今月、長崎市で開かれた『ドローンサミット』では“空飛ぶクルマ”や、長崎から五島まで荷物を運ぶ機体など、さまざまなドローンが紹介されました。
【写真を見る】最新 “海のドローン” 深海6000mまで航行!10機が連携して迅速な海底測量!レアアース探査でも期待【長崎NEXTスタイル】
その中でも注目を集めていたのが、海上や水中で活躍する“海のドローン”です。
今回は海岸線が長い長崎での活用が期待される”海のドローン”を取材しました。
音波で制御し 水中構造物の劣化検査や藻場を観察
設定された水中ルートを進む“海のドローン”
音波で繋がり、漁礁や藻場を観察します。
長崎大学副学長・大学院工学研究科(ロボット工学専門)山本 郁夫教授:
「“海のドローン”っていうと、この水中ロボットですね。
カメラを付けていまして、海の中の構造物の劣化具合を検査したりですね。
流れがあっても、プロペラの制御でコントロールして、絶えず一定位置にとどまるように制御できます」
海水をサンプリングし 赤潮発生をいち早く察知
長崎大学の山本教授は38年前から“海のドローン”の研究を続けています。
このうち「赤潮調査ロボット」は、国と大学の共同研究で6年前に開発されました。
容器で海水を採り、それを分析することで、わずか15分で赤潮が発生しているかどうかが分かります。
“海のドローン”は、海洋資源が豊富な長崎での活躍が期待されています。
長崎大学副学長・大学院工学研究科(ロボット工学専門)山本 郁夫教授:
「海に面していますし、海岸線も長く、それから海の産業…養殖、水産、洋上風力とか、様々な海の産業がありますので、ドローンの活躍する舞台というのは非常に大きいと思います」
海中自律ドローンの情報を“音波”で受信 衛星中継する無人船
先日開かれた“海のドローン”の最新技術を紹介する講演会には、県内外からおよそ300人が参加しました。
長崎大学副学長・大学院工学研究科(ロボット工学専門)山本 郁夫教授:
「(海のドローンは)空とリンクして、人類の経済活動の拡大につながっております」
講演会で紹介されたのは、海中のドローンを見守る“海と空をつなぐ船”です。
SIP海洋統括プロジェクトチーム 松本 宙 特任技術主任:
「態勢できたので、よーい、てい!」
予め決めたルートに従って動く無人船『かいくう』
連続5日間、時速10キロまでの速さで走ることができます。
SIP海洋統括プロジェクトチーム 松本 宙 特任技術主任:
「『かいくう』は、海中にいる自律型無人探査機の“おもり”をする無人中継機になります」
「かいくう」は、海中ドローンからの位置情報を“音波”で受け取り、“電波”で衛星に送り、地上に届けます。
SIP海洋統括プロジェクトチーム 松本 宙 特任技術主任:
「今はWi‐Fiを使っているんですけど、Wi‐Fiがない場所=地球上の海のどこでも使えるようになっていますので、“衛星アンテナ”を使っています」
精密なGPS情報を使い 迅速な海底測量が可能に
精度が高い海底の地形や地層のデータや画像を得るためには、正確な位置で情報を集める必要があります。
SIP海洋統括プロジェクトチーム 松本 宙 特任技術主任:
「海底の地形調査をする場合に、10センチ、1メートルずれると測量がずれてしまいますので、そういった繊細な調査をするためには、正しいGPS位置情報を海中に伝える必要もあるんですけど、そういう役目も果たしています」
『かいくう』は、複数の水中ドローンの位置を同時に見守ることもできます。
それぞれのドローンは互いに連携し列を崩さず動くため、広い範囲の海底データを正確に一気に集めることができます。
今後、最大10機での運用を目指しています。
長崎大学 山本 郁夫副学長(工学部教授):
「やっぱり複数で動くと、たくさんのデータを群で取ることによって、比較的短時間で様々なデータを、広い面積をカバーできるということで、メリットがあると思います」
水深6000mまで潜水可能 レアアース採掘をサポート
また、これまで日本では不可能だった水深6000メートルまで潜り、深海の地形や地層データなどを調査できる“海のドローン”が、日本に導入されました。
海底に眠る希少金属“レアアース”の採掘につなげようと、日本がアメリカからおよそ10億円かけて購入。
今年夏、レアアースがあるとされる東京の南鳥島沖の海底データを得ることに成功しました。
高解像度・高精度のデータで、レアアース採掘の作業効率アップにつながりそうです。
内閣府 SIP海洋プログラムディレクター 石井 正一さん:
「(深海は)暗い暗黒の世界。その暗黒の世界にレアアースだとか、たくさんの海洋鉱物資源が眠っている訳です。
新しい世界を“海の見える化”の中で、“海のドローン”を使って作り上げていくことができるんじゃないかと」
長崎大学 山本 郁夫副学長(工学部教授):
「先進技術を取り入れて“海のドローン”の機能を強化しております。
“海のドローン”の産業化と、海の活用がどんどん連動して、長崎がさらに発展していくと思います」
今後、実用化を目指している“海のドローン”
海の環境調査や海底地盤調査などが進み、長崎の海の産業の活性化に繋がることが期待されています。