『モリーズ・ゲーム』男社会のルールに正面から挑むモリーが最高!戯曲『るつぼ』の意味とは?

『モリーズ・ゲーム』男社会のルールに正面から挑むモリーが最高!戯曲『るつぼ』の意味とは?

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  • 更新日:2018/05/21
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昨年10月に公開され、映画ファンの間でも高い評価を得た映画『女神の見えざる手』。その主人公を見事に演じ、最近はすっかり「闘う女の理想像」のイメージが強くなった女優、ジェシカ・チャスティンの最新主演映画『モリーズ・ゲーム』が11日より公開されたので、今回は公開二日目の最終回で鑑賞してきた。ついに次回作はアメコミ映画『X−MEN』シリーズに参入が決定している彼女の主演映画だけに、かなりの期待度で鑑賞に臨んだ本作。

タイトルやポスターの宣伝文からは、先頃公開されたトム・クルーズ主演作『バリー・シール/アメリカをはめた男』や、本作と同時期公開となった『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の様に、人生の絶頂から徐々に奈落の底へ落ちていくまでを描いた作品との印象が強かったのだが、果たしてその内容はどの様なものだったのか?

ストーリー

女子モーグル北米3位のモリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)は、心理学教授の厳格な父親(ケヴィン・コスナー)の下、幼い頃からひたすら練習を重ねていた。ところが、2002年の冬季オリンピック予選最終戦で、1本の松の枝のせいでスキー板が外れて転倒。モリーのアスリート人生は終わりを告げる。

ケガから回復したモリーは、ひょんなことからハリウッドスターのプレイヤーX(マイケル・セラ)を始め、大金持ちやセレブばかりが集まる高額ポーカー・ゲームの世界に足を踏み入れる。数年後、突然クビを言い渡されたモリーは、秘かに練っていた計画を実行し、“モリーズ・ルーム”をオープン。その後、NYに拠点を移し、並外れた才覚によって新たなる伝説を築く。だが、2012年、FBIに突然踏み込まれ、ゲームは閉鎖。モリーは全財産を没収される。

2014年、現在。回顧録「モリーズ・ゲーム」を出版後、モリーは違法賭博の運営の容疑で突然FBIに逮捕される。何人もの弁護士に断られたモリーは、チャーリー・ジャフィー(イドリス・エルバ)に弁護を頼む。最初は断っていたジャフィだが、彼女の内面を知るうちについに弁護を引き受ける決意をする。彼女は果たして、無罪を勝ち取ることが出来るのか?(公式サイトより)

予告編

莫大な情報量と早口のセリフ、でも判り易いので大丈夫!

本作の上映時間は最近の映画の傾向を反映してか、かなり長めな140分。しかし、ポーカーや法律の専門用語が大量に登場するにも関わらず、長さや退屈さを感じさせ無いので大丈夫!もちろんこれは、『ソーシャル・ネットワーク』でも大量のセリフを早口で喋らせて、上映時間を短縮させたアーロン・ソーキン監督の手法の勝利に他ならない。例えば、日本人にはあまり馴染みの無いテーブル・ポーカーのルールやカジノの仕組みの説明にも、これら大量のセリフに加えてビジュアルを多用。観客が目で観て分かる様に説明してくれているので、カジノに馴染みのない日本人にも意外と分かりやすくなっているのだ。

ただ一点だけ不便だったのが、セリフだけでなく登場人物も多いために人名と顔が一致せず、名前だけ字幕で登場していても誰か分からなくて、本人が登場して初めて「あ、この人か!」と、やっと名前と顔が一致するという事態。これからご覧になる方は出来ればパンフを購入の上で、登場人物の所だけ事前に読まれることをオススメします。

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実は、ケビン・コスナー演じる父親の存在が重要!

本作で非常に印象的だったのが、ケビン・コスナー演じる父親の存在と、映画の終盤で裁判を前に悩むモリーに彼が言う、「お前は権力のある男を支配したかっただけだ」というセリフ。確かに本作を見ていると、モリーが決して金儲けだけが目的でカジノを運営していたとは思えず、むしろそれよりは社会的地位も財産も名声もある男達が自分の経営するカジノに現れることが、彼女の支配欲を満たしてくれたから、という感が強い。

良くある展開であれば、大金と成功を手にした主人公の生活が次第に荒れて行き、やがてはボロボロになってその絶頂から転落するという事態になりそうなものだが、本作ではその点が少し違っている。

そう、実は本作で描かれるのは、金儲けやギャンブルのスリルにのめり込むことなく、客との間に一線を引いて接するモリーの自制心の強さなのだ。(不眠不休で働くためにクスリを常用するが、それでも禁断症状や日常生活に異常をきたす描写は無い)

日頃仕事上の関係には私生活を持ち込まないようにしていたモリーだが、ふとした心の弱さから運転手に自身のプライベートを話してしまったことで後に彼女が最大の危機に陥る展開も、弱さを見せた途端に一瞬で食い物にされる裏社会の本質を表現していて、実に上手いと感じた。

こうして次第に危機的状況に追い込まれるモリーだが、最終的に彼女に心の安らぎと救いを与えるのが、子供の頃から関係がギクシャクしていた父親からの勇気ある告白であり、それによってついに彼女の少女時代からのトラウマが解消するという展開も見事!

