自殺した人の遺体が消えたと思ったら...猟師が実名で語る「山の怪異体験」

自殺した人の遺体が消えたと思ったら...猟師が実名で語る「山の怪異体験」

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/02/21

日本は至るところに山神信仰がある山国であり、そして怪体験をする人たちがいる。

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熊猟を生業とした伝説の集団「マタギ」をはじめとして、各地の猟師などに怪体験を聞いた実話集シリーズ『山怪 山人が語る不思議な話』(田中康弘著、山と溪谷社)は、累計25万部を超えた。

これを原作として、独特の墨絵で描いた漫画『山怪 参 死者の微笑み』(原作・田中康弘、漫画・五十嵐晃、リイド社)にも、怪体験が綴られる。

突然、笑い声が聞こえたり、叫び声が聞こえたり...

山形県の羽黒山・湯殿山・月山は総称して「出羽三山」と呼ばれ、古くから信仰を集める修験の場となり、日本遺産に認定された。猟師にとっては大切な猟場でもあった。

マタギ発祥の地である秋田県の阿仁町(現・北秋田市)では、「揚げ物を山に持ち込んではいけない」と言われてきた。逆に出羽三山では、山の中でキツネに化かされないように、稲荷大明神の眷属(けんぞく=従者)であるキツネに油揚げをお供えし、手を合わせる。

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山怪 参 死者の微笑み」(リイド社)より

山奥の猟場では、時々人の話し声が聞こえる。突然、笑い声が聞こえたり、叫び声が聞こえたり、誰かの名を呼ぶ声がする。しかし人の姿は見えない。

昔から「キツネに鉄砲を向けるな」と言われてきた。仕留めたキツネを引きずって持ち帰ったところ、道中の家がすべて火事で燃えたこともある。

六十里越街道の宿場として栄えた田麦俣(たむぎまた)地区では、ある晩、街道沿いに明かりの列がずらりと並んだ。1人、2人と、集落の人たちがそれを眺めるために外に出たが、明かりの列が近付いてくる気配はなかった。おかしいと思い、家に戻ると、食卓の上の食べ物がほぼなくなっていた。(「出羽三山」より)

田麦俣地区は雪深く、内部が4層になった多層民家で知られている。ここに住む鷹匠の周りでも、不思議な体験がいくつも起こっている。

“キツネのせいだ”と考える住民も

友人たちで山へ入り、沢の堰堤(ダムより小さい堤防)で釣りをはじめた時のこと。皆が気持ちよく釣り糸を垂れてのんびりしていると、急に、空気が変わった。日が陰ったわけでも、森から冷気が吹き出たわけでもなかった。皆がゾクゾクする感覚に捕らわれ、そして川の向こうに現れたのが女だった。大きく目を見開き、口を開け、頭を振りながらあえぐように向かってきた。皆が一斉に声を上げて逃げ出した。(「鷹匠の体験 その三」より)

山間部の小さな集落では飲み屋がなく、男たちは、各家を回りながらハシゴ酒をする。

ある時、酒を飲んだ男が行方不明になり、皆が大騒ぎして捜すと、集落外れの溜め池に落ちていたことがあった。幸い、男は生きていたが、引き上げた住民たちは男の顔を見て驚いた。口紅を塗られ、口元が真っ赤に染まっていたからだ。

また、ある女は、真夜中に話し声が聞こえて起きた。泥酔した夫が帰宅し、また飲みに行くのかと思って見に行ったが、夫の姿は無かった。夫の履き物はそのままだったが、玄関脇の花壇の花がほとんど根っこから引き抜かれていた。

夫は朝になっても帰らなかった。集落中が大騒ぎして捜すと、代掻き(しろかき=田植え前の水入れ)した自分の田んぼの中でうつぶせになり、亡くなっていた。寝間着のまま、素足で、その手には花壇の花がぎっしりと握られていた。

泥酔すれば信じがたい行動に出ることもあるが、“キツネのせいだ”と考える住民もいる。(「迎えに来る者」より)

