創業56年の“密かな人気店” 所沢の中華料理屋で「400円のラーメン」を頼んだら、常連に愛される理由がわかった!

創業56年の“密かな人気店” 所沢の中華料理屋で「400円のラーメン」を頼んだら、常連に愛される理由がわかった!

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/05/22

西武新宿線所沢駅の西口を出て、すぐ右側の「プロペ商店街」を直進。交差する昭和通りを進んで「ファルマン通り」交差点を越え、最初の路地を右に入ると、すぐ左側に真っ赤な日よけ看板が現れる。

【画像】昔ながらのラーメンは400円! 所沢の“密かな人気店”「栄華」の写真を見る

赤地に「中華料理」と白抜きされた暖簾も、「サッポロラーメン 御食事」と書かれた白地の看板も、年季の入りまくった建物自体も、すべてが昭和そのもの。

予想どおり、“アタリ”だなと感じた。これぞ、まさしくB中華。

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20年以上前から気になっていた“渋い看板”

訪れたのは、今回が初めてだ。しかし、実はもう20年以上前から気になっていたのだった。埼玉西部にある妻の実家からの帰り道に、車でファルマン通り交差点を通り過ぎる際、「中華料理」という看板がチラッと見えていたからだ。

その渋すぎる映像が頭から離れなかったため、いいかげん足を運んでみなければいけないと思い立ち、車ではなく西武線に乗って訪ねてみたのだ。

3月中旬のことである。そののち新型コロナ騒動が予想以上に大きくなり、スケジュール変更などの雑事に追われているうちに時間が経過してしまったのだった。だが、やがて緊急事態宣言が発令されたので、あのタイミングを逃していたとしたら、かなり先まで行けなかったかもしれない。

平日の午後3時に訪れてみると……

いずれにしても、二十数年も抱え込んできた思いを胸に抱いての訪問。気持ちが昂らないわけがない。

とはいえ所沢の路地裏に佇む地味な店であり、しかも平日の午後3時近くだ。昼休みを入れず通しで営業しているようだが、「開店休業状態かもしれないなぁ」と思いながら引き戸を開けた。

驚いたのは、そんな予測が見事に外れたからである。右に2つ、左に2つ、計4つあるテーブル席にはそれぞれ一人客が座っていて、つまりすべてのテーブルが埋まっていたのだ。

時代が止まったような味わい深さ

奥にはカウンター席もあるのだが、孤立した状態になる構造なので、ちょっと座るのを躊躇してしまう。どうしたものかと思いつつ、「私、出ましょうか?」と声をかけてくださった男性に「いえいえ、大丈夫です」と恐縮していたら、「相席でよろしいですか?」と奥様らしき女性から声をかけられた。

もちろん断る理由もなく、品のよさそうな70代男性が座る席に、相席させていただくことにする。

それにしても予想どおり、いや、予想以上に味わい深い店だ。壁が飴色になっていて、テーブルも椅子も使い込まれている。「時代が止まったようだ」という使い古された表現が、ここまで似合う店も珍しいのではないか。なんだか、映画にでも出てきそうだ。

お客さんは全員が常連さんだったようだが、愛される理由がなんとなくわかる。訪れる人の日常のなかに、自然な形で組み込まれているような雰囲気があるのだ。

まずはビールと餃子を注文!

しかもバスと電車を乗り継ぎ、1時間近くかけてたどり着いた結果、これまた予想外の展開となったのだった。

ビールと餃子を注文したとき、先ほどの女性から「どちらからお出かけになったんですか?」と聞かれたので「荻窪です」と答えたら、「荻窪には縁があって、いまでもよく行き来しているんですよ」という答えが返ってきたのだ。

それどころか話を進めていくと、私と共通の知人が何人かいることまで判明。「えっ、○○さんをご存知なんですか?」という、地元の人間でも知らないようなローカルな話題が飛び交うことになったのである。

