野球と勉強の“二刀流”は不可能? プロで苦しむ「高学歴選手」

野球と勉強の“二刀流”は不可能? プロで苦しむ「高学歴選手」

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  • 更新日:2017/12/07
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日本ハムドラフト7位の東大・宮台 (c)朝日新聞社

清宮幸太郎(日本ハム1位)をはじめ多くの高校生野手に注目の集まった今年のドラフト会議。そんな彼らと同じくらい高い注目を集めたのが宮台康平(日本ハム7位)だ。東京大に現役で合格しながら最速150キロをマークする本格派サウスポーで、3年時には大学日本代表にも選出されている。その後故障に苦しんだこととスタミナ面の不安もあって指名順位は低かったものの、名前が読み上げられた際には会場から拍手が起きるなどその知名度は抜群だ。

その一方で京都大から史上初のプロ野球選手としてドラフト2位で入団した田中英祐(ロッテ)はフォームを崩したこともあり、わずか3年でユニフォームを脱ぐことになった(※かつて横浜、DeNAに在籍した福田岳洋は京都大の大学院中退で出身大学は高知大)。そこで今回は過去にプロ入りした『高学歴』の選手について振り返りたいと思う。

まず東京大出身の選手は宮台以前に5人がプロ入りしているが、最も好成績を残したのはプロ入り第一号である新治伸治(大洋・投手)である。東京大ではドラフト制度以前の入団で、中継ぎとして4年間プレーし9勝という成績を残した。ちなみに新治は大洋ホエールズの親会社である大洋漁業(現マルハニチロ)の社員から出向という形でプレーしており、現役引退後も親会社で勤務している。ドラフト制度後初めてプロ入りした選手は井手峻(中日・投手)であり、66年の第二次ドラフト3位で指名され中日に入団した。1年目には1勝をマークするが4年目には野手に転向。通算安打数は12安打だが、359試合に出場し東京大出身選手唯一となるホームランも放っている(通算1本塁打)。引退後はコーチ、二軍監督などを経て球団代表も務め一昨年中日を退団。今年6月には母校である都立新宿高校のコーチに就任することが発表され、生粋の野球人としての人生を送っている。

井手の後には小林至(ロッテ・投手)、遠藤良平(日本ハム・投手)、松家卓弘(横浜→日本ハム・投手)の三人の投手がプロ入りを果たした。いずれも0勝に終わり戦力と呼べる活躍はできなかったものの、小林はスポーツ経営学教授、遠藤は日本ハム球団GM補佐、松家は高校の指導者といずれも野球とのかかわりは続いているのは共通点だ。

最も多くのプロ野球選手を輩出している国立大学は筑波大だ。今年のドラフトでも寺田光輝(DeNA6位・BCリーグ石川・投手)が指名されており、現在の名称になってからこれまでに7人がプロ入りを果たしている。投手で最も実績を残しているのは渡辺正和(ダイエー)だ。在学時にはエースとして明治神宮大会優勝に大きく貢献し、東京ガスを経てドラフト5位でダイエーに入団。2000年からは4年連続で40試合以上に登板し、中継ぎとしてチームの優勝、日本一を支えた。引退後は教員免許を取得し、一昨年からは福岡大の監督に就任している。

野手では現役でプレーしている藤井淳志(中日)が筆頭格だ。規定打席に到達したシーズンこそないものの、高い守備力とパンチ力のある打撃を武器に外野のバックアップ要員として通算936試合に出場し568安打を放っている。36歳となった今シーズンも自身最多となる128試合に出場しており、まだまだ貴重な戦力と言えるだろう。プロでは通算12勝に終わったものの、杉本友(オリックス→横浜→ヤクルト・投手)は国立大学出身で史上初のドラフト1位指名選手として大きな話題となった。筑波大の野球部は体育専門学群に所属している選手が多いが杉本は工学系の学群所属だったという点でも異色だ。引退後は教員となり、現在は大阪府内の高校で野球部の監督も務めている。

高学歴のプロ野球選手で忘れてはならないのが現在日本ハムの監督を務めている栗山英樹(ヤクルト・外野手)だ。創価高から東京学芸大に進み、大学では投手、野手で大活躍しながら教員免許も取得したという経歴を持つ。入団テストを受けてドラフト外でのプロ入りではあったものの、持ち味のスピードを生かして3年目にはレギュラーに定着し、6年目の1989年にはゴールデングラブ賞に輝いている。監督としても6年間でリーグ優勝2回、日本一1回という成績は見事だ。

同じ東京学芸大出身の選手では加藤武治(横浜→日本ハム・投手)も成功選手と言える。三菱ふそう川崎を経て2003年にプロ入りしたが、ルーキーイヤーから5年連続40試合以上に登板し、チームに欠かせない存在となった。その後は怪我に苦しみ9年の現役生活に終わったものの、通算30勝、9セーブ、48ホールドの成績を残している。引退後、一度はプロの世界を離れて国士館大でコーチを務めていたが、来シーズンからは古巣日本ハムの二軍投手コーチ就任が先日発表された。

こうして振り返ってみると、国立大学出身の高学歴選手で一流の成績を残した選手はほとんど見当たらない。改めてプロ野球で成功することがいかに難しいかがよく分かる。しかし引退後の経歴まで見てみると、意外なほど野球の世界に残っているケースが多いこともまた事実である。受験勉強と野球の練習を両立しながら高いレベルの野球に挑戦した経験は極めて貴重であり、それが野球界にとっても大きな財産であることを証明していると言えるだろう。そういう意味でも今後宮台に続くような高偏差値のプロ野球選手が出現してくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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