自殺したはずの人の死体が消えていた

山の奥では人が消えることもある。

1300年代の南北朝時代、後醍醐天皇が南朝を開いたときから、奈良県の吉野町は狩猟が盛んな地でもあった。

猟師がある時、犬を連れて仲間と巻き狩りに出ると、しばらくして人影が見えた。嫌な感じがして、数メートルまで近づいて足が止まった。山の斜面に、座り込んだまま動かない人の姿だった。

自殺だと判断して山を降り、警察官や仲間と共に再び山へ入ったが、死体は消えていた。あれだけ近づいて見間違えるはずはなかった。違法な罠を仕掛けて隠れていた人の可能性はある。しかしそうであれば痕跡は必ず残るが、何も無かった。(「奈良県山中・吉野町」より)

ツチノコが飛び跳ねる姿を見た人が何人も

次の話は近年の出来事であるため、名前も場所も伏せられている。

秋が深まった東北地方で、2人の男性がキノコ狩りに出かけた。早朝に山に着き、林道に車を停め、沢を渡った。日帰りの予定だったが、2人は戻らなかった。家族の連絡により、地元警察と猟師が翌日1日かけて捜索した。車はすぐに見つかったが、2人を捜し出すことはできなかった。以降、人数を増やして捜索したがダメだった。やがて雪が積もり、捜索は不可能になった。それから数年過ぎたが2人は消えたままだ。

捜索に加わった猟師は不思議がる。遭難して亡くなり、雪に埋もれれば、春先に下流まで流される可能性はあるが、靴やビニール製のカゴは腐らずに残る。すべて流されることは考えにくい。まして2人もいたのだ。しかし何の痕跡も見つかっていない。(「帰らない人」より)

新潟県の入広瀬村(現・魚沼市)は、阿仁マタギの狩猟文化が残る地である。

ある民宿では、客に供するイワナを飼う池があった。ある時、お婆さんが池の周りでツチノコを見た。丸々として、ビール瓶に尻尾が生えた感じだったという。お婆さんの叫び声を聞いて息子が外に出た時には、ツチノコは側溝に逃げ込んで見えなくなっていた。

周辺では、ツチノコが飛び跳ねる姿を見た人が何人もいる。ツチノコは地元で「土マムシ」と呼ばれている。

ヘビが獲物を丸呑みした姿である、とその存在を否定する人もいる。しかし獲物を丸呑みしたヘビが飛び跳ねたり、俊敏に逃げたりできるだろうか……。(「ツチノコは跳びはねる」より)

ヘビを殺して祟られ、ヘビのように這うようになってしまった

長野県の川上村は、群馬・埼玉・山梨と境を接している高所にあり、冬は零下20度を下回る。

山中には「よばり沢」と呼ばれる場所がある。迷い込むと、右へ曲がらなければいけないのに左へ行ってしまったり、遠くで自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。

この山岳地帯では、ニホンオオカミが今も生息していると信じる人たちがいる。

(ニホンオオカミは1905年に奈良県で捕獲されたのを最後に絶滅したとされる)

ここではニホンオオカミを「山犬様」と呼び、そのお産が近いと山へ入って赤飯を供えたり、山犬様の子供が欲しくて、雌犬を山中にしばらく繋いでいるという。

秩父の三峯神社には、ニホンオオカミの毛皮が保存されている。(「山から出られない」より)

墨絵を描いた画家の五十嵐晃氏は、出羽三山が連なる山形県鶴岡市出身だ。

「昔、近所のおじさんがヘビを殺して祟られ、ヘビのように這うようになってしまい、出羽三山の行者を呼んでお祓いしてもらったことを覚えています。

私は子供の頃、アメを喉に詰まらせて意識が遠のいた時、見上げるほど大きくて、金色に輝く観音様が出てきました。『帰りなさい』と言われ、金色の木馬に乗って帰り、助かったのです。

怪現象は、皆に見えるわけでも、皆が同じ体験をするわけでもありませんが、誰にでも、いつか目の前に現れる可能性があると思います」

(坂田 拓也)

坂田 拓也

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