「ワイヤリング(配線)」がキーワード「未来の働き方」を体現する先駆者【前編】

「ワイヤリング(配線)」がキーワード「未来の働き方」を体現する先駆者【前編】

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/05/14
No image

今回の取材での問題意識は、「組織」と「個」をつなぐ、「ワイヤリング(配線)」の存在だ。「組織」と「個」のお互いがそれぞれにもつ価値観を軸にワイヤリングする時代がくるのではないか、という仮説を立てた。

「個」の力を結集し、新しい価値創造へつなげたいと、企業は画一的なハイスペック人材の採用から、多様的な「個」を求めるダイバーシティ採用へ変化し、「個性」を事業戦略に生かそうと奔走している。だが、「個性」が十分に発揮されている企業は多くはない。

個人として「個性」を模索する、組織として「個性との関係性」を模索する。際立った「個性」をもった人がどのように組織や社会とつながるか、世界で活躍する4人に聞くなかで、多様な答えが見えてくるのではないか。

「生き様を肯定する」 私が肩書を変化し続ける理由
長谷川雅彬 アーティスト/コンサルタント

多彩な経歴をもつひとりの日本人がいる。プロ総合格闘家、投資ストラテジスト、アーティスト、コンサルタント……。それぞれに究極の専門性が求められ、ほかのプロフェッションと交わりが起きにくい職種の集合体のような肩書をもってきたのは、現在、スペインを拠点にアーティスト、コンサルタントとして活動する、長谷川雅彬だ。

長谷川は現在、創造性を高めるための講演やワークショップを、サントリー、アクサ生命保険などのグローバル企業からIEビジネススクールをはじめとした大学やビジネススクールで行っている。アーティストとしても、2018年当時、世界最大となるカリグラフィー作品(1926平方メートル)を制作したほか、世界初のアーティストとともに進化するAIアート作品を発表している。

「常に、どうしたら価値を生み出せるか。どこで最も付加価値をつくれるかを考えている」(長谷川)

長谷川のキャリアは大学時代のプロ格闘家がスタート。元日銀委員の田谷禎三との出会いがきっかけで、金融の世界へ飛び込み、投資ストラテジストに従事。当時は、フェイスブックやツイッターが台頭し始めたころ。自身もクリエイティブ側に回りたいと、スペインの現IE school of Human Science & Technologyに留学、ビジュアルメディア・コミュニケーションを学び、卒業した。

その後は、イスラエルのスタートアップでテクノロジー・エバンジェリストとして活動。しかし、多くの起業家に囲まれ、「なぜ、会社に勤めているのだろう」と疑問をもち、スペインに戻り、クリエイターとして始動。創造性に関する本を英語で執筆、自費出版し、自身の足で本屋を回った。その後、ピカソの「ゲルニカ」が飾られる本屋として有名な、ソフィア王妃芸術センターの書店での講演会で、読者からの質問により、またひとつ肩書を加えることになる。

「なぜ、あなたは、自身でアートをやらないのか?」

長谷川が大切にしてきた基準は非常にクリアだ。好きか嫌いか。必然にも近い「やりたい」という思い、他人から何と言われようと続けられるパッションを抱けるか。そしてもうひとつが、パフォーマンスを最大化できるか。それは価値の最大化をも意味する。

長谷川曰く、価値の最大化に軸を据えることは、自身からほとばしるエネルギーやパッションに忠実になるということ。すなわち、「生き様」そのものを肯定し続けることでもある。

だからこそ、価値観を共有できるパートナーや環境を正しく選ばなければならないという。重要視しているのは、相手が自分の価値を深く理解しているか否かだ。なぜなら、価値とは相手の感じ方次第だからである。つまり、大切なのは、自身という「個」と、自身が関係する組織やコミュニティがもつそれぞれの価値観とのかけ合わせによって、最も閃光を発する「配線」をつくることなのである。

「価値観を共有できるかどうか。これがすべてです」

「ドーパミンドリブン」で自分を由縁とした生き方を
青砥瑞人 DAncing Einstein代表

「新しいルネッサンス時代が始まると思います。そのときのキーワードは『自由』です」

脳神経科学を人材育成などに応用する事業などを手がける、DAncingEinstein代表、青砥瑞人は言う。イノベーション、サステナビリティ、ウェルビーイング……。いまや、企業の経営にはさまざまな命題が重くのしかかる。

いずれのコンセプトも、従前のように、働く人たちを集団ととらえ、トップダウンで人事管理していたのでは、立ち行かないものばかりだ。集団主義から個性尊重主義へ。ただ、個の重要性は語られるが、個の引き出し方や、そのかけ合わせで、その解を見いだしている企業は多くはない。

では、そのルネッサンスはどのように起きるのか。

14世紀、イタリアで起こったルネッサンスは、多様な価値観が流れ込むことで、個の勃興、個と個の交わり、そして、真の人間性への回帰という「価値の大転換」が起こった。同じことが組織で起こるとするならば、その多様な価値観の大元になるのが、個それぞれのもつ「自由」なのではないか。

「自由というのは、自分勝手というニュアンスが強いですが、実は、『自らを由え(理由)』とするというのが元の意味。つまり、人は自由になったときに、自分自身で感じ、考え、動くことが求められるんです」(青砥)

青砥はそれを、「ドーパミンドリブン」という言葉で表現する。ドーパミンは、興味関心をもつことで分泌されやすくなる神経伝達物質。つまり、内発的に何かに対してやる気を出したときに分泌され、モチベーションに寄与するものだ。

「一定の枠やルール、レールがあることは、効果・効率面からいえば、理にかなっています。しかし、そのモデルは大量生産大量消費時代のもの。それが終焉を迎えると自由度が増す方向に動き始めるのではないでしょうか」

そして青砥は次のように続ける。「脳からすると、自由度が増すのは大変になります。だから、これからは自由を嗜む生き方、自分を由縁とした生き方、そのうえでの他者とのかかわりが重要になってくるのではないでしょうか」

ただ、好奇心に耳を傾け行動する、自分を由縁とするドーパミンドリブンな生き方に日本人は慣れていない。すぐに意味や意義、目的を聞かれ、自身が思う「単に面白そうだから」「ただ、やってみたいから」という感情が押し殺されてきたからだ。

「脳は、『Use it or Lose it』の原則で成り立ちます。どんな脳の情報処理も、使われれば育まれるがそうでなければ失っていく。まずは日常のささいな自己の由縁である好奇心の発動を嗜んでみてみるのがいいかもしれません」

青砥がかかわるさまざまな企業においても、このドーパミン主導型の動きが各企業の先駆者的な一部で出てきているという。これが一部の人たちから多くの人へシフトしていった先に、自由で好奇心が主導する、新しいルネッサンス時代が待っている。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加