「君は、僕のペットだよ」24時間、監視しようとする夫。そこから抜け出した妻の、一夜の逃走劇

「君は、僕のペットだよ」24時間、監視しようとする夫。そこから抜け出した妻の、一夜の逃走劇

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  • 更新日:2019/02/20

可憐な妻と優しい旦那。

わたしたちは、誰もが羨む理想の夫婦だったはずなのに。

若くして結婚し、夫の寵愛を一身に受ける真美・27歳。

鉄壁で守られた平穏で幸せな生活が、あることをきっかけに静かに狂っていく。

そしてやがて、気付くのだ。この男が、モラハラ夫だということに。

優しく穏やかなはずの夫・陽介が、ある夜から少しずつ変わっていく。

金銭的援助を盾に、ますますエスカレートする陽介のモラハラ。そんな中、父親の治療費について心配はいらないと聞き、安心した真美は、とうとう夫と戦うための準備を始めることにして…

No image

「…本当に君は、理解が遅いよね。僕がわざわざ一緒に行ってあげるっているのに、何様のつもり?とにかく、明日の外出は不要だからね。」

ーうん、ちゃんと録れてる。

ピッ。

不機嫌な様子で出社していく陽介を見送ったあと、真美はこっそり録音していた昨日のやり取りを確認した。

ピルが陽介に見つかった後、なんとか救い出した薬も残りわずか。生理不順だと嘘をついて、再度婦人科に行きたいと陽介に申し出た。しかし夫は、土曜日に一緒に行くからと、週末まで待つように命じてきたのだ。

その時のやりとりを、ルームウエアのポケットに忍ばせたICレコーダーで、こっそり録音していた。

夫と離れるという選択肢が頭に浮かんでからというもの、真美はモラハラ発言を受けるたびに、その暴言を密かに録音している。もし将来的に離婚する事になった時に、証拠として提出するために。

ー出て行こうと思えば、いつでも逃げられるんだから…。

何か決定的なことがあったらすぐに出ていけるよう、その時に向けての準備を、着実に進めることに決めた。

「ただいま。」

朝出て行った時よりも若干機嫌が回復したように見える陽介は、いつかと同じような大きい紙袋を2つ抱えている。

「おかえりなさい。陽介さん、それ…何?」

コートを脱ぐや否や、紙袋をゴソゴソと探り始めた陽介は、テレビ台の横に筒状の機械をおくと、ブツブツと呟きながら、スマホをいじっている。

「ねえ、それ、なんなの…」

テレビ台から、反対側のキャビネットの前に移動した陽介は、同じ作業を繰り返しているようだ。紙袋から取り出されたダンボールには、ピンク色の丸文字で「ペットのお留守番に!」と書かれている。

咄嗟に、嫌な予感がした。

「…できた。これで、やっと安心できるよ。」

陽介が手元のスマホで何やら操作すると、機械に青いライトが点灯する。

ニコッと笑う夫がこちらに向けたスマホの画面には、立ち尽くす真美の姿が、鮮明に映し出されていた。

ペット用カメラを設置した陽介に、真美はどうする?!

「ずっと考えてたんだ。マミちゃんが昼間に何をしているのかを把握できたら、安心できるだろうなって。マミちゃん、最近嘘つくじゃない。…男と会ったことを黙ってたりね。」

「ほらこれ、すごいんだよ」と、陽介がスマホを再度操作する。すると、ペット用カメラのライトの色が変わり、スピーカーから陽介が話している声が部屋中に響き渡った。

「それにね、ほら。マミちゃんが動くと、僕のスマホに連絡がくるようになってるの。ほら、"ペットが起きました"だってさ。フフフ!」

陽介は嬉しそうに、スマホを片手にリビングを動き回っている。ピコン、ピコンとポップアップが表示される音がするたび、嬉しそうに画面をこちらに向けてくる。

「へぇ〜!小さい声を出すと、"ペットが寂しそうにしています"だって。おやつを遠隔操作で与えられる機能もついてるみたいなんだけど、流石にこれは使い道ないかな?そうだ!マミちゃんの好きなチョコレート・ボンボン入れてあげようか!フフフッ!」

真美は、無邪気な子供のように振る舞う夫を呆然と眺めていたが、夫の手が腕に触れた瞬間、思わずその手を振り払い、大声で叫んでいた。

「やめて!」

No image

「ねえ、もうやめてよ!陽介さん、おかしいよ、狂ってる!私は…ペットなんかじゃない!」

ピコン

真美の叫び声に反応したのか、陽介のスマホにはまた通知が届いたようだ。画面には、"ペットが吠えています"と表示されている。

「…僕がいないと、何もできない。僕無しでは、生きていけない。君が生きていられるすべてを準備しているのは誰?僕でしょう?それってペットと何が違うの?おかしいのは、僕ではなく君でしょう?一体何様のつもり?」