この、モリー親子が長年の確執を乗り越えて和解するシーン。『マン・オブ・スティール』でも見事な父親像を見せてくれたケビン・コスナーの年輪を重ねた男の渋さが全開なので、是非劇場でご確認を!

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男に有利なゲームに正々堂々と挑んだモリーの誠実さが奇跡を呼ぶ!

本作で主人公モリーが直面するのは、暴力、パワハラにセクハラ、更には政府の司法取引による情報提供強要など、周囲の男たちからのあまりに理不尽な仕打ちの数々だ。同じフィールド、同じルールで対等に勝負していたと思っていたモリーに対して、自分が負けそうになると平気でルールを無視して、まるでテーブルをひっくり返す様な暴挙に出る世の男たち。

そう、本作で徹底して描かれるのは、一見女性にも成功のチャンスを与えているかに見えて、実際は自分よりも能力があり成功すると見るや、手のひらを返すように卑劣な手で潰しにかかる世の男たちの巧妙なやり口であり、それを分かりやすく例えると次の様になる。

男の子たちが草野球をやっているところに女の子が「私も入れて」とやって来た。女の子だから野球も知らないし下手だろう、そう思った彼らは女の子をチームに入れてやり、一番球の飛んでこない外野を守らせる。

ところが女の子はどんどん自分で野球について勉強し知識を吸収!同時に練習を重ねてどんどん上手くなり、ついにはチームのエースで4番バッターに!

こうなると男の子たちは面白くない。彼らはなんらかの理由をつけて女の子をチームから追い出してしまうことに・・・。

実際、成功する度にこうした妨害を受け続けたモリーは、カジノのスタッフを自分が信頼できる女性たちで固めることにするのだが、肝心のお客たちが男性のため、今度は客からの誘いやセクハラ・色恋い沙汰に悩まされることになる。

もちろん、モリー自身も女性としての魅力を集客に利用しているのは明らかなのだが、相手の家庭や幸せな生活が崩壊することを告げて、紳士的に誘いを断るモリーの大人の対応ぶりに対して、相手の男たちの態度や行動が実に子供っぽく自分勝手に描かれている本作。優れた能力を持ちながら周囲の男性からは性の対象として低く見られ、暴力の前にはあまりに無力で耐えるしかなかったモリーの姿は、最近話題となり世界中に広がった、「Me Too」運動にも繋がるものだ。自分も本作を見て、一男性として非常に参考になった、と言っておこう。

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最後に

本作のタイトル通り、モリーが挑むのが「ゲーム」である以上、そこにはルールという物が必ず存在する。

ところが現実に彼女がプレイする場所は、男に有利なルールが支配する世界に他ならない。スキー競技で挫折を味わった人生の敗者から、己の才覚だけで一気に勝者へと上り詰めたかに見えたモリー。だが、彼女の勝利は理不尽な男どもの反則プレーによりことごとく邪魔され、何度も敗者の座へと突き落とされてしまうことになる。

それにもめげず、顧客の情報と彼らの私生活を必死で守ろうとするモリーの姿は、彼女がそれまで人生を賭けて来たスポーツ界におけるスポーツマンシップさえ感じられるほどだ。彼女の中に存在するこうしたモラルや正義感を見抜いたからこそ、当初は協力を躊躇していた弁護士のジャフィーも、ついには彼女の弁護を決意することになるのだ。

そう、実は本作が描こうとするのは、男に有利に出来ている社会やルールの中で、それでも自分のモラルや信念に従って最後まで正々堂々と恥ずかしくない行動をしようとする、一人の女性の姿に他ならない。

映画終盤での、モリーが自身のルールを曲げて情報提供するか、それとも自身の信念を貫いて口を閉ざすか?の選択も、実は本編中に度々そのタイトルが登場するアーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』の第4幕の内容と呼応しており、映画の展開を観客に暗示する効果を上げている。ちなみにこの『るつぼ』は1996年に『クルーシブル』のタイトルで映画化されているので、興味を持たれた方は是非一度ご覧頂ければと思う。

男に有利なルールが横行する社会の中で、そのルールさえ無視した彼らの卑劣な妨害にも負けず、自身の心の声に従って最後まで信念を曲げなかったモリーが、最終的にその社会のルールにより助けられ逆転する!という、男たちにとって最高に皮肉な展開は実に見事!

子供の頃に父を憎むと共に、裏切られた母親のようにはなるまいと心に誓ったであろうモリーが、ついに家族との絆を取り戻し人生の再スタートを切ることになるのだが、果たして彼女が今後どうするのか?いや、きっとどんな世界においても、彼女の様に自身のルールに従って戦略的に行動する女性なら成功するに違いない!そんな思いで劇場を後にした本作。

全ての女性だけでなく、やはり世の男性にも是非観て頂いて今後の参考にして頂きたいので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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