているTensorコアは、GV100で初めて追加されたものだ

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GP104、つまりGTX 1080のSMの構造。ここに描かれているCoreとはFP32、つまり普通のCUDAコアだ。Pascal世代ではL1キャッシュと共有メモリーが分離しているが、Volta世代ではこれら2つが合体している

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GPU内部処理で必要なデータは、低遅延な共有メモリー、あるいはL1キャッシュ(なければL2キャッシュへ)に求めるが、共有メモリーとL1を合体させることで共有メモリーはサイズアップ、L1キャッシュは遅延の短縮と、双方Win-WinにするというのがVoltaの設計的な特徴のひとつ

これらの構造をみれば、TITAN Vは本来のTITANの立ち位置、即ち“ミニTesla”寄りの製品であり、GeForce系のようなゲーミングにフォーカスを当てたものではないことがハッキリしてくる。

FP64ユニットもTensorコアも、ゲーミングにとっては贅肉そのもの(ただTensorコアはFP32の演算用にも使える程度の精度はあるので、まるっきり無用というわけでもなさそうだが……)。

TITAN VはいまNVIDIAが推す深層学習分野で最大のパフォーマンスを発揮するような構成、だからこそNVIDIAは“世界最高性能(何の性能とは言ってない)のGPU”とうたっているのだ。TITAN Vは、今のNVIDIAをビデオカードという形に表したもなのである。

となると、TITAN Vの姿からは、そのうち登場するであろうVoltaベースのGeForceのパフォーマンスを推し量ることは難しい。CUDAコアを5120基も抱えているし、メモリー帯域も太いので相応の働きはしてくれるが、FP64やTensorコアといった“ゲーミング贅肉”も相当量抱えているためベースクロックもかなり抑えられている。

VoltaベースのGeForceは、FP64やTensorコアを削り、その分高クロック&高ワットパフォーマンスを狙った設計になるという予想が導き出される。

写真で見るTITAN V

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カード(クーラー)の大きさは従来のFounders Edition、あるいはTITAN Xなどと同じ。ただこれまでと違い、ちゃんと製品ブランドが正しく表記されている

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微妙な変更点としては、バックプレートは完全な1枚板になったことくらいだろう(従来品は後部が外せる)

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カード上部にはSLIブリッジ用のコネクターがないかわりに、NVLink用のエッジコネクターを搭載。ただこれはTITAN Vでは利用できないようだ

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外部電源は8ピン+6ピン。ごく普通の構成だ

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映像出力はGTX 1080Tiでも採用されたDVIのないタイプ。DVIコネクターの通る空間も通風用に使うことで冷却性能を高める

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TITAN V(左)はカードそのものがやたら重い。TITAN X(右)と比較したところ、TITAN Vは200g程度重かった

検証環境は?

TITAN VはGeForceとはやや違う世界線にある製品であるということが理解できたが、CUDAコア数5120基とHBM2メモリーのパワーがいかほどか気になるところ。

そろそろ今回の検証に入ろう。対決の相手はTITAN Xpが理想だが、さすがにこれをホイホイ貸してくれるわけもないため、涙を飲んで弟分であるGTX 1080TiのOC版を準備した。

OC版GTX 1080TiカードをダウンクロックしてFounders Edition相当の性能にすることも検討したが、クーラーが強力なOCモデルゆえに、クロックだけ下げてもFounders Editionとは違った性能となる。ゆえに今回はそのまま比較することとした。

また、TITAN Vを「Afterburner」を利用しPower Limit120%、コアクロック+50MHzした状態でのパフォーマンスも計測している(TITAN V@OCと表記)

ちなみに、最近公開され話題となったCPUのSpectre/Meltdown問題に対するWindows 10側のパッチ(KB4056892)は導入済みだ。

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TITAN VのOC設定。リファレンスクーラーの冷却力には限界があるようで、50MHzアップでの計測となった

ベンチにより大きく傾向が変化する

まずは定番「3DMark」から始めることとしよう。DirectX11ベースの“Fire Strike”“Fire Strike Ultra”、DirectX12ベースの“Time Spy”そして“Time Spy Extreme”の4種類のテストで比較する。

