天皇の生前退位 反対論者に共通するのは政治混乱への危惧

天皇の生前退位 反対論者に共通するのは政治混乱への危惧

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2016/12/01
No image

生前退位の反対論者に共通するのは

8月8日の“平成の玉音放送”で国民に生前退位の意向を伝えた天皇は、この議論の成り行きをどんな気持ちで受け止めているのだろうか──。

「憲法にもない生前退位をしたいと示唆されたのはいかがなものか」(平川祐弘・東大名誉教授)

「今回の『お言葉』が一種の先例のようになってしまうと、象徴天皇制を維持していく阻害要因になりかねない」(古川隆久・日本大学教授)

安倍首相が設置した私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長・今井敬経団連名誉会長)が行なっている専門家へのヒアリングで、生前退位に対する反対論が噴出している。

ヒアリングは11月7日から始まり、11月30日まで計3回、16人の専門家に天皇の生前退位について“意見”を聞くというもの。14日の第2回ヒアリングまでに11人が登場した。

そのうち6人は基本的に生前退位に反対で、高齢で天皇の公務に支障が出るのであれば、代わって公務を行なう「摂政」を置くことで対応すべきだという意見が目立った。4人は、今上天皇一代に限って生前退位を認める臨時措置法で対応すべきなど、“条件付き賛成論”と考えられる。

そうした特例法での対応ではなく、皇室典範を改正して、「今後、すべての天皇が譲位できるようにすべき」という、天皇の意に沿った立場を明確に表明したのは現在、皇室記者出身のジャーナリスト・岩井克己氏1人だけである。

確かに現在の法律(皇室典範)では天皇の生前退位(譲位)を認めていない。しかし、天皇のお言葉を受けて新聞各紙が行なった世論調査では、生前退位に賛成・容認が「91%」(朝日)、「84%」(毎日)、「81%」(読売)に達し、国民の圧倒的多数が高齢の天皇の思いを受けとめて法改正を求めている。

そうした世論の高まりで法改正を議論するために設置されたはずの有識者会議で、なぜか国民とは逆の専門家の意見が汲み上げられているのである。

反対論者に共通するのは生前退位を認めた場合、皇位継承をめぐる争いや天皇と前天皇(譲位した天皇)との関係が、政治混乱を招きかねないという危惧だ。

“有識者”らが会議後に会見で明かした内容や官邸が公開した議事録から、論拠を見ていく。

平川東大名誉教授(比較文学)は有識者会議で「世間の同情に乗じ、特例法で対応するならば憲法違反に近い」と述べた上で、こう指摘した。

「元天皇であった方には、その権威と格式が伴います。そのため皇室が二派に割れるとか勢力争いが起きやすくなります。そうなると、配偶者の一族とかその方の実家、その人が属している省庁とか企業とかの政治介入や影響も無視できなくなります」

笠原英彦・慶応大教授(日本政治史)やジャーナリストの櫻井よしこ氏も同じ理由で反対した。

「天皇の地位の安定性を損なう恐れがある。前天皇と現天皇の共存は、天皇の統合力の低下を招き『国民統合の象徴』の形骸化につながる」(笠原氏)

「譲位については賛成致しかねる。(明治政府の)先人たちは、皇室と日本の将来のため、歴史上頻繁に行なわれてきた譲位の制度をやめた。皇室には、何よりも安定が必要だ。歴史を振り返れば、譲位はたびたび政治利用されてきた。現在の日本で考えられなくとも100年、200年後はどうだろうか。国の在り方は長い先までの安定を念頭に置き、万全を期すことが大事だ」(櫻井氏)

大原康男・國學院大學名誉教授(宗教学)は、天皇の自由意思による譲位を認めるならば、皇位に就かないという「不就位」の自由も認めなければならないという意見があることを紹介した。

「高尾亮一さん(戦後の皇室典範改正の起草者だった宮内官僚)によれば、論理的に退位を認めるならば相対的に不就位の自由も認めなければ首尾一貫しないが、当時の皇室典範の審議の中で不就位の自由を主張した者は一人もいない(中略)天皇の制度自体が基本的人権の例外」

譲位を認めるなら、将来「天皇になりたくない」という皇族が出てきたらどうするかの議論もしなければならない、という問題提起だ。

写真■日本雑誌協会代表取材

※週刊ポスト2016年12月9日号

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

社会カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
発覚恐れ救急車を呼ばず 千葉大医学部“集団強姦”
大学ブランド力ランキング北陸・東海編、総合1位は名大に - 私立1位は?
2歳の女児救った複数の奇跡
【報ステ】18歳少年の全裸遺体 多摩川で見つかる
3時間超の謝罪会見で“露呈”したDeNAの「無責任体質」
  • このエントリーをはてなブックマークに追加