オフィスの座席を固定しない「完全フリーアドレス」が必ず失敗する理由

オフィスの座席を固定しない「完全フリーアドレス」が必ず失敗する理由

  • @DIME
  • 更新日:2019/05/27
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(画像はイメージ)

働き方改革が進められる中、働く人それぞれに合った働き方の形が求められている。なかでも座席を固定しない「フリーアドレス」は目立った施策だ。しかし、社内で完全フリーアドレス制を敷くと、失敗に陥ることが多いという。

株式会社リンクアンドモチベーションの代表取締役会長 小笹芳央さんに、その理由や成功のポイントを聞いた。

完全フリーアドレスが必ず失敗する理由

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小笹さんは、試験的に自社で完全フリーアドレス制を実施し失敗した経験があるという。

フリーアドレスとは、働く場所(アドレス)を自由(フリー)にする施策であり、つまり「社内のどこのデスクで仕事をしてもいいという働き方改革」である。

小笹さんは著書「モチベーション・ドリブン」の中で、かつて試験的に総務や経理、法務などが所属する管理本部でフリーアドレスをやってみたことがあったそうだが、組織が大混乱し、10日で中止となったと述べている。

上司に相談したくてもどこにいるかがわからない。上司も部下に直接伝えたいことがあってもどこにいるかわからない。メールを送っても四六時中見ているわけではないので、なかなか返信が来ない。しょうがないので社内を歩き回って探すことになる。このように、非常に無駄な時間を費やすことに…。

この失敗の原因として「組織図がなくなったこと」を挙げている。組織図は、組織の「コミュニケーションチャネル図」であることから、それが崩れることで、組織が組織としての体を成さなくなったというのだ。

成功するフリーアドレスは「デザインアドレス」

この失敗の原因を踏まえ、小笹さんは「デザインアドレス」を提案する。

「組織図を無視した完全フリーアドレスが成功している企業は数少ないと思います。成功している企業は、弊社でも取り入れている、“グループ単位の席は決め、その中で自由に座席を選べる『デザインアドレス(グループアドレス)』”がほとんどだと思います。コミュニケーションチャネルである組織図を無視した施策は、失敗する可能性が高いです」

例えば、総務部エリア、人事部エリアを作って、そのエリア内をフリーアドレスにする、というのがデザインアドレスだ。

フリーアドレスを「デザインアドレス」にするメリット

リンクアンドモチベーションでは、次の図のようにデザインアドレスを実施しているという。

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部署の座席範囲を約50名単位だけ固定し、その中で自由に席を選べる制度だ。

このデザインアドレスであれば先のような大混乱は起きない。むしろ、3つのメリットが得られるという。

1.コミュニケーションの活性化

毎日、別の人と話す機会が増える。

2.ペーパレス

固定席を設けないので、紙が減る。

3.レイアウト変更が容易

固定席を設けていないので、荷物も少なくレイアウト変更もしやすい。

中でもレイアウト変更のしやすさは、意外とメリットが大きいようだ。実際、今年4月に人材開発N(図のオレンジ部分)と、人材開発G(図の黄色部分)を入れ替えるレイアウト変更をしたところ、移動自体は半日で終わったという。

働き方改革で大切な「One for All, All for One」の考え方

小笹さんによると、そもそもフリーアドレスは、「for One」のための施策であるという。

働き方改革の目的は「組織の生産性の向上」だが、それを実現するために何よりも大切になるのが「One for All, All for One」という考え方だという。

「One for All, All for One」
=「個人は組織のために、組織は個人のために」

小笹さんによると、これは「個人の欲求に寄り添い過ぎれば、組織としての成果の最大化ができず、逆に、組織の成果に寄り添い過ぎれば、個人が疲弊する」ことを指すという。

つまり、完全フリーアドレスは「for One」であったことから、組織の力を分散してしまった。そのため、返す刀で「組織の力を統合する施策」、つまり「for All」も同時に行わなければならない。

デザインアドレスを実施する施策は「for All」のための施策であったというわけだ。

組織の力を統合する「インナーコミュニケーション」

リンクアンドモチベーションでは、他にどんな「組織の力を統合する施策」、つまり「for All」の施策を行っているのだろうか? 小笹さんは次のように話す。

「インナーコミュニケーションの強化です。弊社では組織の血流であるインナーコミュニケーションに、年間3億円を投資しています。各社内メディアで会社の現状や今後の方針を定期的に発信することで、組織の力を統合しています」

なぜコミュニケーションに3億円も投資するのか? これは組織を協働システムと捉え、問題は「人」ではなく「間」にあるとの考えの表れだという。

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「DNA BOOK」と「History BOOK」

具体的には、創業当初から守り続けてきたDNAや歴史を記した冊子である、思想・哲学を共有するメディア「DNA BOOK」「History BOOK」の配布や、グループ全体の視界共有を目的として実施している三ヶ月に一度の「グループ総会」、社内外の情報共有する社内コミュニケーションメディアである日刊新聞や動画社内報など。

フリーアドレスの失敗は、働き方改革そのものへのスタンスに問題があったということになる。フリーアドレスのような施策は、いかにも従業員が自由になれる良いイメージがあるが、同時に「組織としての成果」のことも考える必要があるようだ。

【取材協力】

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小笹 芳央 (おざさ よしひさ)さん

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長

1961年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートに入社し、人事部で採用活動などに携わる。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て独立。2000年に株式会社リンクアンドモチベーションを設立し社長に就任。13年から現職。モチベーションエンジニアリングという同社の基幹技術を確立し、幅広い業界からその実効性が支持されている。

著書に、『会社の品格』(幻冬舎新書)、『松下幸之助に学ぶ モチベーション・マネジメントの真髄―ダイバーシティ時代の部下の束ね方―』など多数。新書籍に『モチベーション・ドリブン』がある。

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取材・文/石原亜香利

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