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「3DMark」のスコアー

さすがCUDAコア数5120基のモンスターGPUだけあって、どのテストでもOC版GTX 1080Tiを上回っている。この形でみると伸び率があまり分からないが、今回GTX 1080Tiに対するTITAN Vのスコアー比をみると、Fire Strikeが5%、同Ultraが8%に対し、Time Spyで16%、同Extremeだと24%と、負荷が高いほどスコアーの伸びは良くなっている。

つまりフルHDの描画負荷の低い環境では、CUDAコア数の多さやメモリー帯域の広さといったTITAN Vのメリットは活きない、という傾向がありそうだ。

続いては「VRMark」だ。これまで使用してきた“Orange Room”“Blue Room”に加え、DirectX12ベースの“Cyan Room”も比較対象に加えた。

Cyan Roomもパフォーマンスも気になるが、既存のGPUではマトモにうごくものがないBlue Roomが、どの程度動くのかに注目したい。

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「VRMark」のスコアー

負荷の低いOrange Roomでは、どのGPUも260fpsあたりが天井になるのか、スコアーはほとんど伸びない。それどころかGTX 1080Tiの方がスコアーが上回ることすらある。

だがBlue Roomになると一気にTITAN Vが本気を出す。Blue Roomのターゲットfpsは109、つまりBlue Room相当のゲームが出た場合でも素のTITAN Vではカクつきは避けられないといったところだが、OCすればかなりターゲットfpsに近づくことができた。

だがそれ以上の注目したいのはCyan Roomのスコアーだ。従来のGeForceではスコアーはOrange>Cyan>Blueの順で低くなる。しかしTITAN VではCyan Roomのスコアーが一番高い。

DirectX12ベースである故の結果なのか、単純にTITAN Vのスペックが効いたのか、はてはVoltaから導入されたキャッシュやディスパッチ周りの改善なのかは判断できないが、DirectX12ベースのゲームに対しTITAN Vはかなり相性が良いことがうかがえる。

では実ゲーム系ベンチに入ろう。まずはDirectX11ベースの「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチを利用する。画質は“最高品質”とし、解像度をフルHD/WQHD/4Kの3通り(解像度は以降同様)で計測した。また、テスト中の平均fpsも合わせて比較する。

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「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチのスコアー

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「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチの平均fps

まずフルHD時のスコアーを比較すると、素のTITAN VではOC版GTX 1080Tiに並ばれるどころか、微妙にスコアーで上回られてしまう。

ただ平均fpsでは1fps未満なので、差という程のものではない。ここでも“描画負荷が低すぎる状況ではTITAN Vは力を発揮できない”ケースが確認できた。

だがOCすれば一気にスコアーを伸ばすため、素のTITAN Vの弱点はコアクロックの低さであると推測できる。前述の“ゲーミング贅肉”をそぎ落とし高クロック化すれば、もっと違う結果になるだろう。

コアクロックが低いという弱点は、描画負荷が高くなるに従い相殺され、逆にCUDAコア数の多さやメモリー帯域の広さがアドバンテージになる。

WQHDになると素の状態でもGTX 1080Tiを上回り、4Kになると平均フレームレートにして8fps近くの差になる。現状のTITAN Vのコスパは最悪だが、ゲーマー向けのVoltaが出れば、また違った評価になるだろう。

続いてはDirectX11ベースの中でも重量級である「Assassin's Creed: Origins」で検証する。画質はプリセットの“最高”とし、ゲーム内ベンチマーク機能を利用して平均fpsだけ比較した。

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「Assassin's Creed: Origins」の平均fps

CPUもGPUもフル回転に近い負荷をかけるベンチマーカー向けのゲームだが、こんなゲームでもフルHDでは素のTITAN Vは本気を出してくれない印象。

このゲームでもWQHDより上の解像度でフレームレートを伸ばす。さすがにGTX 1080Tiとの差は非常に小さいので、グラフィックエンジン側で相当重い処理をして、それがボトルネックになっている印象がある(CPUは6コア12スレッドで若干余裕がある状態)。

DirectX11ベースのゲームの最後を飾るのは、昨年末に正式版がリリースとなった大人気タイトル「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」のパフォーマンスをチェックする。

正式版で追加された砂漠マップ用の待機所に出現したところで一定のコースを走り、その時のフレームレートを「Fraps」で計測する。画質は“ウルトラ”とした。

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「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」1920 ×1080ドット時のfps

