西田厚聰元会長・東芝のドンの告白「戦犯と呼ばれて」

西田厚聰元会長・東芝のドンの告白「戦犯と呼ばれて」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/12/09
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かつてはカリスマ経営者。いまは会社を経営危機に陥れた戦犯。表に裏に東芝を知り尽くしたこの男が本誌に語った、会計事件について、原発問題について、半導体売却について、東芝について……。

みんな、いい加減だ

「客観的に見ると、訴訟問題が終わっていない以上、僕は悪者として(皆さんの記憶に)残っちゃっているんです。それが何を言ったってね。犬の遠吠えに過ぎないんです」

東芝で社長、会長を歴任した西田厚聰氏を自宅にたずねると、インターフォン越しに語り出した――。

東芝で不正会計問題が発覚した2015年以降、戦犯と名指しされた西田氏は表舞台から姿を消した。東芝でドンと呼ばれ、一時は経団連会長候補と目されたこの男は、あれから何を想い、どんなことを考えているのか。

その胸の内を聞くために本誌はここ数年西田氏の自宅をたずねてきたが、その度に「話すことはない」と門前払いが続いた。

不正会計問題を調査した東芝の第三者委員会の報告書は、西田氏が東芝に根付く「チャレンジ」と称する損益改善活動を、現場に対して過剰に求めていたと断定。

東芝はそうした不正会計処理で会社に損害を与えたとして西田氏ら旧経営陣に賠償を求めて提訴したが、西田氏は会社側と争うことを選んだ。

東芝ではその後も米原発子会社ウェスチングハウス(WH)をめぐる巨額損失問題が勃発し、今秋には稼ぎ頭の半導体子会社の売却に追い込まれた。その原発と半導体は西田氏が東芝社長時代に2本柱として育てた事業だけに、忸怩たる気持ちもあるのではないか。

心境の一端でも聞ければとこの10月末に再び自宅をたずねると、西田氏は冒頭のように語り出し、少しずつ現在の心境を明かしていった。

不正会計問題の戦犯とされていることについて、西田氏が'06年に約6400億円でWHを巨額買収したことが批判されていることについて、東芝が稼ぎ頭の半導体事業を売ることについて、みずからがトップとして行ってきた経営について……。

西田氏はまず、不正会計問題の戦犯とされていることについての率直な想いを吐露した。

(以下、西田氏の話)

いやもうね、いま訴訟をやっている間は、僕が何を言ったって悪者扱いですから。この決着がつかないと信用されないんですよ、本当に残念ですがね。みなさんがどう書こうが、読む側は悪者のイメージで読むわけですよ。

僕はあなた方(メディア)にも責任があったと思います。第三者委員会のレポート(報告書)が出た後の報道というのは、あのレポートが正しいという前提。それを金科玉条のようにして、絶対に正しいとして、どんどん報道していったからね。

当事者には取材しないのに、第三者委員会の人のところにはずいぶんとインタビューに行ったジャーナリストもいるみたいですよ。みなさん、いい加減なことをするよね。

馬鹿げたことを言う人がいる

あのレポートはひどく間違っているんです。強引なシナリオに引きずり込んだ話でしてね。僕が「チャレンジ」をしたといったって、「ずいぶんマイルドだった」と会社の弁護士さんも言っていましたよ。「社員に聞いたら、そうだった」と。

「西田さんとチャレンジすると、一緒になってそのチャレンジをどうやって達成するかということを考えてくれたという風に言う人もいました」とも言っていましたけどね。事実、僕もそのつもりでやってきたんです。

(第三者委員会は2ヵ月で報告書を出したが)たった2ヵ月でできるわけがないでしょう。私が知っている(東京地検)特捜部にいた弁護士からも、「あれはひどかったみたいですね」という話を聞いていますから。