静かに、しかし早口で喋り続ける陽介の目は、みるみるうちに充血していく。にじり寄ってくる夫から感じる狂気から逃れるため、真美は玄関へと走った。

「待て!待てっ!」
「離してっ!」

腕を掴む夫の手を思いっきり振り払うと、鋭い痛みが左手いっぱいに広がる。爪を立てられたのと、振り払った際にぶつけた衝撃で、赤くなり血がにじんでいた。

「あっ…。」

妻を怪我させた事に気付いたのか、夫がひるんだ一瞬の隙に、真美は靴箱からムートンブーツを掴み取り、裸足のまま廊下へ飛び出したのだった。

ーとにかく、今は逃げなくちゃ。

運良くすぐに捕まえられたタクシーに乗り込むと、真美は後部座席から後ろを覗き込む。夫はまだ下には降りてきていないようで、一安心した。

「お客さん、大丈夫ですか?…行き先は?」

薄着で慌てて飛び乗ってきた女に驚いた様子の運転手に行き先を告げると、真美はブーツ内に隠していたポーチをぐっと握りしめ、深呼吸したのだった。

真美がとっさに避難した先に待ち受けるのは?

「真美!は、早く入って!」

真美が、留衣のマンションにたどり着いたのは、午後8時を回った頃だった。

エントランスからインターホンを押すと、突然の来訪に驚きつつも、何かを察したかのようにすぐに留衣は部屋に招き入れてくれたのだ。

「急に来て、ごめん。あの、連絡もできなくて、…ほんとごめん。」
「もう!いいから!とりあえず上がって!はやく!」

真美が部屋に入った途端にドアにチェーンをかけた留衣は、覗き穴から外を見ている。陽介が追ってこないか確認しているのだろう。

「…大丈夫だった?何があったの?」
「うん、いろいろあった。それで、出て来ちゃった」

真美は、ポーチの中からICレコーダーを取り出すと、再生ボタンを押した。数々のモラハラ発言の総集編が流れ出すと、留衣の表情には怒りが色濃くなっていく。

「今日、さらにいろいろあって逃げて来たの。ごめん、留衣。今日だけ、泊めてくれないかな。もちろんお礼はするから」

「お金なんていらないし、それに好きなだけ泊まってよ。颯太にも連絡して、用心棒させるからさ!」

ポーチから現金を取り出そうとした真美を、留衣は首をふって制する。真美は、友人の有難すぎる提案に、今は素直に甘えさせてもらうことにした。

「留衣、本当にありがとう。ちゃんと決着がついたら、精一杯お礼するからね。じゃあせめて、家事一式はやらせて!キッチン使っていい?」

留衣が頷くのを見て、ポットにお湯を足そうとキッチンへ向かい、袖をまくる。

「あんたその腕…!ちょっと待って。」

変色した腕が痛々しく覗いているのを見た留衣は、心配そうに顔を歪めた。そして、証拠になるかもしれないからと、スマホで腕を何枚か撮影してくれたのだった。

No image

「もうできるよ!」
「こっちもOK!颯太がビール買って来てくれた。」

翌日の夜、留衣の家には颯太も来ていた。真美の今後について相談しようと、留衣が呼んでくれたのだ。

今朝早く出かけた留衣は、昼間に一度マンションに戻って来た。両手いっぱいのスーパーの袋からは、ネギや大根が飛び出している。

「今日の夜、颯太がくるから、鍋パの準備お願い!その後作戦会議だから。このマンションはあいつに知られてないだろうけど、遭遇しちゃったら大変だから、一人では外には出ないでね。あ、後片付けやって欲しいから、今日もできたら泊まってよ!」

もう一件アポがあるから、と颯爽と家を出ていく留衣の気遣いに、真美は再び感謝する。

その後、日中は借りたPCで今後の対応について色々調べて過ごし、夕方になると、久々に解放された思いでキッチンに立った。

そして、留衣の帰宅と颯太の合流を待ちわびながら、鍋の準備に勤しんだのだった。

「なあ、旦那の会社ってどこにあるんだっけ?」
「ん?丸の内だけど、なんで?」

山盛りの大根おろしを入れた皿を颯太に手渡しながら、真美はふと陽介のことを考えた。夫は、こんな日もきちんと会社に行ったのだろうか。

外面が完璧な夫のことだから、真美が家を出たことは両親にも誰にも言っていないだろう。きっと数日したら「いつものマミちゃん」が帰ってきて、自分に泣きつくに違いないと信じているはずだ。

ーもう、陽介さんの思い通りにはならない。自分の幸せのために、やれることをやらなくちゃ。

「前よく似た人を会社の近くで見かけた気がしてさ。丸の内からは遠いし、気のせいかな。とりあえず食べよ!」

ーピンポーン

「もう、せっかくいいとこなのに!」

宅急便かな、と応答ボタンを押そうとした留衣は、画面を見た途端、ハッと口元を抑え、振り返った。

真美が座っているところからも見える小さな画面には、陽介の姿がはっきりと写っていた。

▶NEXT:2月21日 木曜更新予定
追ってくる陽介に下した、真美の決断とは。

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