コロナ禍の「売れ筋マスク」激変した歴史をたどる

コロナ禍の「売れ筋マスク」激変した歴史をたどる

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/08/06
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コロナ感染拡大以降、さまざまなマスクが登場してきた(写真:時事)

6月上旬には、全国で1日2万人前後で推移していたコロナの新規感染者数。それから2カ月もたたないうちに、連日20万人を突破することになると予想していた人はいったいどれほどいたのだろうか。これまで自分の周囲で感染者が出た経験がなかった人でも、にわかに周囲で感染者が増えだしているはずだ。

市場調査会社のインテージが、新型コロナの影響を受ける直前から週次で全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントショップなど、約6000店舗の販売動向を追う「新型肺炎カテゴリー動向」。このほど公表された6月27日週までの動向では、マスクが再び前年比2桁増となった。

その牽引役は立体型マスクだという。今回はコロナ時代の申し子・マスクにフォーカスしてみたい。

昨年夏に立体型がウレタンを逆転

全品目を対象とした前年比伸び率のランキング上位には、日焼け止めやスポーツドリンク、制汗剤などが入った。例年より1カ月近く早い梅雨明けで、6月下旬から猛暑に見舞われた影響が端的に表れた。

そんな中で、全品目ランキングの上位30品目には登場しなかったが、雑貨部門で7位に入ったのがマスクである。6月27日週で前年比116.9%を記録した。そのマスク、今では実にさまざまな種類のものが出回っているが、今回のランクインに貢献したのは立体型だ。

下のグラフは、コロナの影響がまったくなかった2019年1月の1週目から、今年6月27日週までの3年6カ月の間の、同調査対象店舗6000店におけるマスクの販売金額推移をタイプ別に示したもの。不織布が代表的な「使い捨てマスク」、「使い捨ての立体型マスク」、ウレタン素材が代表的な「繰り返し使えるマスク」の3タイプに分けて集計している。

「繰り返し使えるマスク」には、洗って使えるナノファイバー素材のものや、立体型でも繰り返し使用できるものも含まれているが、大部分はウレタンマスクだ。

このグラフでは通常の「使い捨てマスク」の販売金額が大きすぎるので、「使い捨ての立体型マスク」と「繰り返し使えるマスク」の増減が読み取りにくいかもしれないものの、昨年夏頃から立体型が伸びてきていることはおわかりいただけるだろう。

そこで、「使い捨ての立体型マスク」と「繰り返し使えるマスク」だけを集計したのが下のグラフである。

立体型マスクが繰り返し使えるマスクを上回ったのは、昨年の8月9日週である。以来、多少のでこぼこはありながらも、完全にウレタンマスクを凌駕したことがわかる。

ウレタンマスク人気が低下したワケ

もともとウレタンマスクに人気が出たのは、形状や色合いが、普通の使い捨て不織布に比べてファッション性が高かったからだろう。立体的で普通の不織布に比べて苦しくないとも言われていた。

ところが2020年12月、理化学研究所がある研究結果を公表するのだ。スーパーコンピュータ「富岳」を使ってマスクの効果をシミュレーションすると、ウレタンマスクは不織布に比べて、吸い込み飛沫量、吐き出し飛沫量ともに、その抑制効果は大きく劣るという。

これを受け、不織布を推奨する流れができ、電車内などでウレタンや布製のマスクをしているとトラブルになる事態も発生するようになった。

このため、不織布マスクの上からウレタン製や布マスクをする“新常識”が登場、瞬く間に定着していくわけだが、それと同時並行で供給が増えだしたのが、ファッション性を意識した不織布製の立体型マスクである。

2020年の年末の理化学研究所の公表を受け、各社が開発に着手したのだろう。2021年4月13日、ユニチャームがウイルス飛沫を99%遮断し、なおかつ立体型だから鼻や口の周りに空間ができて苦しくないという、高機能の立体型不織布マスクを発売した。

しかも色はグレーとベージュの2色。ウレタンに求められたファッション性を意識したことが見て取れる。7枚入りで店頭想定価格は税込みで438円。1枚あたり62.5円と、通常の不織布マスクに比べてかなり高かった。

この2週間後の4月28日、今度は健康食品メーカーの医食同源ドットコムが立体型不織布マスクを発売。色はグレー、ベージュ、黒、ピンクの4種類。やはり7枚入りで店頭想定価格は税込みで437円。1枚あたり62.4円だった。

理化学研究所の発表の少し前、2020年12月上旬には韓国製の立体マスクが上陸している。形状は3D型とか柳葉型、あるいはダイヤモンド型などと呼ばれる、3段構造のものだったのだが、これは見た目は不織布製だが実態は通常の不織布よりはるかに高機能のナノファイバー製。医療レベルだったので1枚250円とかなり高額だった。

価格が下がって一気に普及

医食同源ドットコムは、この2カ月前に普通の不織布マスクにきれいな色を付けたカラーマスクを発売し、大ヒットしていたためか、立体型マスクにも順次色を追加。6月頃から盛んにメディアで取り上げられるようになって人気に火がついた。

ここで下のグラフをご覧いただきたい。使い捨て立体型マスクについて、販売金額と1枚あたりの単価の相関性を検証すべく、時系列で集計してみた。

2020年春のコロナ初期の頃の価格は供給不足による異常値として、マスク全体に供給が追い付き始めた2020年6月からしばらくは1枚30円台後半という状態が続いている。

その後年末に向けて50円近くまで上昇、年が明けて2021年1月になるといったん30円近辺まで下落。4月末頃まで続いたあと、5月初旬から上昇が始まり、40円台後半が定着した。11月頃からゆるやかに下落が始まり、直近の2022年6月27日週は36円である。

2021年1月の価格下落は、呼吸がしやすいとされるウレタンマスクがダメ出しを食らったため、ファッション性に劣る既存の低価格の立体マスクの需要が増えたためだろう。

4月以降にファッション性の高い高額品が登場して人気を博した結果、5月に入ると価格が上昇。秋口頃からは立体型の供給元が増え、低価格品も増加した結果、立体型の価格が手ごろになってきたことで、販売数量も右肩上がりになったということだろう。

ユニチャームも医食同源ドットコムも、自社ECサイトで購入しようとすれば、今も価格は発売当時と変わらないが、ドラッグストアでなら30枚入りが1000円ちょっと(1枚あたり33~35円前後)で手に入る。

柳葉型のものも、中国産の無名のメーカーのものなら40枚入りで1000円ちょっとという価格で売っている。猛暑を迎え、この夏は冷感効果を謳うものが多数発売されている。コロナ襲来がなければ今も多くのマスクは平面型の不織布のままだったことは間違いないだろう。

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(伊藤 歩:金融ジャーナリスト)

伊藤 歩

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