出会いを重ねることは、私たちにとって道筋のひとつとなる。『出あいなおし』/佐藤日向の#砂糖図書館43

出会いを重ねることは、私たちにとって道筋のひとつとなる。『出あいなおし』/佐藤日向の#砂糖図書館43

  • ダ・ヴィンチWeb
  • 更新日:2022/05/14
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出会いが人生を変えるきっかけをくれた。そんな経験はないだろうか?

私は職業柄、沢山の出会いと別れを繰り返す。別れ、というよりも再び出会うためにまた頑張り、相手と出会いなおすという表現のほうが正しいかもしれない。

今回紹介するのは、森絵都さんの『出会いなおし』という作品だ。本作は6作からなる、人生の局面での出会いなおしをテーマにした短編小説だ。その日のモチベーションや重ねてきた時間によって、内容の読み込み具合が違うと、普段から小説を読む時は感じるが、『出会いなおし』は特に、自分のモチベーションが作品の印象を変えると私は感じた。

6作に登場する主人公は、それぞれ年齢や職業がバラバラで、出会いなおす相手も上司であったり、架空であったりで、各話にまったく違う魅力がある。私にとって、特に響いたのは、本のタイトルにもなっている「出会いなおし」だ。私がその一編に共感したのは、主人公がフリーで活躍するイラストレーターという部分だ。フリーだからこそ、特定の人と活動する時間が短く、私の仕事の環境と少し似ていた。

現場で出会った人の言葉がきっかけで、新しい道を切り拓く主人公が、海外で修行を重ねた数年後、もう一度その人と仕事をする機会にめぐり合い、会う約束をする。すると彼は言動も纏う雰囲気も悪い方向に変わっていて、年月が変えたのは自分だけでなく相手も然りだということに気がつく。この主人公の不器用な生き方に、私はとても共感した。

「人から誤解されるたび、私はインチキの皮をまた一枚厚くした思いがして、自分への信頼を損なっていった。」という一文にも、共感することができた。私は、初対面の人によく「怒っているようにみえる」「不機嫌にみえる」と言われる。自分にはそんなつもりがまったくなく、相手から誤解されるたびに、自分に自信がなくなってしまう。たぶん、思っているより私は強い人間ではないのだと思う。だからこそ誰かと仲良くなるのはとても怖いし、どこまで相手と距離を詰めたらいいのか悩んでいるうちに、その現場が終わってしまうことが多々ある。こうやってぐるぐる考え込んでいる間にも、私の「インチキの皮」は分厚くなっているのかもしれない。だが、これまでの出会いは、確実に私を導いてくれる道筋のひとつとなっている。出会いというのはとても不思議で、過去の自分が繋いでくれる縁もあれば、出会いなおしたことによって新たに繋がる縁というのもある。

本作には、「年を重ねるということは、同じ相手に、何回も出会いなおすということだ。会うたびに知らない顔を見せ、人は立体的になる。」という言葉がある。この言葉の通り、年を重ねた分だけ自分磨きをすることで、出会いなおした時、相手に与える印象というのは180度変わる。私は、これまで出会った方々に新たな印象を持ってもらえるよう、丁寧に経験を重ねていきたい。皆さんは今、出会いなおしたい人がいるだろうか? その誰かを思い浮かべ、懐かしさを感じながら読むのも楽しめる本作を、是非手に取って頂きたい。

さとう・ひなた
12月23日、新潟県生まれ。2010年12月~2014年3月、アイドルユニット「さくら学院」のメンバーとして活動。卒業後、声優としての活動をスタート。主な代表作に『ラブライブ!サンシャイン!!』(鹿角理亞役)、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(星見純那役)、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(暁山瑞希役)。5月14日~15日には、武蔵野芸術劇場にて、オリジナル現代落語シリーズ「麗和落語〜二〇二二夏の陣〜」第二陣に出演する。

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