なぜガンダムの主題歌にアニメと相性抜群のへヴィメタルが使われなかったのか?【山野車輪】

なぜガンダムの主題歌にアニメと相性抜群のへヴィメタルが使われなかったのか?【山野車輪】

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2017/09/16
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『聖闘士星矢』『ボーグマン』……、日本のハードロック、へヴィメタルバンドが歌っていたアニソンたち(著者撮影)

<文/山野車輪 連載第3回>

◆マクロスの戦闘シーンにはへヴィメタルがよく似合う

前回の記事「ジャパニーズ・メタルバンドが“自身のバンドのテーマ曲”を持っているワケ――「BABYMETAL DEATH」「X」「LOUDNESS」…」で、最後にジャパメタとアニソンの共通点について少し触れたので、今回は、ジャパメタとアニソンの関係性について掘り下げていきたい。

前回述べたように、ヘヴィメタルは、重量感と金属感が重視される音楽ジャンルである。そして200bpm以上のテンポの楽曲も普通に存在し、速度のある楽曲が好まれる。ヘヴィメタルのこのような音楽的特徴と相性の良いアニメのジャンルといえば、ロボットものであることは論を待たない。

『超時空要塞マクロス』では、「板野サーカス」と呼ばれる超スピーディな戦闘シーンを、弾きまくりのギターソロの劇伴音楽が、よりそれを盛り上げており、とてつもなくカッコイイ映像にシビれたものだ。

IRONMAIDENの「Aces High(邦題「撃墜王の孤独」)や、JUDAS PRIESTの「Freewheel Burning」などの名曲は、ロボットアニメの戦闘シーンにドンピシャである。

◆80年代のロボットアニメにはへヴィメタルがなかった

しかし、ロボットアニメとジャパメタがもっとも華やかりし80年代、ロボットもののTVアニメの主題歌にガチのヘヴィメタルのアーティストが使われることはなかった。

現在のヴィジュアル系(V系)のルーツの一つである日本のプログレ・バンドNOVELAが手がけた『ぼくら野球探偵団』(1980年)や、日本のハードロックバンドBOWWOWが手がけた『Xボンバー』(1980年)はアニメではなく特撮だったし、LOUDNESSが起用された『オーディーン 光子帆船スターライト』(1985年)は“宇宙戦艦もの”だし、MAKE-UPが手がけた『聖闘士星矢』(1986年)と、Earthshakerが手がけた『超音戦士ボーグマン』(1988年)は、どちらもロボットアニメではなく、“装着もの”“バトルスーツもの”だった。90年代にSHOW-YAのヴォーカルを務めていたステファニーが唄ったTVアニメも、『うる星やつら』だったし。

◆なぜロボットアニメにへヴィメタルが使われなかったのか?

ではなぜ当時、ロボットアニメの主題歌にガチガチのヘヴィメタルの楽曲が使われなかったのか。その理由を、ロボットアニメとジャパメタ両者の歴史から考えてみたい。

かつてロボットアニメがアニメの花形ジャンルだったのは、国産初のTVアニメ『鉄腕アトム』(1963年)が、制作費捻出のためにマーチャンダイジングの利益を充てたことに起因する。

1972年放送の『マジンガーZ』で、主人公が搭乗するロボット「マジンガーZ」の玩具が大人気を得て以降、ロボットアニメがTVアニメの主流となった。

その後、1979年に『機動戦士ガンダム』が放送され、リアルロボットアニメが台頭したことで、ロボットアニメは転機を迎えた。

ここで、スーパーロボットアニメとリアルロボットアニメの、限られたパイの奪い合いが勃発する。スーパーロボットアニメvsリアルロボットアニメの対立は、児童向けvsティーン向け、または玩具vsプラモデルの争いでもあったと見ることもできよう。

結果、スーパーロボットアニメは淘汰され、リアルロボットアニメ・ムーヴメントが到来した。このムーヴメントは、『ガンダム』の生みの親である富野由悠季ムーヴメントだったと言っても過言ではない。

だが80年代半ば、このムーヴメントは斜陽化し、『機甲戦記ドラグナー』(1987年)を最後に、地上波でのリアルロボットアニメは冬の時代を迎える。

◆『聖闘士星矢』に起用されたへヴィメタル

1985年、ようやく3つのジャパメタ・バンド(聖飢魔II、SHOW-YA、ANTHEM)がメジャー・デビューした。同じ年に『機動戦士Zガンダム』が放送された。同作品は斜陽化していたロボットアニメ離れを食い止めるためのリーサル・ウエポンだった。『ガンダム』の続編投入という最後のカードが切られた。だが、視聴者のロボットアニメ離れを食い止めることはできなかった。だからこそ次作『機動戦士ガンダムZZ』では、子どもの視聴者を獲得すべく、「明るいガンダム」というキーワードのもと、対象年齢を下げたのだと思う。

