米国の圧力をかわすため、安倍官邸が準備した「巨額ファンド」の実態

米国の圧力をかわすため、安倍官邸が準備した「巨額ファンド」の実態

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/08/11
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圧力をかわすための「秘策」とは

茂木敏充経済再生相は8月9日午後(米国東部時間)、ワシントンでロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と会談した。6月7日午後(同)に行われた安倍晋三首相とドナルド・トランプ大統領のトップ会談で新たに設置することを合意した日米貿易協議(FFR)である。

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貿易赤字問題では強硬姿勢を崩さないライトハイザーUSTR代表(Photo by GettyImaes)

トランプ大統領が強く主張する日米貿易不均衡の解消、すなわち約7兆7000億円(2017年度)に達する対日貿易赤字解消問題で、米側は日本側に対し日本主導のTPP(アジア太平洋パートナーシップ協定)11諸国の批准進展を横目に2国間貿易の自由貿易協定(FTA)の交渉入りを求めるだけでなく、対米輸出自動車・同関連部品の追加関税25%発動の圧力をかけてきている。

トヨタ自動車は3日の4~6月期の決算発表記者会見で、この追加関税措置が実施されれば同社だけで年間約4600億円の負担増になるとの試算を明らかにした。現下の日本の至上テーマは、まさに自動車関税25%発動の回避である。

そうした中で、「日本経済新聞」は2日深夜の電子版で「米インフラ開発に新基金、政府検討―対米協力の材料」という興味深い記事を配信した(ちなみに翌3日の同紙朝刊の見出しは「米インフラ整備資金支援―政府、新基金を検討―通商圧力をかわす狙いも」と踏み込んだものとなった)。

要は、安倍政権は海外でのインフラ整備などに投資する新しい基金=政府系ファンドを設立し、トランプ政権が意欲を示すインフラ開発や、米国が関わる第三国での案件などに長期投資するというのだ。

兆候はあった。7月30日、今やトランプ大統領の最側近であるマイク・ポンペオ国務長官がワシントンで開催された全米商工会議所主催の経済フォーラムで、スリランカやパキスタンへの海上進出が著しい中国を念頭にインド太平洋地域のインフラ整備などを支援するファンドを1億3000万ドル(約143億円)拠出して設立すると発表した。

この米ファンド構想は、日経報道の「米国が関わる第三国での案件」を対象としたものである。しかし、あらためて言うまでもなく、肝は「トランプ政権が意欲を示す(米国内の)インフラ開発」なのだ。

「オールジャパン」体制で準備されるファンド

そのための「新基金設立」構想――。政府系ファンドは諸外国で「ソブリン・ウェルス・ファンド(Sovereign Wealth Fund)」と呼ばれ、運用資産が2000億ドル(約22兆億円)から6000億ドルを超えるアブダビ投資庁(ADIA)、ノルウェー公的年金基金(GPFG)、シンガポール政府投資公社(GIC)、サウジアラビア通貨庁(SAMA)などが日本でも知られている存在だ。

では、安倍政権が「圧力をかわす狙い」から構想した新基金とはいったいどのようなものなのか。先の「日経新聞」を引用すると、次のようなものだ。<内閣官房が月内にも、インフラ投資での日米協力に関する検討会を立ち上げる。外務、財務、経済産業など関係官庁が参加して具体策を詰める>というのである。

筆者が承知する限り、この構想はそもそもトランプ大統領が一昨年の米大統領選で公約に掲げた「劣化した国内インフラ整備に1.5兆ドル(約165兆円)投入」を受けて同政権発足後の2017年初頭、経済産業省(嶋田隆事務次官)が捻り出した対米貿易黒字解消策にさかのぼる。

トランプ政権の経済政策立案責任者にアクセスがある同省の寺澤達也商務情報政策局長(当時・現経済産業審議官)が中心となってプラン化したものである。そしてその原案を基に、現在は首相官邸の和泉洋人首相補佐官(旧建設省OB)がコアメンバーとして具体策を詰めているのだ。

「新基金は、国際協力銀行(JBIC)など公益性の高い事業を担う特殊法人につくる」(日経新聞)と報じたように、実は前田匡史JBIC総裁が構想作りの段階から深くコミットしている。

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新基金の構想に深くかかわる前田匡史JBIC総裁(Photo by GettyImages)

経産省の商務情報政策局(西山圭太局長)と貿易経済協力局(石川正樹局長)、外務省の経済局(山上信吾局長)と国際協力局(梨田和也局長)、財務省の国際局(武内良樹局長)が総結集する、まさに”オールジャパン”体制で臨んでいるのだ。

はたして茂木経済再生相はライトハイザーUSTR代表とのタフな交渉で、この新基金構想をディール(取引)材料にして自動車追加関税を回避できるのだろうか。日米貿易協議の行く末は、その一点に尽きる。

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