年末が近づくなか、観光業界は2024年の旅行に関する「バズワード」を見据えている。それは、引き続き「リベンジ旅行」になるのだろうか、それとも「セット・ジェッティング(ドラマなどのロケ地を訪れる聖地巡礼)」、あるいは「ワーケーション」になるのだろうか?
オンライン旅行代理店の米エクスペディア・グループは、運営する旅行予約サイトのホテルズドットコム、バケーションレンタルのVrbo(ヴァーボ)が収集したデータと、世界の旅行者およそ2万人を対象に実施した調査の結果に基づき、今後の旅行のトレンドに関するレポートを公表した。
以下、レポートが予想する2024年の旅行トレンドを紹介する。
・旅先は「デュープ」を選択
TikTokなど、SNSでは少し前から、旅行に関連して「dupe」(「そっくりなもの」を意味するduplicateの略)という言葉が目立つようになっている。インフルエンサーたちが取り上げ、トレンドとなっている「デュープ」な旅先とは、本当に行きたい場所の代わりとなる、より安価な場所だ。
例えば、ギリシャなら混雑するサントリーニ島よりも、あまり知られていないパロス島、ロンドンなら代わりにリバプール、スキー旅行ならスイスのツェルマットよりも札幌が勧められている。
・ツアー・ツーリズムが人気
2023年にテイラー・スウィフトとビヨンセが行ったワールドツアー、「The Eras Tour(エラズ・ツアー)」と「Renaissance(ルネッサンス)」は、各地のコンサート会場に多くのファンを呼び込み、観光業支援につながった。
エクスペディアは、こうした「ツアー・ツーリズム」は2024年も、多くの人にとって旅行のきっかけになるとみている。調査では、回答者の40%以上が「訪れたことがない場所でのコンサートにも行きたい」と答えている。
ツアー・ツーリズムに関連して注目されている都市には、バーミンガム(英国)、アントワープ(ベルギー)、ワルシャワ(ポーランド)などが含まれている。これらの都市でのホテルの1泊料金は平均150ドル(約2万2000円)未満となっている。
・禁酒の旅
低アルコールやノンアルコールの飲料を好む人が増加している。欧米を中心に広まっている「ドライ・ジャニュアリー」と「ソバー・オクトーバー」(それぞれ1月、10月は禁酒するという取り組み)なども、それを後押ししている。
調査に協力した回答者の40%以上が、2024年は「デトックスのための旅をしたい」と答えているほか、半数が「滞在先として、ノンアルコール飲料を購入しやすいホテルに関心がある」と回答している(旅行業界はすでに、こうした旅行者たちの希望に応える準備を始めているとみられる)。
旅行中に飲酒量を減らす最大の理由として、4人に1人が「自制を保つため」「心身の両面において、より良い気分で過ごすため」と答えている。また、「スポーツイベントに参加するため」とした人も多かった。
・「ゴーケージョン」
飼い始めたばかりの子犬と一緒に旅する「パピームーン(Puppymoon)」、初デートの記念日を意味する「ファーストデーティバーサリー(first-date-iversary)」、一緒に作った料理を味わう「プレートデート(plate date)」など、新たな造語が次々と誕生するに伴い、こうした特別な機会(オケージョン、occasion)を口実に旅行に行くという「Go-ccasion(ゴーケージョン)」がトレンドとなりつつあることが、エクスペディアの調査から示されている。
そのほか、従来から重視されてきた記念日や、特別な節目となる誕生日(マイルストーン・バースデー)に加え、退職や転職、昇進など、仕事に関連したオケージョンを理由に旅行する人も増加している。
・「バイブス」重視
特定の施設や設備があること、星評価や格付けに加えて、宿泊施設全体の「雰囲気(バイブス)」を重視する旅行者が増えているという。調査では回答者のおよそ9割が、選択における重要な基準の1つにバイブスを挙げている。
施設内に流れる音楽や、インテリアや照明など以上に、最も重視するのは「顧客サービス」だとされている。
・「Gen Gen AI」の登場
エクスペディア・グループのリポートは、「Generation Generative AI(生成人工知能世代)」の旅行者の増加に言及している。
調査結果によると「次の旅行の計画に生成AIを使用することに関心を持っている」という人は、およそ半数。「旅の計画を立てるのにAIは非常に役に立つ」と答えた人は、3人に1人だった。そのほか40%近くが、「完璧な滞在先を見つけるため、AIを利用したい」と答えている。
また、アクティビティの計画(35%)、フライトに関する比較(33%)、旅行の予定の変更・キャンセル(20%)に利用したいといった回答がみられた。