そして、ロボットアニメに取って変わった“装着もの”“バトルスーツもの”の『聖闘士星矢』(1986年)と『超音戦士ボーグマン』(1988年)で、ようやくヘヴィメタル・バンドが起用されたのだった。

リアルロボットアニメの繁栄は1985年で終わり、それに対して、ジャパメタはこの年、ようやく一般層に届いた。当時、ロボットアニメの主題歌にガチガチのへヴィメタルの楽曲が使われなかった理由とは、つまるところ、「へヴィメタルの一般層への定着が、リアルロボットアニメ・ムーブメントに、間に合わなかった」ということではないだろうか。

◆子ども向けアニメではヘヴィメタルはNGだった

リアルロボットアニメが冬の時代を迎えた後、TV放送されるロボットアニメは、SD(スーパー・デフォルメ)と称される2頭身のロボットものや、「トランスフォーマー」シリーズ、「マシンロボ」、勇者シリーズなどの児童向けスーパーロボットアニメが主流となった。しかし、ティーンを対象とした音楽ジャンルであるヘヴィメタルの楽曲を、児童向けロボットアニメに使用しないだろう。

1983年に放送されたTVアニメ『愛してナイト』で、主人公の彼氏が属するバンド「ビーハイヴ」は、原作マンガではメタル寄りの音楽性のバンドという設定だったにもかかわらず、アニメではロカビリー・バンドに改変されていた。子ども向けアニメでは、まだヘヴィメタルはNGだったのだ。先述の80年代後半に放送された『聖闘士星矢』と『超音戦士ボーグマン』にて起用されたバンドも、へヴィメタル・バンドとされていたけれど、ガチなメタルではなく、歌謡曲テイストのメロディアス・ハードロックだった。

ただし、80年代前半の時期でも、ヘヴィメタルに隣接するアーティストの起用は見られた。TAOが手がけた、まるでプログレッシヴ・ロックのような『銀河漂流バイファム』のオープニング(OP)テーマ「HELLO,VIFAM」や、TAOを前身としたEUROXによる『機甲界ガリアン』のOPテーマ「ガリアン・ワールド -Run For Your Life-」、後にRABBITを結成するAIRMAIL FROM NAGASAKIによる『蒼き流星SPTレイズナー』のOPテーマ「メロスのように」などは、いずれも渋さとメロディが光る名曲である。これらは富野由悠季監督作品以外の日本サンライズ系ロボットアニメだった。

◆“へヴィメタル”を取り入れていた富野由悠季監督

だが富野監督作品は、別の意味でヘヴィメタルに近かった。『重戦機エルガイム』(1984年)の英語表記は『Heavy Metal L-GAIM』なのである。そして、OPテーマ「Time for L-GAIM」もまったくヘヴィメタルではなかったが、「ヘヴィメタル!」という合いの手が入っているのだ。富野監督は、ヘヴィメタルという音楽そのものを反映させることはなかったとしても、ティーンに流行の音楽を的確に作品に反映させていたのである。富野監督の時代を読む能力は鋭かった。

⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1395019

何にせよ、あの頃のリアルロボットアニメの主題歌に、重金属なヘヴィメタルの楽曲がなかったことは残念である。

ところで、『エルガイム』でキャラクターとメカニック双方のデザインを行なった永野護は、1987年にMAMORU NAGANO’S SUPER NOVA名義で、アルバム『スーパーノヴァ』を発表している。これはアニメ雑誌『月刊ニュータイプ』(角川書店)に連載されていた同氏によるマンガ『フール・フォー・ザ・シティ』のイメージ・アルバムで、作詞・作曲・ベース演奏で著者自身が参加。タイトルは1970年代初頭に結成されたロックバンドFoghatの1975年発表の楽曲。同イメージ・アルバムのヴォーカルは、永野の妻で声優の川村万梨阿が務めた。

オタクが好むリアルロボットアニメおよびティーン向けアニメは、80年代半ば頃からOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)へと移行していき、こちらの方で、ジャパメタ・ミュージシャンが起用されていくわけだが、それは改めて述べたい。

【山野車輪(やまの・しゃりん)】
昭和46(1971)年生まれ。平成17(2005)年『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)を出版し日韓関係のゆがみを鋭く指摘。『ニューヨーク・タイムス』、『タイムズ』など海外の新聞メディアでも紹介される。同シリーズは累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても2ちゃんねるや一部メタラーの間で有名。

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