新生FREETEL、「eSIMスマホ」で激戦スマホ市場に再挑戦:週刊モバイル通信 石野純也

  • Engadget
  • 更新日:2018/02/14
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プラスワン・マーケティング(POM)からFREETELブランドと端末販売の権利を引き継いだMAYA SYSTEMが、「REI 2 Dual」と「Priori 5」の2機種を発表しました。紆余曲折を経てようやく発売にこぎつけられたREI 2 DualとPriori 5ですが、この2機種はMAYA SYSTEMの方針からは、破綻した旧FREETELとは異なり、堅実に市場を広げていこうという意思が伝わってきました。旧FREETELを運営していたPOMは、元々SIMフリースマホメーカーとして創業しました。市場の拡大に伴い、MVNOにも進出し、派手な宣伝と299円からという低価格な料金プランを武器に、ユーザーを増やしてきました。女優の佐々木希さんや、タレントの高田純次さんを起用したテレビCMも話題を集めました。ところが、こうした料金プランや広告展開が裏目に出ます。

結果として2017年には資金繰りが悪化し、一部の取引先に入金が滞り始めます。経営状況を打開するため、POMはMVNO事業だけを分離して、楽天に売却。残された端末事業だけで、会社を再建する予定でした。ただ、やはり資金繰りのめどがつかず、2017年12月には民事再生法の適用を裁判所に申請しています。その際に、スポンサー候補として名乗りを上げていたのが、REI 2 DualとPriori 5を発売する、現FREETELのMAYA SYSTEMです。

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▲MVNOとしても事業を本格化させたPOMだが、財務状況はこのころから悪化していく

唐突に支援を表明したかのように見えたMAYA SYSTEMですが、実は以前からPOMには接触しており、協同で端末を開発しようとしてきました。MAYA SYSTEMの吉田利一代表は、「昨年6月ぐらいにFREETEL(POM)がeSIM端末開発に着手したという記事が出たのを見たが、端末製造には着手できていなかった。自分たちでeSIM端末を作ろうとしていた矢先だったので、チャンスと思いミーティングを始めていた」と語ります。

MAYA SYSTEMは、クラウドSIMを搭載したjetfiというWi-Fiルーターの販売やレンタルを手掛ける会社。クラウドSIMとは、ネットワーク経由でSIMカードの情報を書き換えるeSIMの一種で、中国のuCloudlink社が技術を開発しました。ユーザーのメリットとしては、海外渡航時に、現地事業者の回線をクラウドSIM経由で利用できるため、通信料金が割安になること。クラウドSIMの場合、通信事業者の設定は提供者側、この場合だとMAYA SYSTEM側が一括で管理しているため、都度ユーザーが契約や設定をする必要もありません。

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▲クラウドSIM採用のjetfiを手がけてきたMAYA SYSTEM
MAYA SYSTEMは、おそらく、このクラウドSIMに対応したスマホを開発しようとしています。同社によると、夏ごろにはeSIM端末の発売を予定しているとのこと。ただし、この端末はFREETEL色が薄いという話で、MAYA SYSTEMがPOMに接触する前から開発が進められていた端末であることがうかがえます。すでにFREETELとは話を進めていたことや、eSIM対応スマホと親和性のあるブランドであることなどから、MAYA SYSTEMはFREETELの救済に合意。冒頭のように、REI2 DualとPriori 5の発売発表にこぎつけました。

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▲新生FREETELは、eSIMスマホの開発にも着手しているという
もっとも、夏ごろを予定するeSIMスマホがFREETEL色の薄いものであるのに対し、発表された2機種はMAYA SYSTEM色が薄い端末といえます。というのも、REI 2 DualやPriori 5は、POM時代から開発が続いていた端末だからです。元々2機種は、夏ごろの発売を目指していたといいます。

ただ、開発方針を改め、自社で設計やデザインを行った結果、開発期間が間に合わず、12月に延期されました。POMにとっては、MVNO売却後に出す、気合の入った2機種――になるはずでした。そのタイミングで冒頭挙げたような民事再生法の適用申請があり、FREETELブランドはMAYA SYSTEMに受け継がれます。つまり、2機種とも、POM時代から温めてきたスマホということ。MAYA SYSTEM色が薄いのは、当然です。