そういう風に作られたレポートを皆さんがまったく正しいとしている。会社もそれを正しいと言っているわけです。

あのような調査委員会は罰則規定がないので、勝手なことを書けてしまう。それによって罰を受けることはないんです。そして一度レポートが出されると、我々が何を言おうが言った通りには理解されない。

最近会社側から出された内部管理体制に関する報告書にしても、前提が第三者委員会のレポートが正しいということで書いている。そうである限り、僕は悪者になってしまう。だから何を言ってもねえ。

<西田氏をめぐっては、社長時代の'06年にWHを6000億円以上の「高値」で買収したことが東芝の経営を圧迫し、不正会計の温床になったとの批判もある。

'11年の東京電力福島原子力発電所事故を受けて以来、東芝の原発事業は暗礁に乗り上げ、西田氏が描いた成長シナリオからも外れていった。西田氏はそんな原発事業についての想いも語った。>

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Photo by GettyImages

まずは'06年当時の状況をよく見てほしいです。高額だったと言う人がいますが、それをやったのは我々ではなくて……。

あの時は2回目のビッド(入札)で東芝が(WHを)購入できたにもかかわらず、そこで「思い切った価格を出したい」と言ってきて、第3回目、第4回目のビッドにまで我々を引きずり込んだ、日本の他の会社(編集部注:三菱重工業)があるんですよ。

そのために値段が吊り上げられて、結局、(当初購入できる予定だった価格の)倍になってしまった。そんな国際商慣習に反するような会社が日本に存在していたということが、もう大変な間違いなのではないでしょうか。

東芝では当初から、WHをアメリカの会社が買ったとき、日本の会社が買ったとき、東芝の原発事業にどういう影響が出るのかというシミュレーションは作らせていました。

そのうえで、東芝がWHを購入して原発事業を推し進めていかないと生きる道がないと決めたんです。それを原発事故が起こってから、「買ったのが間違っていた」などと馬鹿げたことを言う人がいる。どうしてそういう発想をするのかね。

事故後については、マネジメントの問題ですよ。あのような大事故があった後というのは、世界の原発事業はこれからどうなっていくか、日本の国民はもちろん各国の国民も福島原発の事故をどういうふうに見るのだろうということも含めて、将来の展望をしっかり描かなくてはいけない。

そうした議論をベースにしてもう一度、原発事業の構造改革をしなければいけなかったんです。だけどそれは言うは易く、なかなかやることは難しい。これから25年後に原発はどうなっているのかということを正確に言える人は誰もいなかったんだと思います。

法令順守を言い続けたのに

<西田氏は社長在任時のみずからの経営についても振り返った。西田氏と言えば、社長就任後に発表した中期経営計画で「3年で3兆円」の投資をぶち上げて、攻めの経営に邁進したことで知られる。

実際、就任3年で売上高を1兆5000億円以上、最終利益も800億円ほど増やしたが、そうした積極経営が不正会計を生む遠因になったとも指摘される。

リーマン・ショックに直撃されて'09年に後任の佐々木則夫氏にバトンタッチするまでの4年間、西田氏はなにをめざして会社の舵取りをしたのか。>

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Photo by GettyImages 佐々木則夫

僕がやったのは、成長を続けていくということです。成長といっても、利益も出ないようなシェア確保をするのではなく、「利益ある持続的成長」を第1番目の経営方針に掲げたわけです。

2つ目はそれをどうやって達成するのかということで、イノベーションを持ち出しました。中でも、「イノベーションの乗数効果」を発揮することを重視しました。

一つのイノベーションが起こったら、サービスもそれに付け加えて作っていくなど、一つのイノベーションに対して色々な事業を作ることによって何倍にも効果を膨らませる。そんな乗数効果を発揮するイノベーションを目指しました。

そして3つ目が「企業の社会的責任」で、4番目が「グローバル人財の育成」です。本当はグローバル人財の育成を3番目にしようかと思っていたんですが、まだその時期ではなく、それより重要なのは企業の社会的責任だと。

