生活保護の増加が止まらない...そのウラにメディアが報じない「新たな貧困層」

生活保護の増加が止まらない...そのウラにメディアが報じない「新たな貧困層」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/01/15
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報道は「申請件数が6か月連続増加」ばかりだが

生活保護受給件数の増加に歯止めがかからない。この背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、これまでの受給者層とは違う“新たな貧困層”が生まれている可能性がある。

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浮かび上がる「新たな貧困層」の存在。写真はイメージ/photo by iStock

大手のメディアが報道する生活保護件数のニュースでは、そのほとんどが表面上の件数だけを取り上げたものとなっている。

例えば、厚生労働省が1月5日に発表した直近21年10月の「生活保護の被保護者調査」について、NHKでは「申請件数が前年同月比で6か月連続増加した」ことを中心に伝えた。他の大手メディアも“似たり寄ったり”の内容だ。

確かに、21年10月の申請件数は1万8726件と前年同月比105件・0.6%増加し、6か月連続の増加となっている。だが、注目すべきは、生活保護受給の傾向にこれまでとは違った大きな変化が起こっていることだ。

生活保護の統計には、申請件数のほかにも、生活保護受給者数、受給世帯数、類型別の受給世帯数(高齢者世帯、母子世帯など)、生活保護の扶助種類別受給者数(生活扶助、住宅居扶助など)が網羅されている。

もっともわかりやすい変化は、受給人数が減少しているにも関わらず、受給世帯数が増加していることだ。(表1)

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表1

これは、新型コロナの影響が現れる以前から続いているものだが、その要因は高齢者世帯の生活保護受給にある。

生活保護といえば母子家庭の代名詞だった時代は、すでに遠い過去のもの。今は、生活保護は高齢世帯の代名詞だ。生活保護受給世帯の半数以上(21年10月時点で55.5%)は、65歳以上の高齢者世帯となっている。

高齢者の貧困については、21年5月19日の『「70歳定年」のウラで、じつは日本中で「貧しい高齢者」がめちゃ増えていた…!』でも取り上げた。

当たり前のことだが、2人の高齢者世帯はやがて単身世帯になる。高齢者受給世帯のうち51.2%(21年10月)は単身世帯となっており、これが受給人数の減少にも関わらず、受給世帯数が増加している主な要因だ。

しかし、新型コロナ感染拡大により、この受給世帯類型に変化が出ている。世帯類型は、65歳以上の高齢者世帯、母子世帯のほか、障害者世帯、傷病者世帯に分類され、このいずれにも該当しない世帯を「その他世帯」としている。

「その他世帯」とは誰なのか

このうち、20年3月を底に、障害者世帯とその他世帯の受給件数が増加の一途を辿っているのだ。

新型コロナ禍での障害者雇用への打撃については、21年6月30日の『メディアは報じない…「障害者雇用」が新型コロナで深刻な打撃を受けている』でも取り上げている。

障害者世帯の受給は20年3月の20万3451世帯から21年10月には3.5%も増加し、21万615世帯に、その他世帯は、20年3月の24万1161世帯から21年10月には3.3%増加し、24万9186世帯となっている。(表2)

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表2

同期間(20年3月から21年10月)の高齢者世帯は0.1%増加、母子家庭は7.6%減少、傷病者家庭は2.3%減少している。

これは新型コロナ禍による雇用や所得の悪化で、生活保護受給世帯が、高齢者でもなく、障害者や傷病者でもなく、母子家庭でもない、普通の家庭にまで拡大していることを示しているのではないだろうか。

そこで、前述した厚労省の発表資料である「生活保護の被保護者調査」には掲載されていない「労働力類型別世帯数」を統計のデータベースから調べた。

労働力類型別世帯数は、生活保護受給世帯のうち、働いている人がいる世帯を「稼働世帯」、働いている人がいない世帯を「非稼働世帯」として集計している。

働き手のいる稼働世帯は、20年1月の25万962世帯から同年6月の23万5852世帯に大きく減少し、その後も21年10月まで、23万世帯台半ばで推移している。

これに対して、働き手のいない非稼働世帯は、20年2月の137万5346世帯から同年6月の139万3147世帯に急激に増加し、その後もジリジリと増加傾向が続いている。(表3)

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表3

稼働世帯は20年1月から21年10月の23万5659世帯に6.0%(1万5303世帯)減少しているのに対して、非稼働世帯は139万8342世帯に1.5%(2万1510世帯)も増加している。

このことから、大手メディアが報道したように、「生活保護の申請件数が6か月連続で増加しています」程度の話ではなく、生活保護世帯の増加は新型コロナ禍の影響によって、実質的に失業に等しい休職者や失業者が急激に増加したことで、普通の家庭にまで貧困化が拡大し、“新たな貧困層”が生まれつつあるという深刻な事態を引き起こしていることがわかる。

実質的に失業に等しい休職や失業に追い込まれても、すぐに生活保護に至るわけではない。失業保険の受給や貯蓄を取崩して、しばらくの間は生活できるだろう。

だが、新たな仕事につけず、失業保険の受給が終わり、貯蓄が尽きれば、生活保護に頼らざるを得なくなる。申請件数の増加は、こうした受給者が増加していることを示しているのだ。

こうした状況ついて、大手メディアは政府に対して警鐘を鳴らし、政府は実態をしっかりと把握し、早急に対策を打ち出し、生活保護件数の増加や貧困層の拡大に歯止めをかける必要がある。

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