日大背任事件後も沈黙したまま、君臨する田中理事長に疑問の声 自宅に現金2億円「ごっちゃん」体質

日大背任事件後も沈黙したまま、君臨する田中理事長に疑問の声 自宅に現金2億円「ごっちゃん」体質

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  • 更新日:2021/11/25
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日大出身力士らへの化粧まわし贈呈式で記念撮影する田中英寿理事長(前列左)、理事の井ノ口忠男被告(後列右)と隣は医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳被告(日大ホームページより)

日本大学板橋病院をめぐる背任事件で、東京地検特捜部は4億円あまりの損害を与えた、日大元理事・井ノ口忠男(64)と大阪の医療法人「錦秀会」(大阪市)の前理事長、籔本雅巳(61)の両被告を背任罪で追起訴した。だが、大学のトップである田中英寿理事長は未だに沈黙している。公共性の高い大学で起こった背任事件だけに説明責任を果たすべきだと疑問の声が上がっている。

【写真】田中理事長に寵愛された日大OBの人気力士はこちら19日夜、保釈された井ノ口被告は保釈金4千万円、籔本被告は8千万円を支払い、条件として多数の事件関係者と接触が禁止されたもようだ。

今後の捜査の焦点は、両被告から田中理事長に渡ったとされる約7千万円の現金だ。

朝日新聞(11月14日配信)によると、井ノ口被告は東京地検特捜部の調べに対し、薮本被告と相談し、逮捕容疑となった取引の「お礼」の趣旨で、田中理事長や田中氏の妻に総額7千万円を渡したと供述。田中氏は受領を否定しているが、このうち1千万円についてはお札を束ねた銀行の帯封が田中氏の自宅から見つかったという。

「田中理事長の最側近だった井ノ口被告は理事長からの”天の声”で動いたとは、一貫して認めず、籔本被告も田中理事長に現金を渡したことは認めるも、賄賂性は否認。趣旨はビジネス上の謝礼と主張したことで、田中理事長の立件は見送られた」(捜査関係者)

東京地検特捜部の捜査で背任の「被害者」に位置づけられている日大は6日、ホームページで「損害を被ったという事実関係が不明であり、被害届の提出は保留する」と発表している。

だが、東京地検特捜部は、2度に渡って田中理事長の自宅、妻が経営するちゃんこ料理店などを家宅捜索。現金約2億円超が自宅にあったことも明らかになった。東京地検特捜部は2億円についていた札束の「帯封」などを押収したと相次いで報じられた。

「田中理事長が2人から現金で受け取ったとされる約7千万円は申告漏れではなく、所得隠しの疑いがある」(前出の関係者)

日大相撲部OBはこう振り返る。

「田中理事長は、日大からの報酬以外は銀行口座を使わない人です。なんでも現金ですね。とりわけ、大相撲の人気力士、遠藤の騒動以降は現ナマ主義に徹していた」

日大相撲部出身の遠藤は、田中理事長にとって大事なOBだ。遠藤が活躍し、人気がでると、「藤の会」という後援会が結成された。2014年5月に都内のホテルで開催された「藤の会発足会」で発起人会長として壇上にあがったのが、籔本被告だった。井ノ口被告も発起人として名前を連ねる。

「遠藤の後援会が発足し、たくさんのOBや支援者からカンパをしたいと、申し出があった。その時、日大相撲部の銀行口座を使った。すると、あっという間に億単位のカンパが集まった。おまけに相撲部の会計とごちゃ混ぜになり大混乱。そこに、税務当局が目をつけて、厳しく調べられた。『銀行口座を使うから、こんなことになる』と田中理事長はえらく立腹していたそうです」(前出・日大相撲部OB)

田中理事長の妻が経営するちゃんこ料理店では、日大関係者だけでなく業者なども顔を出していたという。

「ちゃんこ店で”闇の理事会”が開かれることもありました。田中理事長の財布にはいつも100万円の札束が1つ、2つと入っており、相撲部のOBの力士らがくると『メシでも食ってこい』と現金をポンポン、配っていく。それを『ありがとうございます』『ごっちゃんです』ともらう。普通の学校法人ではありえない光景。そういう積み重ねが、今回の事件となったんだろう」(前出の相撲部OB)

田中理事長を巡っては、常務理事時代の2007年にも、日大発注の工事業者からリベート約500万円を受け取っていた疑惑が読売新聞(2013年2月2日付)で報じられた。

日大は、事態を重く見て「第三者委員会」を立ち上げて真相解明にあたった。この時も「中間報告」では<田中常務理事が芸術学部江古田キャンパス工事に関し、電気工事業者から、指名・発注に対する謝礼として金を受け取ったという極めて濃厚な疑いが残る>と記載されている。

第三者委員会関係者はこう振り返る。

「田中理事長は当時、現金は受け取っていないと強硬に主張していた。いろいろな大学関係者、業者、田中理事長が関係する弁護士からも話を聞いたが誰もが口が重く、調査がスムーズにいかなかった。業者が払った金が受注の謝礼であるのか否かが大事なポイントだったが、そこに切り込むとますます喋らなくなった。田中理事長の強大な力を感じた」

今回も田中理事長は井ノ口被告、籔本被告からの現金授受について、「カネには不自由していないので、クロになるカネはいらない」などと東京地検特捜部に反論したという。

日大は幼稚園から大学院まで、10万人の在校生がいる。卒業生は100万人ともいわれ、日本最大のマンモス学校法人でまたもトップである田中理事長の疑惑。国から日大への補助金は昨年度、約90億円が交付された。だが、背任事件で今年は保留されており、学校経営にも影響を与えかねない。日大広報部に取材を申し込んだところ、以下の回答があった。

「理事長の両事件への関与はないものと認識しています。両被告からの現金授受の事実はないものと認識しています。(家宅捜索の際、理事長宅から見つかった現金は)適正に税務申告していると聞いています」

元東京地検特捜部の落合洋司弁護士はこう指摘する。

「背任や贈収賄で狙ったが共犯関係の立証ができないことはよくある。だが、今回の事件では田中理事長へカネが渡ったことは認めているとされ、特捜部は国税庁への課税通報を詰めていくでしょう。そして、2人の公判でも、徹底的に田中理事長へのカネの流れを追及するのではないか。学校法人で背任事件というのは、コンプライアンス的にアウト。理事長は説明責任がある」

(AERAdot.編集部 今西憲之)

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