『愛の不時着』『サイコだけど大丈夫』などヒット連発...「韓国最大のドラマスタジオ」の戦略

『愛の不時着』『サイコだけど大丈夫』などヒット連発...「韓国最大のドラマスタジオ」の戦略

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/21
No image

“ドラマ界の恐竜”――。韓国で人々は、「スタジオドラゴン」をこう呼ぶ。スタジオドラゴンは、今年日本で韓国ドラマブーム再燃をけん引した『愛の不時着』はじめ、『キム秘書はいったいなぜ』『サイコだけど大丈夫』『青春の記録』など、次々と人気作をNetflixで配信したドラマ制作会社だ。

設立は2016年。わずか2年後には、イ・ビョンホン主演の『ミスター・サンシャイン』で韓国のドラマ視聴の主軸であるケーブルテレビとNetflixでの同時配信にいち早く乗り出し、「ドラマを観るスタイル」を変えた先駆者だ。

韓国ドラマの制作・視聴の形を変えた秘策とは。スタジオドラゴンの担当者に聞いた。

日本での「不時着人気」は予想を超えた

No image

『愛の不時着』より

――日本での「愛の不時着」ブームは予想されましたか? 日本での人気の理由は何だと思いますか。

スタジオドラゴンの担当者(以下、SD):世界中の視聴者が、北朝鮮の男性と韓国の女性の愛というドラマのテーマと、人気俳優ソン・イェジンとヒョンビンに関心と愛情を寄せてくれました。個性あふれる登場人物たちのキャラクターも魅力的で、一つひとつのエピソードが際立つストーリーラインも一役買ったと思います。なかでも日本の人気は、予想を超えるものでした。日本の視聴者には主人公の切ないラブストーリーが響いたのではないでしょうか。

――ドラマのストーリーを作る時、一番大事に思う要素は何でしょうか?

SD:序盤から最後まで視聴者を魅了し続けるしっかりとしたストーリーライン。とりわけ、新鮮かつ視聴者の共感を得ることができるテーマと構成、登場人物のキャラクターに重点を置いています。

いまは「複合ジャンル」がトレンド

No image

『サイコだけど大丈夫』より

――韓国では今、いわゆる王道のラブストーリーが以前より少なくなったように思うのですが、なぜでしょうか? また、いまの韓国ドラマのトレンドについて教えてください。

SD:おっしゃるとおり、最近の韓国ドラマでは、王道のラブストーリーはそれほど多くありません。理由を一言で説明するのは難しいのですが、リメイク、学園ドラマ、ファンタジーなど、視聴者に愛されるジャンルには流行の波があります。でも、だからといって王道のラブストーリーが完全に人気を失うわけはありません。

今トレンドとなっているのは、『サイコだけど大丈夫』の「恋愛+スリラー」のような複合ジャンル。『悪の花(原題)』『秘密の森』などのサスペンスや、『青春の記録』のような青春ドラマも好評です。

No image

『青春の記録』より

Netflixといち早く組んだ理由

――韓国ではスタジオドラゴンの親会社であるCJ ENMが7〜8年前頃から自社のケーブルテレビ局に優秀なディレクターや作家を地上波から引き抜き、人気ドラマはケーブルテレビで生まれるようになりました。その流れの中で、御社は2018年からケーブルテレビとNetflixでドラマの同時配信をいち早く始めていますね。ドラマの動画配信に積極的に進出しようと思ったきっかけを教えてください。

SD:スタジオドラゴンは、知的財産であるコンテンツを保有するスタジオ事業者として、従来のように放送チャンネルを限定せず、オープンプラットフォーム戦略をとっています。2018年は、グローバルストリーミングサービスがアメリカやヨーロッパからアジアに拡大してきた時期でしたし、スタジオドラゴンにとっては、アメリカなどの海外市場に直接進出しなくてもインターネットを通じてコンテンツを世界に広く披露できるというメリットがありました。

また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、動画配信サービスの利用者がさらに増えたことも、ドラマをNetflixで視聴する形が進む追い風になりました。