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「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」2560 ×1440ドット時のfps

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「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」3840 ×2160ドット時のfps

PUBGはベータを脱出して大分軽くなったような印象を受けるが、一定のフレームレートでキャップがかかるため、ハイエンドGPUは高解像度でないとあまり意味がない。

フルHDではGTX 1080Tiに負けるが、WQHD以上で逆転、4Kで完全優位というのはこれまでのゲームでも見られていた図式だ。今回は待機所におけるフレームレートだけの計測だが、OCすれば60fps以上を維持できたことは非常に興味深いところ。

解像度を上げると遠方の視認性があがり有利になるゲームなので、これはVoltaベースのコンシューマー向けGPUが楽しみになってきた。

DirectX12ベースのゲームでも検証する必要がある。まずは「Ashes of the Singularity: Escaration」を使用する。画像は“Crazy”とし、ゲーム内のベンチマークモードを利用して計測した。グラフ内の“○○Batch”とあるのは、描画するシーンの重さ別に集計した平均フレームレートである。

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「Ashes of the Singularity: Escaration(DX12)」1920×1080ドット時の平均fps

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「Ashes of the Singularity: Escaration(DX12)」2560×1440ドット時の平均fps

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「Ashes of the Singularity: Escaration(DX12)」3840×2160ドット時の平均fps

このゲームではフルHDの段階からTITAN VがGTX 1080Tiより優位に立っているが、負荷が高くなるほどTITAN Vの優位性が高まる、という感じではない。Assassin's Creed: Originsのように負荷が重すぎてTITAN Vのメリットが活かせないのかもしれない。

ではもう少し軽いゲームとしてWindows 10ストアー専用タイトル「Forza 7 Motorsport」で検証してみよう。画質はダイナミックオプティマイゼーションが働かないよう、手動で各設定を1つ1つ一番重くしている。ただしレンダースケールは100%、MSAAは4xとした。ゲーム内のベンチマーク機能を利用して計測する。

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「Forza 7 Motorsport」1920×1080ドット時のfps

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「Forza 7 Motorsport」2560×1440ドット時のfps

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「Forza 7 Motorsport」3840×2160ドット時のfps

Forza 7ではフルHD時でGTX 1080Ti(OC版)に並ばれてしまったが、WQHD以上の解像度ではTITAN V有利、50MHzでもOCすればさらに伸びる、という結果となった。

TITAN Vをゲームで使う場合はWQHD以上の出力でないと意味がない、と結論づけていいだろう。そして低負荷におけるパフォーマンスが伸び悩む原因としては、コアクロックの低さであることもわかった。

ワットパフォーマンスは 危惧していたほどでなかった?

ここで消費電力と発熱面もチェックしておきたい。回路規模の大きいハイエンドGPUはワットあたりの性能悪化はとかく犠牲になりやすいが、今回は特にワットパフォーマンスよりも計算性能の確保に重きをおいたような製品なので、非常に気になるところ。

そこでシステム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkのTime Spyデモ実行中のピーク値を“高負荷時”としてシステム全体の消費電力を計測した。

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システム全体の消費電力

さすがCUDAコア数が多いだけあってアイドル時の消費電力は8W近く上昇したが、逆にグラフィック描画時の消費電力は素の状態でも350Wをやや上回る程度とそれほど強烈に多くもない。

今回の検証環境ではGTX 1080Tiの方がワットパフォーマンスが悪い印象を受けるが、これはGTX 1080TiカードがOC版であるため。

筆者の経験だとFounders Editionであれば、Kaby Lake-Sベースのシステムで350から360Wあたりに収まるため、今回の検証環境では370Wあたりといったところだ。このことを考えてみても、TITAN Vのワットパフォーマンスはかなり良好といえる。

また発熱はTITAN Vのみ計測した。「Assassin's Creed: Origins」を起動~プレイ状態で約30分放置~ゲームを終了させて約10分放置させた時の推移を「HWiNFO64」で計測した。その際GPUコアのクロックとPerformance Limitフラグのうち“Thrermal”フラグの状態も合わせて追跡している。

後者のフラグが立てば、それはTITAN Vの温度管理機能が“温度が高すぎるからクロックを下げる等の対策を打とう”と判断したことがわかるからだ。

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TITAN Vのコアクロックと温度の推移

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TITAN VのコアクロックとThremalフラグの推移(ピンクの範囲がフラグが立った時)

