
JRT四国放送
国が卓越した技能者に贈る「現代の名工」に、今年、徳島県内から過去最多と並ぶ3人が選出されました。
『フォーカス徳島』では今週、その3人の名工たちをシリーズでご紹介します。
21日は、徳島市で建具や家具を製造する指物師の富永啓司さん・66歳です。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「(Q.「現代の名工」に選ばれた気持ちは)
やったぁ…みたいな。じわーっと喜びが…」
富永啓司さん・66歳。
釘などの接合器具を使わず木を組み合わせる「指物」と呼ばれる技法で、建具や家具を製造する指物師です。
なかでも富永さんが手掛ける作品には独自の技術が用いられ、「阿波指物(あわさしもの)」と呼ばれています。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「『阿波指物』は自然を取り入れた心の描写をモットーとして、作品を作り上げたいっていうのがあって」
水の流れや風などの自然を木で表現する「阿波指物」。
しなやかな曲線を描く「曲げ組子」や木をしっかりはめ込み頑丈に組み上げる「四方転び」は、富永家が代々受け継いできた技法です。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「木っていうのは本来は生きてますでしょ、自然界の中に生えていて。生きているってことは、それなりの性格があるんですよね。その性格と話をしながら組み上げていく、削る」
木と対話をしながら組み上げる。
富永さんは自身の技術を磨くだけでなく、「阿波指物」魅力を国内外へ発信した点が高く評価されました。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「『曲げ組子』を海外で出せるようなものに鍛え上げていかなあかん。それをどんどんどんどん改良していくわけですよね。20年ぐらいかかりましたけどね」
その国の文化を取り入れたデザインを考えたり、繊細な木が外国の乾燥した気候に耐えられるよう工夫したりと、努力はとどまるところを知りません。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「外国っていうのはスケールがでかいんで、ちっさいこんな感じだけではあかんというのがわかって、強度的・性能的にもいけるようにしていかなあかんっていうので非常に苦労はしました」
「阿波指物」を世界に広めようと、困難を乗り越えながら活動を続けてきました。
今から4年前の2019年には、「曲げ組子」を取り入れた作品が外国人審査員によるコンテスト「COOL JAPAN AWARD 2019」で3位入賞。
そして11月、「現代の名工」に選ばれた富永さん、受賞して新たな使命感が生まれました。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「若い子が、職人って面白いなとか、職人ってかっこいいなとか、安心できるなとか、そういう風なところまで持っていけたらね」
日々仕事を共にしている息子の康介さん(39)ら若い世代に、自分が持つ技術を伝えていくことの大切さを改めて感じました。
(「現代の名工」に選出 指物師の富永啓司さん(66))
「日本は独特の“かおり”があるでしょ。そういう風なものを守るポジションにあると思うんですよ。若い子に日本の今まで何百年も培ってきた文化っていうものを、ちょっとでも残していけたら。そしてその文化を味わって豊かさを体験してもらったら、すごくリラックスするし、良いと思うんですけどね」
「現代の名工」という国内最高峰の称号を得た富永さんなんですが、なんと息子の康介さんも今年度「阿波の名工」に選ばれたということで、親子そろってすごいですね。
富永さんはこれから依頼してくれるお客さんが、自分らしさを感じられるような作品を作っていきたいと話していたそうです。