もう40年以上会っていない幼馴染み(幼稚園と小学校が一緒)の話を、初めて訪れた所沢のお店の方と共有できるとは思ってもいなかった。

さらに相席させていただいた男性も「私も高校時代は国分寺乗り換えだったから中央線沿線の荻窪だ、西荻だ、高円寺だと、同級生がそのへんにいて」と加わってこられたので、入店後10分もしないうちに妙な連帯感が生まれてしまったのである。

なお、奥の厨房で調理していたご主人は、餃子が出た段階で外に出て行ってしまったため、以後は奥様、そして男性との世間話大会となった。

男性「ここはね、市長さんも来るんですよ。所沢市長も」

奥様「前からちょこちょこは見えてたんですけど、2日続けて見えたりね。食べてくださったチャーハンの写真をフェイスブックに載せてくださったり」

男性「所沢市役所まで出前に行ってるんだよね」

カリッと焼き上がった餃子でビールが進む

つい話に意識が傾いてしまったが、カリッと美しく焼き上がった餃子もなかなか。野菜がたっぷり入っているのでしつこさを感じさせず、ビールがぐいぐい進んでしまう。

現在もスーパーカブで出前をしているというご主人の東原孝さんも、奥様の初子さんも、ともに福岡の出身。お見合いで知り合ったが、「小学校は別だけど、中学校は一緒」というような距離感だったそうだ。都会に憧れていた孝さんが先に上京し、あとから初子さんも出てきた。

「(主人は)昔の田舎の言葉で“にあがりもん”ちゅうんですけど(笑)。好奇心が強くて、冒険心とかいろいろ」

方言の通じ合う仲同士、二人三脚で店を切り盛りしてきた。所沢でいちばん古い飲食店街だというこの一角にお店を開いてから、もう56年ほどになる。

ご主人は“ふらっと”どこへ?

ところで、ずいぶん前にふらっと出て行った孝さんは、どこへ行っているのだろう?

「いま、リハビリに行ってるんですよ。ちょっと転んじゃったから」

実は少し前に何度か電話をかけてみたのだが、誰も出なかったことがあったのだ。おそらく、それが転んでしまった直後だったのだろう。とはいえわずか数カ月で回復し、出前に駆け回っているのだからたいしたものである。

さて、話が盛り上がって思いのほか長居をしてしまったので、そろそろラーメンを注文することにしよう。

昔ながらのラーメンは400円。そのお味は……

それにしても驚くべきは、400円という値段だ。少し前までは350円だったという。ちなみに餃子は250円。こんなに安くて採算が取れるのかと、余計な心配をしたくなってくる。

「うちの人が上げないんですよ。うん。もう昔の値段のままできてるんで」

そんなことばからも、孝さんに対する初子さんの信頼感が窺える。なお孝さんの不在時は初子さんが調理を担当するようで、厨房に入ってからほどなくして、昔ながらのラーメンを持ってきてくださった。

ラーメンは、どこからみても昭和そのものの、昔ながらのスタイル。見た目よりもすっきりとした味わいのスープが、とくに印象的だ。よい意味で「普通」であり、だからこそ常連さんたちに信頼されてきたのだろうなと推測できる。

これを食べ終えたら、そろそろ帰らなくちゃいけないんだな……。

一抹の寂しさを感じながらスープを飲んでいたら、孝さんが戻ってきた。そこからまた、常連男性と私を含む4人での世間話になり、フェイスブックの交換やスマホでの撮影会が始まる。

ここは、とてもいい店だな。

本当に映画に登場していた!

訪れたあの日から短期間の間に、新型コロナが世の中の空気を一変させてしまったが、終息したころに改めて伺ってみたい。

なお、先ほど映画に出てきそうだと書いたが、初子さんによると、木村拓哉と二宮和也が共演した原田眞人監督作品『検察側の罪人』という映画の撮影に使われたとのこと。確認してみたら、たしかにクライマックスの場面に登場していた。

撮影=印南敦史

INFORMATION

栄華
埼玉県所沢市御幸町2-15
営業時間 11:00~22:00
定休日 不定休

餃子 250円
ラーメン 400円

(印南 敦史)

印南 敦史

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