中国の「北朝鮮への電撃侵攻」は起こり得るのか?

中国の「北朝鮮への電撃侵攻」は起こり得るのか?

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  • 更新日:2017/10/12
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中国が米国に先駆けて北朝鮮に先制侵攻することはあるのか? 香港で、中国人民解放軍の兵士を閲兵する習近平国家主席(2017年6月30日撮影、資料写真)。(c)AFP/DALE DE LA REY〔AFPBB News

現在、中国と北朝鮮の国境周辺地帯に、中国人民解放軍が集結していると考えられている。もし米国のトランプ政権が北朝鮮に先制攻撃を仕掛けた場合、直ちに北朝鮮領内に進出し、北朝鮮から中国に逃げ込もうとする北朝鮮難民をコントロールし、混乱状態に陥っている北朝鮮の治安を維持するため、とみられる(本コラム2017年9月28日「中国の掌で対決しているアメリカと北朝鮮」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51161)。

このような中国の戦略に加えて、「より積極的に中国人民解放軍が北朝鮮国境を踏み越えるのではないか?」という別のシナリオまでもが、アメリカのシンクタンクの中国・東アジア研究者などの間で取り沙汰されるようになってきた。

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中国が先制侵攻する理由

中国軍による先制侵攻の可能性を指摘する人々は、侵攻は次のような流れになるものと考えている。

「北朝鮮が弾道ミサイルに搭載する核弾頭の製造能力を獲得し、アメリカ西海岸には確実に届くと言われているICBMも手にすることになると、いよいよアメリカによる北朝鮮先制攻撃の可能性が強まる」

「アメリカによる先制攻撃が実施された場合、韓国や日本に対しても北朝鮮は核攻撃を加えるかもしれない──少なくとも何らかの“報復攻撃”を実施することはほぼ確実だ。そして、朝鮮半島は大混乱に陥り、隣国である中国にも大量の難民が流入してくることは避けられない。場合によっては隣接している中国領内も放射能汚染の被害を受けるかもしれない。いずれにせよ朝鮮半島で戦闘が勃発すれば、中国にも大混乱が波及することは必至である」

「そのため中国指導部が、アメリカの先制攻撃に先んじて、満州の中朝国境地帯に集結している中国人民解放軍(以下、中国軍)部隊を北朝鮮に侵攻させる可能性が高まってきた。先制侵攻の場合、中国が国境を越えるタイミングを自ら決定することができ、完全な主導権をもって侵攻作戦を実施できるからだ」

「朝鮮人民軍(以下、北朝鮮軍)は韓国との国境地帯に重点配備されているので、中国国境の防衛体制は手薄である。そのため、中国側が中朝国境から北朝鮮領内に大部隊を送り込むのは容易である。もちろん、中国の海軍力や航空戦力に対して北朝鮮の海軍力や航空戦力はものの数ではないため、中国軍は北朝鮮西海岸からも侵攻することが可能だ」

「それ以上に侵攻作戦成功の決め手となるのは、中国が北朝鮮軍内部に“裏切り者”を醸成する工作を進めていることだ。それらの反体制分子を利用した『トロイの木馬』戦術によって、北朝鮮に侵攻した中国軍部隊は着実に戦略要地を制圧していき、金正恩の核・ミサイル戦力を接収していく」

「このような中国軍による北朝鮮への先制電撃作戦によって、北朝鮮軍によるアメリカ、韓国、そして日本に対する核ミサイル攻撃は阻止される。また、中国軍が主導して金正恩一派を制圧する結果、北朝鮮や朝鮮半島での混乱状態は極小化され、中国は“国際的調停人”としての名声を勝ち取ることになる」

「それ以上に中国にとって重要なのは、中国軍が北朝鮮を占領してしまうことで、朝鮮半島での軍事バランスが圧倒的に中国に有利な状態となることだ。北朝鮮全域の占領は一時的であるものの、その後も中国軍は「核関連施設の管理」等の名目で北朝鮮各地に進駐を続け、米韓側を圧迫することになる」

「北朝鮮への先制攻撃は、最後の手段の1つである。しかし中国にとっては“最悪の度合いが極小の、最も望ましい形の軍事行動”と考えられるのだ」

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中国国境の中国人民解放軍

多くの戦略家は懐疑的

このような考え方に対しては、賛同しかねている米軍関係者やシンクタンク関係者なども多い。賛同しかねる理由としては、下記のような疑問が挙げられている。

「中国軍による先制侵攻が極めてスムーズに達成されるという考えは、北朝鮮軍の中朝国境に対する警戒反撃態勢がとられていないことが大前提になっている。しかし、金正恩一派が中国に対して全く反撃作戦や報復作戦を用意していないと考えることは困難だ(もちろんそのような作戦の存在が示されているわけでも、存在しないことが確認されているわけではないのだが)。おそらくは、中国による電撃侵攻が開始されると、北朝鮮軍による捨て身の反撃に直面し、双方に莫大な死傷者が生ずることは避けられないであろう」

「さらに問題なのは、『トロイの木馬』戦術の成功を想定していることだ。中国の工作によって中国側に協力する勢力を増殖させて北朝鮮軍を内部から崩壊させて中国軍側に寝返らせることなど、北朝鮮そして北朝鮮軍の現状からはとうてい想定することはできない。というよりは、そのような期待を前提とする侵攻作戦は危険極まりない」

「そもそも、金正恩一派だけでなく北朝鮮軍指導部は、中国に核施設をはじめとする戦略資源を管理されてしまい、中国の完全なる軍事的保護国となることは断固として拒否するはずだ。彼らは強固かつ極端な超国家主義者であり、その伝統は金日成以来綿々と受け継がれている。たとえば、朝鮮戦争の際に中国軍が北朝鮮軍を支援して共に戦っているときでさえ、北朝鮮指導部と中国指導部の対立は深かった。その後も、北朝鮮では過度の親中国派や親ソ連派は排除されている。つい最近でも、金正恩の叔父で親中国派の張成沢や、中国に保護されていた金正男が殺害されているではないか」

このほかにも、なぜ中国が軍事力を行使してまで、北朝鮮によるアメリカや韓国それに日本に対する報復攻撃を阻止しなければならないのか? という疑問も生ずる。

「中国が放射能汚染の被害を受けるのを阻止する」と言っているものの、万が一にも韓国や日本が核攻撃された場合、中国よりも日本のほうが数倍の放射能汚染を被ることになる。そして核攻撃がなされなくとも、韓国や日本が北朝鮮の弾道ミサイル攻撃を受けて社会的インフラをはじめ大打撃を受けることは、中国にとってはむしろ望ましい状況である。それを想定すれば、少なくとも中国が軍事力を行使してまで阻止する必要はないのである。

結局、得をするのは中国だけ

中国共産党首脳の戦略も、金正恩政権首脳の戦略も、当然のことながら現時点では明らかにされていない。しかしながら、中国による北朝鮮に対する先制侵攻という想定には無理が多い。

中国軍が中朝国境に集結しているのは、やはり、トランプ政権が北朝鮮を軍事攻撃するや否や北朝鮮に雪崩れ込み、朝鮮半島における中国の優勢的立場を確実にするためである、と考えた方が自然であろう。

いずれにしても、日本やアメリカにとっては極度のマイナス要因だけしか生み出さない北朝鮮情勢から、なんらかの利益を得られるかもしれないのは中国だけといえよう。

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