コロナウィルス拡大にはやはり米国の責任も?

コロナウィルス拡大にはやはり米国の責任も?

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  • 更新日:2020/03/27
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ジョージア州アトランタにあるCDC本部(AP/AFLO)

今、新型肺炎を引き起こすコロナウィルスの拡散を巡り、米中の対立が深まっている。米国では以前からSNS上でロシアによるフェイクニュースと見られる「コロナウィルスは米軍の研究所で作られたもの」という書き込みがあったが、中国外務省高官がこのままの発言を行い、中国は被害者だと言わんばかりの態度にトランプ大統領がマジギレしている。

中国の主張はいやに具体的で、米国テキサス州などの軍事研究所が唐突に閉鎖され、その後武漢を中心にコロナウィルスが広がったが、当初考えられていた海鮮市場で動物から人へ、というのは証明できなかった。米軍がウィルスを中国に持ち込み拡散した、というもの。

米側にしてみれば言いがかりであり、トランプ大統領は繰り返し「中国ウィルス」という言葉を使い、「もし中国政府がもっと早い段階でウィルスの存在を認め、拡散防止を行っていればこのような事態は防げた」と語っている。実際、感染が広がり武漢が閉鎖された初期の時点で米国は中国への医師団や研究員の派遣を打診したが、中国側は拒否した。これにより中国政府が何かを隠蔽している、という疑惑が広がったのも事実だ。

しかし、3月末の週末に、米国というかトランプ大統領にとって不都合な事実が報道されるようになった。トランプ政権は昨年7月の時点で、中国CDCに派遣されていた米国のCDC(アメリカ疾病管理予防センター)感染症専門家リンダ・クイック氏に対し「職務をサポートする基金を取消す」と通達、クイック氏はやむなく7月に中国を去っていたという。クイック氏は中国の公衆衛生の専門家を訓練し、中国厚生関係の役人と米国の同様の役人の連絡役も期待されていた。

もし、という仮定の話になるが、クイック氏がそのまま中国に派遣されていれば、米国側はより早く情報をつかみ、中国政府が数週間に渡り情報を隠蔽していたと思われる事態を防ぐことが出来たのでは、という疑惑が生じているのだ。

予算ではなく米中貿易摩擦

この報道を巡り、トランプ大統領はCDC長官ロバート・レッドフィールド氏を呼び出し、「政府が基金を取り消したというが、政権はCDCに対し以前よりも予算をつけている。なぜこのような事態になったのか」問いただす場面もあった。クイック氏が中国を去ったのは予算の問題というより米中貿易摩擦の結果、という見方もある。つまり対中強硬姿勢を取る大統領に対し、どこかで何らかの忖度が働いた、とも考えられている。

では実際のCDC予算はどのように動いていたのか。民主党の予備選に出馬したマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は大統領がCDC予算をカットし、国民の安全を無視していた、と主張していた。実はこの主張、一面では正しく一面では正しくない。

CDCの予算は2017年が71億8500万ドル余り。翌2018年にトランプ政権が提案した予算は59億7500万ドル余り、と大幅にこれを下回る。しかし下院の反対にあい、実際の予算は70億ドル余りとなった。19年も同様で、政権の提案56億6000万ドル余りに対し、実際の予算72億8200万ドル余り。20年は提案65億3100万ドル余り、実際は76億9400万ドル余り。

問題はCDCと大統領の関係性

そして2月に発表された21年度の政権による予算提案は70億ドル。つまり、トランプ大統領は確かにCDC予算を削減しようと動いていたが、実際にはそれほどカットはされていない。むしろ19年から20年にかけてCDCの予算は増えている。

では何が問題だったのか、と言えば大統領とCDCの関係そのもの、と言える。CDCは国から独立した機関であり、独自の権限を持つ。しかし政権内部にはHHS(米保険福祉省)、FDA(米食品医薬局)といった機関があり、しばしばCDCと見解を異にすることがある。今回のウィルス騒動でも、初期にCDCとHHSの確執が報じられた。実際の予算に対する政権の予算案を見ても、政権がCDCを軽視していたことは明らかだ。

またトランプ政権は2018年にグローバル・ヘルス・セキュリティ・アンド・バイオディフェンス部門のシニアディレクターの職務を解消した。この職務は事実上のパンデミック対策を行うものだが、当時の国家安全保障局の縮小に伴い削減された。テロなどの危険性は9・11から減少し、経済問題に注力して政権を安定させたいという大統領の志向に基づいたものだが、経済を追い求めるあまり安全、公衆衛生の面はなおざりだったのだ。

もちろんクイック氏が中国に駐在を続けたからと言って、現在の中国の体制から直ちに事実を把握し、米国に協力を要請するのは難しかったかもしれない。しかしこうした小さな事実の積み重ねが中国による米国への不信感を大きくしていた、という事実も否めないのではないだろうか。

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