"ただ不便"な超大型書店はもう無理なのか

"ただ不便"な超大型書店はもう無理なのか

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2017/12/12

「大型書店は本を探すのに苦労する『ただ不便』な店になった。化石みたいな商売で、ギリギリの経営をつづけている」。書店の大型化を引っ張ってきたジュンク堂書店の創業者・工藤恭孝氏は、今年5月、こう発言して話題を集めた。もう大型書店は成り立たないのか。工藤氏に聞いた――。

編集部注:工藤恭孝氏は今年11月、丸善ジュンク堂書店の社長を退き、会長に就任した。インタビューは社長在任中だった今年8月に収録した。

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丸善ジュンク堂書店・工藤恭孝会長

「化石みたいな商売」で「ギリギリの経営」

――今年5月、工藤さんは書店経営者を集めた「日経BPマーケティング特約会」で、「大型書店は『化石』みたいな商売でギリギリの経営を続けている。その筆頭が丸善ジュンク堂書店だ」と発言されたそうですね。書店の大型化を引っ張ってきた工藤さんの発言だけに、会場は静まりかえったと聞きました。

【工藤】「化石みたいな商売」とお話ししたのは事実です。私はこんな話をしました。

「ネット検索が広がり、大型書店は本を探すのに苦労する『ただ不便』な店になった。ネット書店は電子書籍と検索機能などで読者の利便性を高めている。一方で、大型書店は『化石』みたいな商売でギリギリの経営を続けている。その筆頭が丸善ジュンク堂書店。実際に大型店ほど苦戦している。中でも丸の内、池袋、大阪、福岡などの巨艦店舗が全部苦しくなっている」

いまはアマゾンのようなネット書店を使えば、専門書でも簡単に見つけられます。お客さんは以前だったら大型書店に行って、一生懸命探してくれました。しかし、いまは「もうそんな時間はもったいない」という方もいる。リアル書店と違って、すぐに手に入るとは限らないけれども、簡単に見つけることができる便利な装置ができてしまうと、われわれが得意としてきた大型店が一番影響を受けます。

「アマゾンが便利な仕掛けで、われわれが得意とする、手に入りにくい本をどんどん売っているために、アマゾンの伸張と合わせて大型店がずっと苦しくなっているのはみなさんご存じのとおりです。だから、今から対応を考えないといけません」という話をしたつもりでした。ただ、「だから」以下の部分が抜け落ちて伝わってしまったようです。

たしかに大型店舗は苦しくなっています。買うには不便な店と思われているからです。しかし、買うだけという点では、すでにアマゾンのやり方も古くなっているんじゃないでしょうか。モノの消費よりコトの消費と言われている中で、われわれはリアル店舗だからこそ展開できることがあると思います。わざわざ来てもらえるだけの楽しさを演出できない書店は、アマゾンに全滅させられるんじゃないですか、ということを、言ったつもりでした。しかし、そのことがちゃんと伝わらなかったみたいで、泣き言の会で終わってしまいました。

大型店では「宝探し」になってしまう

――工藤さんは書店の大型化を引っ張ってきた第一人者です。「大型書店は化石になっている」と言う発言に、書店経営者がショックを受けるのはわかる気がします。

【工藤】目当ての本を探すというだけでは、たしかにネット書店のほうが便利です。われわれの店は、できるだけ本を探しやすい構造にしていますが、それでも「どこにあるかわからない」とご指摘を受けることがあります。大型店にある検索機を使えば、その本は何階のどの棚にあるか、パッと出てきます。でも、前のお客様が手に取った本を違う場所に戻されたら、もうわからなくなってしまう。要するに「宝探し」になってしまうんです。

探している本の近くに来たらスマホが反応する、といった具合に、もっと便利な装置を開発しないといけません。また探すことが楽しいという仕掛けも必要です。「ポケモンGO」が参考になるはずです。本の在庫がすぐわかり、どこの棚にあるかも確認できる。そしてお客さまに来店していただき、中身を見てから買っていただく。アマゾンでは、中身までしっかり見られるわけじゃありませんからね。

来店さえしていただければ、お目当ての本を買う前に「ちょっと待てよ、こっちの本もいいぞ」という気付きも生まれます。だから、リアル書店には足を運んでいただけるだけの「付加価値」を感じてもらう必要があると思っています。