企業の社会的責任については「生命」「安全」「コンプライアンス(法令順守)」をあらゆる事業活動の最優先するとして、これをどの現場でも言ってきたし、IR(投資家向け広報)で海外に行った時も言ってきたし、国内でいろいろな工場で訓示する時も必ずこれを言ってきた。

そんなコンプライアンス重視を言い続けてきた男がね、2008年(のリーマン・ショック時)にあれだけ大きなロスを出すとわかっていた時に、100億や200億のロスを知っていて隠していたと――。

そんなバカなことがあるかと言うわけですよ。僕が知っていて、そんなものを隠しているなんてバカげた結論をどうして出せるんだ、ということですよ。

そもそも、自分が社長である間に利益を出そうと思ったら、固定費のカットをすればいいんです。あれだけ大きな図体の会社ですから、カットするところはいくらでもある。

しかし、それをやると将来の成長の芽を摘んでしまうんですよ。(西田氏後任の)佐々木(則夫元社長)がまったくそうだったんだけど。僕はそれをやらないで、利益をきちんと自分たちで生んでいこうとした。

もともと(西田氏が社長に就くまでの)東芝はほとんど成長していなくて、GDPの成長か、もしくはそれ以下でしか伸びていなかったんです。

それでは会社として持続的成長は不可能なので、ここでもう一回、新たなイノベーションを起こして、新規事業を作り上げていこうと。そういうことによって事業を成長させようとしていたんです。

いまは報告も受けていない

<西田氏がそんな成長戦略の柱にしたのが半導体事業だった。西田氏はその半導体事業で提携していた米サンディスク(現・ウエスタンデジタル傘下)との「秘話」も明かした。>

僕が社長だった時に一番重視した事業が半導体事業ですよ。ですからWHを買収する時も、実は当時の財務担当重役に指示をしたんです。

僕が社長でいる間は半導体に目一杯の投資をしたいから、「半導体に投資ができる余裕ができる額はどれくらいか、はじいてくれ」と。そのうえで、「もしWHの買収金額がそれを超えそうであれば、それは諦める」と言った。

半導体のほうが(WH買収より)重要だという気持ちだったんです。実際、僕は半導体のためにはものすごく頑張って投資をしてきました。だからあの当時、生産能力が一気に上がったんですよ。

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Photo by iStock

それにいま、東芝は(ウエスタンデジタルと共同ではなく)単独で半導体事業に投資をすると言っていますが、あれも僕が社長の時、自分たちで投資をすればいいではないかと言うと、「それができないんです」と言っていたんです。

「なぜだ」と聞くと、「契約上、自分たちが単独で投資できないようになっています」と言う。「なんでお前たちは、そんな不平等な契約を締結したんだ」と怒って、「それなら俺が行ってやってやる」と、半導体の人間を連れて、すぐアメリカに乗り込んで契約の再交渉をして、東芝が単独で投資できるように変えたんです。

だからいま、東芝が単独で投資をするということも、戦略の一つとして残っているんです。

それだけ半導体に対する想いが強かった。こんなことだったら、半導体はアメリカ勢のいいようにされてしまう。とんでもない話だということで、強力なネゴをして変えたんですよ。

(現経営が半導体事業を売却することを決めた)いまの状況については知りません。

だって僕は詳しい報告を受けてないんですからね。新聞に書いてあることしかわからないですよ。政情リスクに屈せず、これからも半導体事業を伸ばしていってほしいですが。

西田氏は最後に、「何度も言うように、第三者委員会の結果だけでいろいろな報道がされてきた。それを皆さんが訂正した後だったら、私はいくらでも話しますよ」と語り、悪者として扱われることへの悔しさをにじませた。

カリスマ経営者か、戦犯か――。西田氏と東芝の裁判闘争は現在も続いている。

西田厚聰(にしだ あつとし)
2005年から東芝の社長、会長を歴任。'15年に不正会計問題で相談役を引責辞任した。現在73歳

「週刊現代」2017年11月18日号より

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