まずGPU温度については、ゲーム開始早々に83度まで一気に上がり、ゲーム終了時までほぼそのレベルを維持し続けている。この83度という温度は、Founders Editionのクーラーを装備した従来のGeForceでも見られた“マジックナンバー”的な値だ。市販のOC版ビデオカードからするとやたら高く思えるが、あのクーラーなら特別高いとは言えない。

むしろポイントはクロック推移の方だ。ゲーム起動直後、1分程度のところでコアクロックは1.8GHzあたりまで一気に上がる。だがそれ以降は一気にクロックを落とし、1.56GHzあたりまで落ちてようやく安定する。

TITAN Vのブーストクロックが1455MHzなのであのクーラーでも十分役割を発揮できていると言えるが、Thermalフラグの立ち方をみると、クロックが一気に落ちるタイミングとThermalフラグが立つタイミングがほぼ一致しており、その後ゲームが終了するまでThermalフラグはほぼ立ったままだ。

TITAN XやGTX 1080Ti Founders Editionでもそうだったが、TITAN Vでもリファレンスクーラーの存在がパフォーマンスの足を引っ張っていると考えて間違いないだろう。

ただTITAN Vの場合サードパーティーからオリジナルクーラー搭載モデルが出る予定は限りなくゼロといっていい。つまりTITAN Vユーザーが根本的なパフォーマンスアップを獲得するためには、完全水冷化しか道は残されていないのである。

原稿執筆時点でTITAN V用の水枕は発売されておらず、簡易水冷キットを利用する以外に道はない。だが簡易水冷キットではGPUとメモリーは冷やせても電源部の冷却が疎かになる。TITAN Vを最高の性能で運用しようと考えているなら、こうした冷却パーツの出方を見てからでもいいだろう。

倍精度モンスターが牙をむく

ここまでゲームの性能を中心に見てきたが、GPGPU関係の性能もチェックしておきたい。本来なら機械学習のパフォーマンスで見るべきだが、まだコンシューマー用途で機械学習のパフォーマンスを活かせるキラーソフトがないため、一般的なGPGPUベンチでの比較にとどめる。

まずは動画エンコーダー「TMPGEnc Video Mastering Works 6」でのパフォーマンスをチェックする。このソフトでは一部フィルター処理にCUDAを利用することができ、CPUだけで処理をするよりも大幅な処理時間短縮が見込める。

今回は再生時間4分50秒の4K MP4動画(ゲームプレー中の動画をGeForceのShareでキャプチャーしたもの)を1パスで変換する時間を計測する。フィルター処理は1270×720ドットへのリサイズ(Lanczos-3)、およびノイズ除去(範囲は“普通”)の2つを付与した。

エンコーダーにもGPUが使えるが、これは画質の悪いNVENCではなくx264を使用し、最終アウトプットとして720pのMP4が出力されるようにした。また、この処理をCPU(Core i7-8700K)のみで実施した場合の時間とも比較する。

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「TMPGEnc Video Mastering Works 6」における動画変換時間

CPUのみだと30分以上かかる作業も、CUDAの力を利用すれば8分台で終了できる。TITAN VはGTX 1080Tiより短時間で処理を終えられたが、GPUスペックや価格の差から期待されるほどのパフォーマンスアップには至らなかった。

こうした用途では当然ながら最適化というファクターが非常に重要なので、まだTMPGEnc側がVoltaアーキテクチャーを上手く扱えてないだけ、といえるだろう。

続いては「V-Ray Benchmark」を試す。CPU検証記事でもたびたび使用しているベンチマークだが、このベンチはCUDAのパフォーマンス計測にも利用できる。CPUとは処理の手法や使用するシーンが違うため、GPUのみで比較する。

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「V-Ray Benchmark(CUDA)」の処理時間

このベンチは処理時間で結果がでるため、当然ながらグラフの短い方が速い。GTX 1080TiのOC版でも1分以上かかる処理が、TITAN Vにかかれば41秒と、大幅なパフォーマンスアップとなった。

こちらは特にTITAN Vへの対応をうたっているわけではないので、単純にアルゴリズムがTITAN Vと相性がよかったと考えられる。

ではどういった計算がTITAN Vで強いのか(演算ユニットの構成からほぼ自明だが……)を調べるために「Sandra 2017」の“GPGPU演算”テストを利用して調べてみた。