――動画配信サービスが色々ある中で、Netflixの可能性をどのように捉えていますか。

SD:Netflixはグローバルなプラットフォームで、約190カ国で視聴されています。 スタジオドラゴンのコンテンツをNetflixのプラットフォームを通じて世界の視聴者に公開するのは、非常に魅力的です。 Netflixは韓国で最も勢いのあるグローバルサービスの一つで、オリジナルコンテンツも積極的に作っています。Netflixを中心に、プラットフォーム競争は今後さらに激しさを増していくと予想しています。

――韓国の地上波向けドラマと動画配信のドラマでは、ターゲット層やストーリーにどのような違いがありますか。

SD:放送よりも動画配信のほうが少し自由です。フォーマット、テーマ、登場人物の設定や物語などの面で様々な試みが可能で、韓国では審議プロセスも異なります。そしてなんといっても、動画配信は視聴者層が若いですね。

No image

ナイフで刺すシーンなどは韓国の地上波では難しい/『サイコだけど大丈夫』より

「韓国らしさ」は意識していない

――世界への配信を前提としたドラマを作る際に、心がけていることを教えてください。例えば、「韓国らしさ」は意識しますか。

SD:韓国で人気を博した弊社のドラマ『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』を、アメリカの制作会社スカイダンス・メディアとともにアメリカのテレビシリーズとして共同制作するために、現在企画開発に取り組んでいるところです。

『ホテルデルーナ』がスカイダンスとの初の共同制作プロジェクトに選ばれたのは、人間の生き方、失われた愛などを描いた華やかなビジュアルファンタジーだという点が評価されたためでした。テーマが普遍的か韓国的かは意識していません。多くの人々の共感を得られるか、テーマかいかに新鮮かを大事にしています。

作家を発掘し育成する驚異のシステム

――スタジオドラゴンは、新人作家を発掘し、新しいクリエイターが活躍する機会を提供することで知られています。どのように作家を発掘し、ドラマの素材を拡大しているのか。具体的なシステムを教えてください。

SD:新人作家を発掘·育成する創作者支援事業「O'PEN」を、親会社のCJ ENMと数年間続けています。「O’PEN」は、脚本家(pen)を夢見る人たちに開かれた(open)創作空間と機会 (opportunity)を提供するという意味の造語です。

この事業では、脚本を公募し、最終的に選抜された作家たちに創作支援金や国内有数の演出家による人材育成を行うとともに、専門家の特別講義や刑務所、消防署、国立科学捜査研究院などの現場取材支援を行っています。夢を叶えるための拠点として、ソウル市内に個人共同執筆室を備えた空間「O'PENセンター」を運営。作家たちが完全に創作に集中できる環境をサポートしています。

また、作品のプレゼンテーションやビジネス・マッチングイベントを毎年開催し、作品を業界関係者に披露する場も設けています。創作物に対するすべての著作権はクリエイターに帰属。CJ ENMやスタジオドラゴンとの契約義務もありません。O'PEN事業から誕生したクリエイターたちは、様々なプラットフォームでデビューに成功し、幅広い活動を続けています。ドラマ産業そのもののための新人作家発掘という点で特別なシステムだと考えています。

全世界が夢中になるドラマをつくりたい

No image

『愛の不時着』より

――スタジオドラゴンが制作するドラマの最大の強みとは何だと思いますか。

SD:まず、スタジオドラゴンが、コンテンツの企画・開発から資金調達、プロデュースなどの流通、その後のビジネスに至るまで、すべての過程を手がける韓国最大規模のドラマスタジオである、ということでしょうか。226人のクリエイターを擁し、形式にとらわれずに多彩な挑戦ができるという点も大きな強みです。

また、2016年の設立から一貫してグローバル市場への進出を目標に事業を進めています。海外では今後、共同制作からさらに踏み込み、現地での自主企画・制作も行う計画で、我々とコラボレーションする作家、監督、俳優、プロデューサー、スタッフなどが世界に進出できる最高の機会になることを願っています。

――今後挑戦してみたいことを教えてください。

SD:全世界の人々が共感し夢中になれるインターナショナル・ドラマを制作すること。 また、私たちが保有する知的財産であるコンテンツを活用し、様々なワンソース・マルチユース事業を発展させていきたいと思っています。

Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』『サイコだけど大丈夫』『青春の記録』はNetflixにおいて独占配信中。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加