CEO電撃解任で話題のOpenAIに対抗?イーロン・マスクがAI「Grok」をリリースした狙い

CEO電撃解任で話題のOpenAIに対抗?イーロン・マスクがAI「Grok」をリリースした狙い

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  • 更新日:2023/11/21
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AIの急速な進化は、2023年の最も大きなトピックの一つと言えるものだったのではないでしょうか。その進化を牽引し、先ごろサム・アルトマンCEOが電撃解任されたことでも話題の「OpenAI」に巨額の出資をしていたイーロン・マスク氏が、自らxAIを立ち上げ「Grok」という名のAIを限定リリースしたそうです。このニュースを取り上げるのは、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さん。マスク氏がAI開発に乗り出した理由を分析し、先行するOpenAIのGPT3/4やMetaのLlamaにxAIの「Grok」がどう対抗しようとしているのか探っています。

私の目に止まった記事:Elon Muskが作ったAIスタートアップxAIが、「Grok」という名前のAIを限定リリース

Elon Musk Announces Grok, a ‘Rebellious’ AI With Few Guardrails

Elon Muskが作ったAIスタートアップ、xAIが、Grokという名前のAI(ChatGPTと同じくLLM)を限定リリースしたことを報じているWiredの記事です。

この記事によると、AI人材の採用を6月にスタートし、開発はわずか2ヶ月で行ったそうです。現時点では、招待制なので、誰もがアクセスできるわけではありませんが、徐々にユーザーによる評価が増えてくると思います(私もWaitlistに登録しました)。

xAIが独立したベンチャー企業なのか、X(旧Twitter)の一部なのかは明確ではありませんが、Xの有料会員は誰でもアクセス出来るようにする、とのことなので、Xと深い関係にあることだけは確かなようです。Elon Muskは、以前から、SpaceXのエンジニアに、Teslaが必要な合金を作らせたりとか、会社を跨いだ人材やリソースの使い方をしているので、今回のその辺りは曖昧です。

Elon Muskは、非営利法人として人類全体のために人工知能を開発するOpenAIに巨額の出資をしましたが、OpenAIがMicrosoftの投資を受けて営利法人に変わってから(正確には、非営利団体は大株主として存続)は関係が悪くなっており、xAIの設立は、その関係した悪化に対するElon Muskの回答です。

OpenAIが成し得なかった「非営利法人として人類全体のために人工知能を開発する団体」なのかも知れませんが、単に、OpenAIの行動が気に入らないから、それに対抗する会社を作っただけ、とも解釈できます。

多くのLLMは、X(当時はTwitter)が提供するAPIを活用して集めたデータを機械学習に活用していることが知られていますが、それを嫌ったXがAPIを閉じて以来、X上の最新データをLLMの学習には応用できなくなっています。Elon Muskは、xAIのみにXのデータを開放することにより、それをxAIの差別化要因にしようとしています。

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ちなみに、LLMは、OpenAIが提供するGPT3/4、Googleが提供するPalm2、Metaが提供するLlamaが現時点では、三大巨頭で、それを、Anthropic、Cohere、Inflection AIなどのベンチャー企業が作ったLLMが追いかける形になっています。しかし、現時点では、クローズドなものとしては、GPT3/4が、オープンなものとしては、Llamaが圧倒的な存在感を持っており、その二つに対抗するのは簡単ではありません。

LLMを作るには莫大なコストがかかるため、作れるのはGoogleやMetaのような巨大IT企業と、巨額な資金を集めることが出来た、メガベンチャーのみです。

まさに「LLM戦国時代」と表現して良い状態です。xAIは、少なくとも資金力・技術力・マーケティング能力に関しては、メガベンチャーですら羨む力を持っていますが、そんな中でGrokがどんな役割を果たせるのかは、現時点では不明です。
(『週刊 Life is beautiful』2023年11月14日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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image by:rafapress/Shutterstock.com

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