
ライブ119の模擬実演で現場の状況を中継する通報者(中央)。熊本市消防局の指令管制室にはテレビ画面に表示されている映像がリアルタイムで届く
熊本市消防局は1日から、119番通報者が救急や火災などの現場映像をスマートフォンを通じて消防局に中継できる「Live(ライブ)119」の実証実験を始めた。従来は口頭で伝えていた現場の状況を可視化することで、迅速で的確な対応につなげる狙いだ。
ライブ119は、地図情報に関するシステム開発などを手掛ける「ドーン」(神戸市)が提供する仕組みを活用。119番を受け、市消防局指令管制室が必要と判断すれば通報者に中継を依頼。通報者はショートメッセージを受信し、記載のURLからシステムを起動すると動画の撮影と中継が始まる。
指令管制室は、現場の映像を見ることで、隊員や機材の追加派遣の必要性などが判断できる。一方、通報者も映像を通じて心肺蘇生やAEDの使用手順などの指示を受けながら正確な対応が期待できる。
従来の電話での通報では、通報者が興奮状態で状況を正確に説明できないケースや、救急患者の症状を把握できない例もあった。一方、市消防局に寄せられる年間約5万件の119番のうち、携帯電話からの通報は約6割を占めるため、スマホでの中継システムの導入を検討。2022年4月現在、全国約20の消防局で導入され、効果があったという。
7月27日には報道陣に模擬実演が公開され、現場では通報者のスマホに表示された映像を通じて心臓マッサージが実施され、指令管制室の担当者は中継映像から救急患者の反応を確認していた。
同局情報司令課の本田宏課長は「映像を見ることで専門的な判断ができる。通報者が伝える情報と現場の状況との差をなくしたい」と話している。23年1月までの実証実験で問題がなければ、23年度にも本格運用を始める。【栗栖由喜】
毎日新聞