中小企業によくある不条理な出世競争の実態

中小企業によくある不条理な出世競争の実態

  • @DIME
  • 更新日:2017/11/13

■連載/あるあるビジネス処方箋

ほとんどの職場で社員間で昇格をめぐる競争はある。俗に言うところの「出世競争」だ。通常、大企業の競争ならば、大卒(新卒)で22~23歳で入社した社員が50人いる場合、誰が40~50代で役員や社長になるかはまずわからない。

私がこの27年で取材をしてきた中小企業700~800社ほどの7割ほどの社長、役員、管理職、元社員たちから聞くと、社員間の昇格をめぐる競争は、「筋書きのある競争」になっていた。あらかじめ、誰が勝つのか、負けるのか、という点では結論のある競争なのだ。社長の心の中には、人事についてあらかじめの構想がある。たとえば、次のようなものだ。

「いずれは、社員Aを自分の後継者として社長にする。数年以内に解任し、その次の社長を社員Bにやらせてみよう」。

今回は、この筋書きのある競争について考えたい。

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■あらかじめ、結論が出ている

昇格が決める要素が仕事の実績や成果によるものならば、何ら問題はないのだろう。しかし、実際は、社長のその時々のフィーリングで構想が決まっている可能性がある。特に30代前半くらいまでに何らかの活躍などで、社長の「お気に入り」になると、その社員は構想の対象になる。構想とはいえないほどのおぼろげな場合もあるが、多くの中小企業では、あらかじめ昇格の競争に結論があることは間違いがない。

実は競争をする前に、ある程度の結論が出ている。つまりは、筋書きがあり、それを書くのは社長だ。それを覆い隠すため、中小企業の社長、役員たちは「うちの会社は実力主義」と盛んに誇張している、と私は見ている。

■「筋書きのある競争」

「筋書きのある競争」は、特に社長が創業者の場合、一段と鮮明になる。たとえば、創業者の社長には、「自分の息子や娘を後継者にしよう」という考えが心の奥深くにある。だからこそ、息子にとって脅威になるような社員を高く評価することはしない。一時的に認めたとしても、その社員を役員にして強い権限を与えることはしない。

抜群に優秀であろうとも、高い実績を残していようとも、認められることはない。社長は様々な理由をつけて、子息よりも下に位置づける。そうしないと、会社が成り立たない。創業者であり、大株主である以上、他人に次々と経営に関する権限を与えることはできない。優秀であろうとも決して、息子や娘よりも上に上がっていくことはないのだ。会社は創業者であり、オーナーの社長のものだ。少なくとも、中小企業の創業社長はこう信じ込んでいる。

■「実力主義」と繰り返し語る、本当の理由

2か月前、都内の医療介護支援会社(社員数60人)の50代後半の社長を取材した。

私はこの社長と10年ほど前に知り合い、現在までに5~6回は取材をしてきた。当時、社長は40代後半。「次の社長は白紙」と、私には名言していた。しかし、その後、社長は金融機関に勤務していた息子を入社させ、20代後半で課長に、30代前半で部長に、30代半ばに専務にした。

そして、息子のライバルになりうる30~40代の社員数人を辞めさせた。揚げ句に、さほど優秀とは思えない30代の社員を「息子のブレーン」と称し、30代半ばで部長にしている。この社員は息子と親しいようだ。こういう裏側の話を聞くほどに理解しがたい思いになる。しかし、これが現実なのだ。中には例外もあるだろうが、「筋書きのある競争」は多くの中小企業に浸透していることは否定しがたい。

あらかじめの結論があるがゆえに、社長は子息にとってライバルになりうるような社員のアラを探す。たとえば、の社長は「(あの社員は)いろいろとプロジェクトに参加するのが、いずれも中途半端」などと、ある社員を批判する。ところが、自分の息子の言動には何ら、おとがめなし。私が職場でみると、問題行為が多いのは息子のほうである。しかし、なぜか、30代半ばで部長になり、部下は5~6人いる。ところが、社長はこういう裏側を決して公にはしない。それを隠すかのように、「実力主義」と繰り返し語る。

最後に・・・。

読者諸氏が中小企業を就職の選択肢にする場合、昇格をめぐる競争にはあらかじめ結論があることを知っておくべきだ。がんばるほどに空しい結果になることがあるかもしれない。私がこの27年で見てきた中小企業の約2割は倒産や廃業している。吸収合併されたケースもある。社員たちは、大量に辞めている。こういう職場で、本当に「実力主義」なるものが存在するのか。そのことも頭に入れておくべきだろう。

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

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