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「Sandra 2017」“GPGPU演算”のパフォーマンス

上のグラフの単位は“メガピクセル毎秒”であるため、長い方が性能が高いことになる。ここで注目なのは単精度浮動小数点(Single-Float Shaders)の処理はGTX 1080Tiからせいぜい18%しか向上していないのに対し、倍精度浮動小数点(Double-Float Shaders)では14倍以上に伸びている。TITAN VはFP64処理性能に軸足を置いたGPUであることが確認できた。

ソフトウェアがVoltaの計算力を使いこなすには、当然FP64を処理にできるだけ多く組み込む必要がある。だが残念ながらゲームでFP64はほぼ使われない。

FP32がゲームでは使い勝手がいいどころか、最近ではFP16の処理を高速化するGPU(つまりVega)すら出現している。VoltaをGeForceにするためには、TITAN Vを単純にスケールダウンしただけではダメなのだ。

もうひとつ、Sandraに収録されているGPGPU系ベンチマークのうち、GPGPUを利用した財務分析パフォーマンスの比較もしてみよう。このベンチではFP64ベースを利用して、さまざまな数値解析を行なう。この計算量を比較するというものだ。

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「Sandra 2017」“GPGPU財務分析”のパフォーマンス

このグラフでもバーが長い方が1秒あたりの計算量が多い。FP64モンスターであるところのTITAN Vが、GeForceに対して圧倒的なパフォーマンスを誇っているのがよくわかるだろう。

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仮想通貨にも効くだろうということで“Claymore Dual GPU Miner”でEthereumマイニングをさせてみた。デフォルト設定のTITAN V1枚でのハッシュレートは68MH/秒台(GTX 1080Tiはメモリーがネックになり32MH/秒あたり)。今回の検証環境におけるマイニング時の消費電力は200W以下だった

で、ゲーマー用Voltaはいつ?

以上でTITAN Vの検証は終わりだ。確かにTITAN VはすごいGPUだが、ゲームにおいては真価を発揮できるシチュエーションは限られている。解像度が低い状態でのパフォーマンスは少々心許ないが、WQHD以上、特にDirectX12ベースのゲームで効果的なようだ。

期待されるHBM2メモリーを採用したから、5120基ものCUDAコアを備えたから、あるいはL1キャッシュと共有メモリーの統合が効いたから、などさまざまな要因が考えられるが、今のところは何とも言えない。TITAN VのことをNVIDIA自身が「ゲーミング用GPU」と一言も言っていないのは当然の話である。

だが、この記事を読んでいる皆さんにとっては、いつこのTITAN Vがコンシューマー向けに降りてくるかが気がかりだろう。ネットでは次期GTX 2000シリーズにはVoltaと対になる“Amper(アンペア)”というコアが来る、といった説まで飛び出している。

ただ前述の通り、TITAN VをそのままスケールダウンしたものがGeForceに降りてくるとは考えにくい。TensorコアやFP64ユニットという“ゲーミング贅肉”をそぎ落とし、高クロック化しなければゲーミングパフォーマンスは劇的に向上しない。

これが実現した場合、今回のTITAN Vとはまた性能の傾向の違うGPUになるだろう。さらにTITAN Vで捨てたマルチGPUも必要になってくる。GPGPU用特化のTITAN Vとは別に、ゲーマー用に“ゲーマーのためのTITAN”、おそらく“TITAN Vx”のような製品を投入するシナリオはそう荒唐無稽な話ではない。

その一方で次期GTX 2000シリーズはPascal Refresh版であるという超現実的な予想もある。Fermiからこの方、アーキテクチャーは基本2世代で世代交代(Maxwellは実質1.5世代だが……)している経緯を考えると次期もPascalと考えるのが自然。何よりライバルと目されていたVegaの状況を考えると、NVIDIAとしては焦ってVoltaを投入する必要もないのだ……。

どちらの観測が的中するにせよ、今回のTITAN VのベンチマークだけではまだVoltaの真の実力を暴き出すことはできない。果たしてPascalを超える存在になるのか? ひとつだけ確かめられたのは、今年NVIDIAがどう動くのか、一瞬たりとも目を離すことはできないということだ。

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