「NHKは暴力団と一緒」日本郵政鈴木副社長が「超強気」なカラクリ

「NHKは暴力団と一緒」日本郵政鈴木副社長が「超強気」なカラクリ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/10/10
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天下りと圧力

かんぽ生命保険の不正販売問題を告発したNHK「クローズアップ現代+/郵便局が保険を 押し売り ~郵便局員たちの告白」(昨年4月24日放送)の取材手法などについて、不満を抱いた元総務省事務次官で日本郵政に天下りしている鈴木康雄副社長(69)らが、同局に事実上の圧力を加えていた。説明するまでもなく、総務省は放送局の所管官庁である。

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NHK HPより

ここまで鮮明に放送行政の問題点が浮き彫りになった事例は過去にない。一刻も早く、内閣の下に置かれている総務省から、放送行政を切り離すべきだろう。海外ではそれが当たり前になりつつある。そもそも、報道機関として権力を監視する役割も持つ放送局を、政権がコントロールできる総務省が所管すること自体、おかしな話なのだ。

NHKと鈴木氏の問題を簡単に振り返る。「クロ現」は昨年7月、続編制作に向け、情報提供を募る動画をネット上にアップした。だが、日本郵政の抗議を受けて削除する。その前に鈴木氏は、同局記者から「取材を受けてくれれば動画を消す」と、説明されたという(NHKは否定)。

この取材手法について鈴木氏は今月3日、「まるで暴力団と一緒。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならやめたるわ、俺の言うことを聞けって、バカじゃねぇの」と、新聞記者たちに言い放った。顧客に不利益を与えた疑いのある、かんぽ生命の契約件数は計約18万3000件にも達している。「クロ現」の告発は事実だった。にもかかわらず、鈴木氏はあくまで強気だ。それは自身が放送局を監督する総務省の事務方トップだったことと無縁とは思いがたい。

「視聴者の代表」その実態は…

鈴木氏は1973年に東北大から旧郵政省に入省したあと、放送行政局放送政策課長、総務省情報通信政策局長などを歴任。放送局を直接指導する立場にあった。総務事務次官を退官したのは2010年。このため、放送局の首脳陣なら誰もがその名を知る。今も放送局に対し隠然とした力を持つだろう。なにしろ背後には現役の総務官僚たちが控えているのだから。過去には旧郵政官僚がNHK会長に天下ったこともある(11代会長・小野吉郎氏、在任期間は1973~1976年)。

だが、NHKが忠誠を誓うべきなのは総務省ではなく、言うまでもなく視聴者だ。その視聴者の代表は12人の経営委員で、国会の同意を得て首相が任命する。同局の最高意思決定機関であり、会長の任免権を持ち、事業計画案の議決なども行う。ただし、個別の番組に介入することは許されない。

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photo by iStock

もっとも、委員は視聴者代表のはずなのだが、「国会の同意を得て首相が任命する」ため、やはり総務省と同じく、政権がコントロールできてしまう。ちなみに委員の一人、中島尚正氏(78)は愛知県の海陽学園海陽中等教育学校長だ。同校の理事長は、安倍晋三首相(65)と財界人の勉強会である「四季の会」のメンバー、葛西敬之・JR東海名誉会長(78)なのだ。経営委員長の石原進・JR九州相談役(74)は葛西氏の旧国鉄時代の後輩で、ともにJR各社の発足に向けて汗を流した仲だ。

その経営委員会は昨年10月、NHKの上田良一会長(70)=元三菱商事副社長=に厳重注意を与えた。日本郵政が上田氏の局内ガバナンス(統治)について「全く利いていないと」と経営委員会に指摘したためである。この行為が経営委員会の権限を逸脱していた疑いもある。

結局、この一連の問題は、政権に近い人物たちの内輪揉めという見方も出来る。元総務省事務次官の鈴木氏が、かつて所管していたNHKに抗議し、その抗議を受けた同局の経営委員会も会長も、政権によって決められるのだから。これでは同局が政権や行政から独立した組織とはとても言い難い。やはり総務省が所管する民放も同様だ。

このような問題を二度と起こさないために、また、ときの政権や行政に放送局が屈しないようにするために、完全に独立した放送局の規制機関を新たにつくるべきだ。突飛な話ではない。独立放送規制機関を持つ国は世界の主流になりつつある。独立放送規制機関が生まれれば、放送局の出資によって運営されているBPO(放送倫理・番組向上機構)の役割も独立放送規制機関に移る。放送局からも完全に独立した組織が番組のチェックを担うことになる。

独立した規制機関が世界の主流

では、各国の独立放送規制機関の概要を見てみよう。

■アメリカ=FCC(米連邦通信委員会)

最高意思の決定に向けて議決を行う委員は5人。ほかに約2000人の職員がいる。5人の委員は、大統領が上院の助言と承認を受けて任命するが、同一政党系の委員は3人までと決められているため、与党系一色に染まることはない。

アメリカにはフェアネス・ドクトリン(公平原則)が存在しないため、FCCも政治的公平は求めない。日本の場合、放送法4条が政治的公平を定めていることから、「公平かどうか」といった極めて難しい判断も総務省が行えてしまうという問題点がある。

FCCは暴力や性的な表現は厳しく規制している。2004年にCBSが生放送した「スーパーボール」のハーフタイムショーで、歌手のジャネット・ジャクソン(53)の胸を露わにした件では、CBSに対し55万ドル(約5885万円)の罰金支払いを命じた。

日本も設立寸前までいったが…

■イギリス=Ofcom(放送通信庁)

最高意思決定機関はメンバー9人の合議制役員会で、非執行役員の会長、副会長ら6人と事務局長ら3人の執行役員で構成されている。非執行役員の6人は担当大臣2人(文化メディアスポーツ担当相、ビジネス・イノベーション担当相)が任命するが、公募制が採用されている上、選考過程も透明化されている。また、独立した組織であるため、職務等の報告も担当大臣2人にするのではなく、国会に行う。

放送倫理については厳しい。2008年にはBBCのFMラジオ「ラジオ2 」が、コメディアンが司会の番組でプライバシー侵害などを行ったとして、合計15万ポンド( 約1950万円)の罰金を科した。

■フランス=CSA(視聴覚高等評議会)

最高意思決定機関である評議会のメンバーは9人。大統領,上院議長,下院議長がそれぞれ3人を任命する。その仲から委員長を大統領が指名する。ただし、独立性が担保されており、CSAの決定を政府が覆すことは出来ない。

ほかにもドイツや韓国などに独立放送規制機関がある。実は日本でも設立寸前までこぎつけたことがあった。民主党政権下(2009~2012年)でのことだ。2009年の衆院選で勝利し、政権を得た民主党は、選挙公約だった独立放送規制機関の設立に向けて動き出す。当時の総務相は原口一博氏(60)。新組織を「言論の自由の砦にしたい」と、張り切っていた。だが、2010年に話は立ち消えになってしまう。

その理由の1つは、放送界の反対だった。独立放送規制機関が生まれることにより、放送への規制が強まることを恐れた。放送界は2003年、自分たちの手でBPOを発足させていた。総務省が放送局を所管するという形は世界的トレンドに合っていない。放送局の出資で運営されているBPOが番組をチェックするという仕組みも世界に類を見ない。

視聴者の「知る権利」を守るため、日本にも独立放送規制機関の誕生が待たれる。

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