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“日本人は10言語を学ぶべき”  今、必要な新しい言語教育の「在り方」を提言

“日本人は10言語を学ぶべき” 今、必要な新しい言語教育の「在り方」を提言

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/07/22
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東京オリンピックのコミュニケーション障害

やっと東京オリンピックが開催にこぎつけそうだ。今回の開始をめぐっては、いまだに様々な議論がある。特に新型コロナウイルス感染が収まっていない中では、やむを得ないことであろう。

その混乱が原因なのか、1年間延期されたにもかかわらず、日本は、特に東京都は、準備が間に合っていないと筆者はみている。とても残念だ。日本らしい、おもてなしを見せられないのではと心配している。

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「おもてなし」を約束した2013年9月7日、ブエノスアイレスIOC総会での東京オリンピック誘致

このような、重要イベントのタイミングで世界的な感染症が広がるといった緊急事態に見舞われた場合、主催者側は、被害や混乱を最小に抑えるために情報開示などを中心にした広報体制「クライシス・コミュニケーションズ(Crisis Communication)」を用いる必要が出てくる。

東京開催が決まって間もなく、私は東京都や日本政府、オリンピック関係者に、とにかく、この「クライシス・コミュニケーションズ」を重視すべきだと主張し、協力の申し出をしたことがある。が、危機対応については、むしろ後手後手に回り続けている。日本の社会のコミュニケーション能力問題が悪い形で露呈したことになる。

さらに日本のコミュニケーションの問題ということでは、もっと根本的な課題が、以前から解決されないままでいる。日本人の外国語の能力だ。今回のオリンピックでは、この点で満足できるボランティアなどが動員されてはいる。しかし、本当に必要なのは、異文化や多文化に違和感なしで交流し、会話できる一般国民の育成なのである。

今の日本の英語教育では

残念ながら、現在の日本の英語教育では、ぼぼ不可能といえる。周知のように、受験中心の英語教育には問題が多い。結果として英語が話せず、聞き取りもできない。海外に向けて発表する論文や即興のスピーチも当然無理。なかでも発音が下手、イントネーションもダメだ。しかも、このことへの自信のなさは、生徒・学生、子供、部下たちなど次の世代にしっかりと伝わってしまっている。

日本人は、最低でも6年間英語を勉強しているにもかかわらず、英会話能力が低い。これは国内で批判されているだけでなく、国際社会からの嘲笑の対象となっている。

断っておくが、美しい日本語を話すのをやめて英語などの外国語を受け入れろと言っているのではない。日本人が外国人とコミュニケーションするには少なくとも英語が不可欠であり、最低要件であることを認識してほしいのだ。英語は実用的な言語だ。世界中で話されており、世界共通語とも言われている。

もちろん、英語がすべてではない。世界中には実に6912もの言語があるとされる。すべての言語を話すのは不可能だが、いくつかの言語と親しくなり、流暢に話すことは可能である。

外国語を学ぶことには他のメリットもある。複数の言語を比較する中で、自身が話す言葉を含めた言語の文法やその他の側面の理解が深まり、語彙が増える。そして、言語以外の観点から、他の文化や人々について学べることに意味がある。

ところが、日本の小中高及び大学における言語教育システムは、概して、生きた英語を話せるようになるという観点で失敗している。英語を学んで3年、6年、10年と経っても、本物で真剣な会話ができないことをとっても、大きな欠点だと分かる。

これには多くの理由がある。日本では繰り返して研究されてきたが、ほとんどが改善されないままだ。さらに、代案も提示されていない。

新しいスタイルの言語教育の提言

私はそこで、少なくとも、高等学校から新しいスタイルの言語教育を実施すべきと提言しており、近刊予定の『地方創生と日本の再生』(K&Kプレス)で、次のような「国際言語文化コース」と呼ばれる新しい言語教育計画を紹介している。

このコースでは、できるだけ多くの言語を紹介するため、英語以外にさらに9つの言語の9人の講師が、1年間で1つのクラスを順番に受け持つ。英語以外の9言語は、特に日本との結びつきが強い、それぞれ異なった国や地域から選ぶようにする。北海道であればロシア語、福岡県なら韓国語を含めたらいいだろう。

また、県や市町村が姉妹関係先を選定するのもよい。もしも、トルコの都市と姉妹締結していれば、トルコ語を取り入れる。あるいは、多くの外国人グループがその町に住んでいれば、そのグループの母国語を学べるようにする。例えば愛知県にはブラジル人が多いので、ポルトガル語を取り入れてみてはどうか。その自治体にタイ人やフィリピン人が多ければ、タイ語やタガログ語をカリキュラムに含めればよい。

約1カ月の間、そのネイティブスピーカーに言語と文化を教えてもらい、典型的なフレーズ、単語、文章構造や文法などを学べるようにする。言語学習の後は、筆記と会話のテストをする。そうして、次の言語に移行し、同じようにネイティブスピーカーから学ぶ。テストの結果は学期末に平均値を出すようにする。そうすることで、ある言語では成績が悪くても、ほかの言語で良い成績を残せば、生徒はそれほど苦しまずに済む。

こうしたタイプのコースを学ぶことで、生徒は各言語の違いや類似性を学ぶ。学際的かつ比較文化的、包括的に言語にアプローチすることで、生徒はどのように言語が発達し、獲得するのかを知ることができるであろう。さらには、日本語はどの国の言葉と似ている、あるいは違うのかを知り、日本語をより良く理解し、語彙を増やし、外国文化に対する理解を深めることができる。

同じ1つの学校に9人のネイティブスピーカーを置くことは、現実問題として不可能であり、また不要でもある。彼らはその市か都道府県で採用され、ローテーションで教えればよい。各学校にはコースを監督する日本人の言語教師を配置する。監督者はコースの目的を紹介し、今後、学ぶ言語の構造など包括的な概要を教え、生徒の成績を管理し、文部科学省やその他の公的機関が認定する試験を実施する。

日本がこれ以上世界で取り残されないために

このコースは高校1年で実施すべきだ。義務教育を終えた後で、コースの趣旨を理解する年齢に達しているが、新しい素材を吸収するには十分若い段階だ。さらに、それまで少なくとも3年間、英語を学んでおり、日本語以外に複数の言語を比較することができることになる。

その上で、コース修了後、生徒は何か1つの言語を選んで、高校で継続して学ぶか、それがなければ、放送大学の講座で学ぶ。放送大学であれば、講座は大学の授業レベルなので、生徒は大学の単位として修得できる。こうすることで生徒の未来のために予算と時間を節約できる。

生徒は、望めば英語を学び続けることができる。当面、9の他言語を学ぶ機会を得ることで、これまで以上に英語に戻り、学ぼうとする意欲が芽生えると確信している。英語学習の質は確実に向上するであろう。

筆者は今まで50カ国を旅してきた。ほとんどの国では、複数の言葉が使用されており、その国民は英語プラス他の言葉を流暢に喋れる。一方で、日本人は日本語しか話せない。

日本がこれ以上取り残されないためには、言語文化教育に真剣に取り組むよう政府にお願いしたい。形だけではいけない。若者はとても貴重な国家の財産であり、生産的でグローバル社会に貢献するのに必要な教育を与えなければならない。

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