
開幕試合で1失点完投勝利を挙げた山梨学院・林。119球の熱投だった(撮影・渡辺大樹)
第95回選抜高校野球大会第1日(18日、甲子園)選抜大会が開幕し、開会式に続いて1回戦3試合が行われた。開幕試合では3季連続出場の山梨学院が東北(宮城)に3―1で競り勝った。林謙吾投手(3年)が5安打1失点で完投勝利し、昨春、昨夏と初戦敗退の悔しさを糧に〝三度目の正直〟で初戦突破した。高知は北陸(福井)を4―1で下し、沖縄尚学は大垣日大(岐阜)を4―3で振り切った。
全36校の選手が参加した開会式の余韻が残るマウンドで、丁寧にアウトを積み重ねた。天候不良による試合開始の1時間半繰り下げも影響なし。エースの林が119球を投げきって完投し、開幕試合で勝利の雄たけびを上げた。
「初回からゼロでいこうと思っていました。全国の舞台で投げられて、自信になった」
試合開始直後に味方が失策しても「走者が出るのは当たり前」と動じなかった。四回まで無安打投球。走者を出した後にはセットポジション、クイックと投げ方に変化をつけて切り抜けた。2点リードの七回に1点を返されたが、5安打1失点完投で観衆1万1000人の声援を浴びた。
山梨学院は3季連続甲子園出場。だが、昨春は木更津総合(千葉)、昨夏は天理(奈良)にいずれも1-2で初戦敗退した。林は「スタンドで見ていて、出られない悔しさと勝てない悔しさがあった」とアルプス席で苦々しさを味わった。
昨秋からベンチ入りし、背番号10で出場した関東大会準決勝の高崎健康福祉大高崎(群馬)戦で公式戦初完投。明治神宮大会では初戦の英明(香川)戦に先発したが、6回8安打6失点で降板して敗れていた。
冬場は下半身を鍛えて体重は7キロ増の85キロになった。「3度の食事を増やして間食や夜食も取った。走り込み、ウエート(トレ)、スクワットを行いました」と一回り大きくなった。この日の最速は139キロながら、球質に磨きをかけてボールの切れを増した。
2013年から指揮を執る吉田監督は「一回、沼から出て…、シャワーを浴びます」と独特の言い回しで甲子園の勝利を喜んだ。2回戦に進出し、次は大会6日目に氷見(富山)と対戦する。
今大会は上限なしで観客を入れての声出し応援が認められ、甲子園には声援が響きわたった。人数制限のないブラスバンドの演奏も復活した。「気分が上がりますね」と林。WBCで盛り上がる野球界で、球児の春が開幕した。(山口泰弘)