【漲る地方食材】刀根早生、富有柿

【漲る地方食材】刀根早生、富有柿

  • 料理王国
  • 更新日:2022/01/15
No image

堀内農園では、一般的な農薬使用量に比べて約6割まで抑えている。害虫から柿の木を防ぐため、ハーブを植えたり、木酢液や納豆菌など、薬に頼らない方法を試行錯誤している。また、冬季は樹皮の下に害虫が繁殖しやすいため、皮を除去する作業も行っている。日当たりをよくするために葉を落とすなど、山中ではその多くが手作業だ。

No image

【とねわせ、ふゆうがき】
柿は、大きく甘柿と渋柿に分かれる。甘柿の代表品種が富有柿で、市場の半数以上を占めている。一方、渋柿は平核無(ひらたねなし)や刀根早生(とねわせ)が有名で、収穫後に渋抜きしてから出荷される。渋抜きには、アルコールや炭酸ガスが用いられる。渋味は柿に含まれる可溶性のタンニンによるもので、甘柿の場合は成長過程でタンニンが不溶性になり、渋味が感じられなくなる。アルコールにはタンニン物質を結合して不溶化させる作用があり、炭酸ガスを使用する場合は柿に呼吸をさせないことでアルコール生成を促して、タンニンを不溶化させることになる。ちなみに、干し柿は乾燥する過程で自然と渋味が抜ける。

特別栽培による土作りが育む 樹齢100年の歴史ある甘露

「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」と正岡子規が詠んだように、奈良は柿の産地として名高い。柿の品種の中でも、早生の優良品種として有名な刀根早生は、奈良県天理市から派生したものである。それゆえ、奈良県中部の天理市や中西部の五條市などで、柿が盛んに栽培されている。

堀内農園は、西吉野に農園が広がっており、堀内俊孝さんは六代目の当主となる。10月は種なし柿、11月は富有柿を収穫し、東京をはじめ関東への出荷が多い。

できるだけ安全な食材を届けたいとの思いから、農薬を減らした特別栽培に取り組み、木材チップや牛糞などを用いた土作りに励んでいる。そのため、園内の土はやわらかく、多くの微生物が共存することで、豊かな養分を柿に供給している。

2010年、新型の脱渋機を導入した。密閉した空間でアルコールを噴霧し、送風機で循環させることにより、短時間での渋抜きが可能になった。これにより、従来よりも収穫から出荷までの時間が短縮され、よりフレッシュな状態で柿を届けられるようになった。

また、園内には樹齢100〜120年という古木も現役で実を結んでいるというから驚きだ。果実の大きさは一般的な柿よりもひとまわり小さいながら、その味には複雑さが感じられ、「百年柿」というブランドで人気を集めている。

収穫の2週間前から一切の農薬を使用しないため、皮をむかずに丸かじりできる。実際に試食させてもらうと、皮は硬くなく、かぶりついた口の脇から甘い雫が滴り落ちた。

No image

樹齢100年以上の古木。幹の太さは柿の木とは思えないほど

No image

和歌山の職人、坂本さんの手による脱渋機。吉野に500軒ある柿農家でも、わずか2軒しか導入していない機械だ。

手作業で7mmに切り揃えた実を乾燥機にかけて柿チップに仕上げる。

柿チップはしっとりした食感が魅力。

富有柿は、木で完熟させてから収穫するため、色が濃いのが特徴。

柿越し、遥か向こうに見えるのが金剛山。

No image

奈良県中西部、西吉野町の中でもかなり高い位置に農園が広がる。急な斜面におよそ1000本の柿の木が植わっており、作業も楽ではない。

堀内農園
柿を中心に、南高梅、カリン、ブルーベリーなどを栽培している。柿を使ったあんぽ柿や柿チップ、南高梅やブルーベリーのコンフィチュールなど、無添加の加工品も充実している。

奈良県五條市西吉野町平沼田1432
☎0747-34-0035
●www.horiuchifarm.com

調理のコツ

ピノ・ノワール 小松 郁雄さん

地元の食材を活用する意味でも吉野の柿は昔から使っています。柿のグラタンは定番のデザートで15年以上続く人気メニューです。柿がやわらかくなるまで追熟させてから使いますが、サバイヨンソースと一緒に口に入れたとき、適度な食感と冷たさが味わえるサイズに切り出すのもポイントです。キャラメリゼした柿と柿チップの食感の違いも楽しんでほしいです。

熱々のサバイヨンソースと冷たい柿のシャーベットが、口の中でまろやかに溶け合う。

奈良県橿原市新ノ口町102-10
☎0744-29-4714
●11:30~13:30LO、18:00~22:00LO( 土、日、祝は、17:00~22:00LO)
●不定休
●www.cuisine-kingdom.com
●昼 1500円、2300円、3000円、シェフおまかせ(要予約) 4000 ~ 12000円/夜 2500円、3500円、5000円、シェフおまかせ(要予約)6000 ~ 12000円

大掛達也・文 浮田輝雄・写真

本記事は雑誌料理王国197号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は197号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

料理王国

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加