オラクルなりの「AIと仕事」感

オラクルなりの「AIと仕事」感

  • ASCII.jp
  • 更新日:2017/10/12

カリフォルニアでは大規模な山火事が発生

10月9日月曜日、風の強いコロンバスデーの祝日の朝に窓を開けてみると、バークレーでは煙のニオイが強く、街全体が燻されているように視界も不良となっていました。

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バークレーから北へ40分ほど走ったワイン作りが盛んなナパバレー、ソノマバレーでそれぞれ大規模な山火事が発生し、その煙が夜のうちにバークレーにまで流れてきたのです。

この原稿を書いている10月10日までに、70000エーカー(283.28平方キロメートル、東京都全体の1/10)が燃え、中には住宅だけでなく、ホテルやワイナリーなども被害に遭っています。カリフォルニア州知事の非常事態宣言を続いて、トランプ政権も大規模災害に指定しました。

11月に入れば雨シーズンになりますが、今が最も乾燥が進んでいる季節であることから、こうした山火事が頻発するのが毎年のことで、なんともやるせない気持ちになります。

自動運転のデータベース?

10月のサンフランシスコは、ビジネス系テクノロジー企業のカンファレンスが目白押しです。オラクル、セールスフォース、GitHubなどが大規模なイベントを開催し、活発な情報交換が行なわれるホットスポットになります。もちろん、サンフランシスコ市自体への経済効果も非常に大きくなります。

先週10月第1週は、開催されたオラクルのカンファレンス「Oracle Open World 2017」に参加してきました。

オラクルはビジネスアプリケーションのクラウド転換で「最も急成長した企業」であると宣言しており、またオープンさを売りにする数少ない企業でもあります。

他企業が提供するクラウドや、自社に導入されているシステムとの接続を前提としたAPIを提供していることから、プログラマーのリソースが割けない非テクノロジー企業にとって、オラクルは非常に重要なパートナーとなっているのです。

そんなオラクルは今回、「自律型データベース」を発表しました。「Autonomous」という言葉は、自動運転自動車にも使われています。つまり、アップデートやパッチの適用、最適化などを自動的にしてくれるデータベース、という意味合いです。

人間の介在がエラーの原因

オラクルが発表した自律型データベースのメリットと人工知能に対する考え方は、1つのヒントを提供してくれます。自律型データベースを導入するメリットとして、主にエラー回避とコストを挙げています。

エラー回避とは、ヒューマンエラーのこと。人が介在する設定ミスやそこから引き起こされる問題を排除できることが、自律型データベースの1つのメリットだというのです。

人がデータベースのメンテナンスに関わるからトラブルが増えるのであって、メンテナンスから人を排除すればより安定的に運用できる、という意味です。加えて、そのメンテナンスに架かる人件費のコスト、トラブル対応のコストがなくなることが、コストメリットになります。

この話を聞いて、「なるほど」と思う部分と、顔をしかめて複雑な心境になる部分があります。人が導入して人が管理してきたシステムが、トラブルは人のせいだと言い始めているわけですから。

浮いた人やコストはイノベーションに回す

自律型データベースを発表するオラクルのメッセージは、別のところにありました。データベースのメンテナンスに費やしている人とお金を、イノベーションのための投資に回すべきだということです。

現状維持のためのコストを軽減して、「次」のために時間と人の才能とお金を使うことで、企業はより成長し、より良いビジネスを展開できるようになるというのです。

裏を返せば、自律型データベースを導入しても、「次」を考えるリーダーがいなければ、浮いた人材やコストをうまく使うことができないということも意味します。この議論は、「AIが仕事を奪う」という意見にも重なります。

そのビジネスや仕事内容について、「次」のビジョンがなければ、AIが仕事を奪っておしまい、という未来しか待ち受けていないということになってしまうからです。

競争相手が変わっただけ?

もう少しマシンと人間のタスクについて単純化してみると、的はマシンだけではないことが分かります。

データベースのメンテナンスの話は、人工知能の発達によって、マシンの方がより上手にデータベースをメンテナンスできるようになったととらえられます。同じ仕事をより上手にこなせる存在は、必ずしもマシンだけでなく、他の人である可能性もあるわけです。

たとえば、新しいテクノロジーを学んだ若いエンジニアや、日本以外に住んでいる外国人のエンジニアのほうが、高いパフォーマンスを発揮することになれば、その仕事はマシン以前に他の人に奪われてしまうことになります。

そのため「AIが仕事を奪う」という議論は、競争相手に機械が加わっただけと考えても良いでしょう。最新のシステムと電気を与えてあげれば、AIは24時間続けて働くことができますし、人間以上に数を増やすことが容易で、競合する相手が無限に存在する点で、人間同士の競争とは様子が異なりますが。

他の道を見つける

もちろん自己の成長によって、他の人やマシンとの競合に打ち勝つこともできるかもしれません。ただ、他の活躍の道を見つけることも、1つの方法論になります。このことは、筆者にとっても、1つのテーマとなっています。

筆者は2005年に今の仕事を始めて、すでに12年が過ぎました。アメリカでは「12年」という時間には意味があるようで、ビザを申請する際に、「プロフェッショナル」として認める「キャリア」の目安になります。

ちなみに大学や大学院での学びは、1年で3年分の「キャリア」として計算されます。筆者がメディア報道関係ビザを米国に申請した2012年のタイミングで、「メディア」と学部名についている大学院での2年間の学び+満6年間のキャリアを合計して、12年分のキャリアとなり、「プロのジャーナリスト」としてビザを受けることができました。

そして今年を終えると、大学院の学びを換算しなくても、キャリア満12年になります。確実に「転機」を感じるタイミングになっているわけです。

経験がものをいい、また筆者自身も諸先輩方の記事を楽しみにしているこの業界に入る際に、「人と違うコト」を出発点にせざるを得なかったことを思い出しました。もちろんそのための努力や、先人の知恵が生かせない苦しさも存在しますが、一方でとても気が楽になるのも事実です。

労働力としてのAIとの戦いは、人間の側が、「マシーンと違うコト」を考えることが大切なのかもしれません。

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筆者紹介――松村太郎

1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログTAROSITE.NET
Twitterアカウント@taromatsumura

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