当社では「honto」というネット書店のグループを持っていて、ネットとリアルの融合については、アマゾンよりも何年も前から進めています。ネットで注文いただければ店舗に取り寄せることもできるし、ご自宅まで送ることもできる。ただし、来店いただくだけの「付加価値」という点では、まだ取り組みが足りないと思っています。

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丸善ジュンク堂書店・工藤恭孝会長

ネット書店は沖縄本島に在庫100万冊をもてるか

――大型店の役割はこれからどうなるのでしょうか。

【工藤】私どもの場合、旗艦店である池袋本店の在庫量が特別に多いんです。ロングテール(販売量の少ない多くのアイテム)の部分は、あそこから出荷しているんです。

だから出版社によっては、自社の倉庫に常備していないような稀少本まで、池袋本店に預けてくれています。要するに出版社に頼んでも出荷してもらえないような本まで持っているんです。だからお客様が探している本のヒット率は、アマゾンよりもわれわれのほうがずっと高いはずです。アマゾンが「バックオーダー」、いわゆる取り寄せ委注文をやめてしまったのは、うちだったら1日で届くのに、アマゾンでは3週間もかかるのか、と言われるのが嫌だからでしょう。

それから沖縄の場合、うちは国内で4番目に多い100万冊の在庫をもつ那覇店がありますから、離島でも翌日には届けられます。ネット書店が宅配便で本州から送ると、1000円以上の費用がかかる上に、2日以上かかってしまう。それではネット書店のみなさんが沖縄にそれだけの在庫をもつかといえば、それは考えづらいでしょう。

東京以外では「下げ止まり」の傾向

――大型店がネット通販の「倉庫」のような役割を果たせば、売り上げの減少は止められるということでしょうか。

【工藤】東京の巨艦店舗以外は下げ止まってきています。なかには伸びている店舗もあります。ただ、競争相手はアマゾンだけではない。もっと大きな問題はネットでいろいろなサービスが増えているため、本を読まなくなる人が増えているということです。

電車に乗って観察していると、みんなスマホでゲームをしています。結局、紙の本を読む時間が減っている。この変化には、うちだけでは抵抗できません。とくに巨艦店舗というのは、地域の売上を独占しているような部分があるので、市場全体の数字が下がると同じように影響を受けてしまいます。読書時間が5%減れば、うちの売り上げも5%減ってしまう。これだけはうちの力ではどうにもならない。業界全体で本を読む人を増やしていかなければいけません。

コンビニや地方の郵便局を書店に

――「丸善ジュンク堂」のような大型チェーンであれば、アマゾンなどのネット書店に対抗する方法がありますが、地元密着の小規模書店では廃業するケースが相次いでいます。

【工藤】問題は雑誌ですね。値段を上げたら売れないと思っている版元さんが大勢なのでね。書店が売り上げを確保できるような高価格の雑誌を出してもらわないと、書店経営は難しいです。値段を上げて、正味(書店の仕入れ値)を下げてもらえれば、町の本屋さんにも「うちは店にゆとりがあるから配達もするわ」と考えてもらえるでしょう。そうした対策を何とか出版業界全体でやれないものか。フレッシュな売り場をつくるには、雑誌は欠かせません。本屋がなくなった地域でも、せめてどこかに雑誌は置いてほしいですね。

――書店のなくなった地域では、コンビニが雑誌や書籍の流通を担っていますね。

【工藤】コンビニが本屋の役割を果たしてくれれば、それは望ましいことだと思います。もしくは郵便局が担う可能性もあるでしょう。スペースに余裕のある地方の郵便局には、「半分本屋にしてくださいよ」とお願いしたい。郵便局ですから配送もできるはずです。流通機能を相乗りで使えば、稼働率も上がり、効率化も進むと思います。

工藤 恭孝(くどう・やすたか)
丸善ジュンク堂書店 会長
1950年兵庫県生まれ、72年立命館大学法学部を卒業後、実父の工藤淳が経営していたキクヤ図書販売に入社。76年にジュンク堂書店を立ち上げ代表取締役社長に就任、2012年丸善書店の社長に就任、2015年丸善書店とジュンク堂書店が合併し丸善ジュンク堂書店発足、初代社長に就任。17年11月代表取締役社長を退任し会長に。

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