新iPhoneの心臓部「A13 Bionic」はなにがスゴイのか(西田宗千佳)

新iPhoneの心臓部「A13 Bionic」はなにがスゴイのか(西田宗千佳)

  • Engadget
  • 更新日:2019/09/12

今日発表になった新iPhone、どの辺が一番変わったとお思いだろうか?

カメラ? 確かに。

デザイン? それはもちろん。

だが、ある意味「誰にでも価値がある性能向上」をしたのはプロセッサーではないか、と筆者は思っている。

発表会では半導体開発担当バイスプレジデントによる解説も行われたので、「A13 Bionicはどう凄くて、どう役に立つのか」を解説してみよう。

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iPhone 11シリーズに搭載されるプロセッサーは「A13 Bionic」

高速化だけじゃない、「消費電力」と「マシンラーニング」が重要

スマホのSoCが高性能になるということは、それだけ動作が「サクサクになる」ということを示している。まあ、速くなることは誰にとってもマイナスではないので、結構なことだと思う。

アップルは他社比較のグラフも出して、「A13 Bionicが、もっとも高性能なスマホ向けプロセッサーであり、最も高性能なGPUである」とアピールしていた。なにを基準にしたグラフかが明確でないので、他社比較の妥当性はちょっと置いておくとしよう。だとしても、昨年のチップである「A12 Bionic」に比べ、明確にスピードアップしていることだけは間違いがない。

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▲「他社製品よりA13を使ったiPhone 11は高速」との主張。横軸の単位がないので妥当性の判断ができないが、少なくとも昨年のA12より高速なのは間違いない。

一方で、すでに使っているスマホの速度にさほど不満をもっていない、という人も増えているのではないだろうか。特に、去年や今年に入ってからハイエンドスマホを買ったような人は「今は特に問題ない」と思っているのではないだろうか。正直筆者も、「遅くて困る」と思うシーンは少ない。

発表会に登壇した、アップル・半導体開発担当バイスプレジデントのSribalan Santhanam氏は、「今日は特に省電力とマシンラーニング性能を中心に説明したい」と話した。それだけ、この2つの要素がスマホにとって大切になっているからだ。

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▲アップル・半導体開発担当バイスプレジデントのSribalan Santhanam氏

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▲マシンラーニングと省電力の効率化がA13 Bionicの柱

スマホの高速化を体感しづらくなっているのは、単純なCPU速度では性能向上が難しくなっているからだ。一方、グラフィック処理は重くなり続けているのでGPUは重要だし、音声認識・画像認識・自然言語処理にポーズの認識など、マシンラーニング処理のニーズはどんどん上がっている。アプリの動作速度を上げ、より複雑なことをさせるには、マシンラーニングを高速化するための機構を優先するのが重要になってきている。カメラで撮影した画像の処理にもマシンラーニングは使われているので、「カメラの高画質化」にも重要だ。

省電力性能の重要さはいうまでもない。スマホの命はバッテリー動作時間であり、電源が切れればなにもできない。「バッテリーが持つスマホ」は、誰にとっても喜ばしいものであり、時には単純な処理能力に優先する。

処理の効率化で消費電力大幅ダウン

昨年の「A12 Bionic」は、マシンラーニング処理のための専用コアを搭載した、アップルとしては初めてのスマホ用SoCだった。トランジスタ数は69億個で、マシンラーニング用のコアである「ニューラルエンジン」にも搭載していた。

A13 Bionicはトランジスタ数を85億個に増やしている。その分当然処理は速くなった。特にマシンラーニングについては、CPUとGPU、ニューラルエンジンの協調動作が改善され、処理性能が向上しているという。

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▲A13 Bionicは第2世代の7nmプロセスルールで製造しており、85億個のトランジスタを集積して作られている。

より興味深いのは省電力機能だ。

A13 Bionicは、高性能な処理に使う「高性能」CPU(2コア)と、消費電力が低く性能が求められない処理に使う「高効率」CPU(4コア)を組み合わせて動いている。このうち「消費電力重視」のコアでもっと色々なことができるように改良したため、そもそも、iOS全体の処理による消費電力が減っている。

どのプロセッサーでも、常にすべての領域を使って仕事をしているわけではない。使う場所にだけうまく電力を回し、そうでないところは電圧をコントトールして電力消費を抑えるのが常だ。A13 Bionicでもそうしているのだが、「いつどこに電力を回すのか」というスケジューリングを効率化するための機構の働きにより、非常に小さなブロックで電力のコントロールを行えるようになっている。そのため、電力消費の効率があがった。

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▲通常は大きな機能ブロックごとに電圧コントロールをして消費電力を下げるのだが......

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▲A13 Bionicでは、より細かな単位に分割して、電力消費をより効率化する。

結果として、

・高性能処理用CPUが20%高速化しつつ30%消費電力削減

・高効率処理用CPUが20%高速化しつつ40%消費電力削減

・GPUが20%高速化しつつ40%消費電力削減

・ニューラルエンジンが20%高速化しつつ15%消費電力削減

となっている。

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▲性能が上がりつつ消費電力は大幅に下がっている。

要は高速化しつつ消費電力が大幅に下がったのだ。結果としてiPhone 11はXRに比べ1時間長くなった。

Proの場合は省電力化の効果が大きく、iPhone 11 ProはXSに比べ4時間伸びて「18時間」、iPhone 11 Pro MaxはXS Maxより5時間も伸びて「20時間」になった。

消費電力が下がったということは発熱も減っているということで、より快適に使えるようになっていると考えられる。

これらの点は、単純な高速化以上に、多くの人にとって大きな意味を持つ。

アップルがこうしたことを実現できるのは、プロセッサーの設計を自ら行っているからだ。アップルのAシリーズはArm互換のプロセッサーだが、設計を買うのではなくアーキテクチャを買うライセンス形態であり、「互換性があるものを自ら設計する」形になっている。2017年に「iPhone 8世代」で導入した「A11」以降、GPUも自社開発だ。ニューラルエンジンも同様である。そのため、細かな省電力設計にまで手を入れられる。

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▲A13 Bionicには非常に多数のコアが含まれているが、基本的にアップルが設計したもので、改良も自社だけで行える。

それだけ開発コストはかかるのだが、すべてのiPhone・iPadに使うなら元がとれる......という計算である。

さらなる高性能はなにに使われるのか?

こうして向上した性能は、今後なにに使われるのだろうか?

現在は、マシンラーニングが必要な用途に加え、4K・HDRビデオを扱うためにも必要なものになっている。データが巨大なので、CPU性能もそれだけ必要だ。

また、今回「Sneak Peak」として公開されたのが、カメラアプリの新しい機能である「DeepFusion」だ。処理の詳細は明かされていないが、長い露光の画像と短い露光の画像からお互いのピクセル同士の関係をマシンラーニングで解析し、非常にディテール豊かな写真を作り出す。GoogleがPixel 3で導入した機能を思い出させるものだが、これもまた、高速なマシンラーニング処理ができるプロセッサーの恩恵といえるだろう。

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▲アップルがiPhone 11向けに開発中の「DeepFusion」。マシンラーニングで複数枚の撮影画像からディテール豊かな写真を生み出す。

関連記事:
5分でだいたいわかるiPhone 11 / Pro / Pro Maxまとめ。新Apple Watchや10.2インチiPadも

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