端末を見ると、画面下からスワイプでランチャーが出現するといった特徴のあるFREETEL UIはそのまま搭載されており、"らしさ"がうかがえます。一般的に、他のアジアの国々より化粧をきちんとする傾向のある日本人に向け、美顔モードの機能を抑えめにして、厚塗り感を薄くしたというのも、ソフトウェアの開発拠点が日本にあるFREETELらしいところ。Priori 5に関しては、背面カバーを外せて電池パックが交換できる仕様を復活させましたが、ここにもPOM時代の知見は生かされています。

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▲デュアルカメラ搭載のREI 2 Dual

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▲自然な補正が特徴の「ナチュラル美顔」モードを搭載

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▲FREETELの売れ筋でシリーズの最新モデルとなるPriori 5

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▲電池パックが交換できる仕様に戻った

端末そのものについてはPOMらしさが残るREI 2 DualとPriori 5ですが、MAYA SYSTEMらしい堅実さが感じられたのも事実です。たとえば、その価格。REI 2 Dualは3万6800円、Priori 5は1万6800円ですが、初代のREIは同じ税抜きで2万9800円、Priori 4は1万4800円で発売しました。REIは3万円以下というSIMフリースマホのスイートスポットを上手くついた機種で、Prioriも1万円台前半の格安端末という印象があります。REI 2 DualやPriori 5は多機能化している一方で、値段も上っていて、FREETELらしからぬ価格設定といえるでしょう。

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▲価格を攻めていたPOM時代よりも、やや高めな印象

もっとも、こうした価格破壊が続いた結果、POMは経営不振に陥ってしまったわけで、単に安ければいいというわけではありません。よくいえば、MAYA SYSTEMになり、本体価格の設定で"無理をしていない"印象を受けました。堅実さはラインナップにも表れており、MAYA SYSTEMの元で展開されるFREETELでは、「あまりたくさん、手広くシリーズ化をしようとは思っていない」(吉田氏)といいます。

具体的には、ど真ん中のミドルレンジモデルREIと、低価格が人気のPrioriに加え、もう1機種程度、ローエンドな端末が予定されているとのこと。フルラインナップ戦略を掲げていたPOM時代には、ハイエンド端末に加えて、ミドルレンジモデルも複数で構成されていたため、MAYA SYSTEMは売れ筋に端末を絞ってきた格好になります。これらに加えて、eSIM対応の端末をラインナップするというのが、新生FREETELの戦略で、他社との差別化要因もここになります。

MAYA SYSTEMによると、MVNOへの参入や、タレントを起用した派手な広告展開も考えていないということで、世界1位を目標に掲げ、SIMフリー市場ではファーウェイやASUSともガチンコで戦ってきた旧FREETEL時代とは大きく様相が異なっています。一言で評するならば、ヤンチャを卒業した"大人のFREETEL"といえるかもしれません。

FREETELが約1年間お休みをしていた間に、ファーウェイはさらに力をつけ、世界第4位のOPPOもSIMフリー市場に参入を果たしました。売れ続けてはいる一方で、大手キャリアの割安な料金プランや、サブブランドに押され、SIMフリースマホの重要な販路の1つであるMVNOの勢いにも、ブレーキがかかりつつあります。以前より、市場は激戦区になっているというわけです。

このような状況の市場では、闇雲に安価な端末を投入するより、eSIMのようにきちんと差別化されている技術を搭載していった方が得策だと思います。特にMVNOは、現状、海外データローミングが大きな弱点で、海外でデータ通信しようとすると、海外用SIMや現地SIMを別途購入する必要があります。MVNOの回線をメインにしていると、大手キャリアのように、気軽にデータローミングするというわけにはいかないのです。

新生FREETELのeSIM端末なら、このすき間に入り込む余地があります。大手のMVNOとタッグを組んで販売するにも、うってつけな印象を受けました。その意味で、夏ごろ発売される第一弾の端末も、今から楽しみになります。

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