脳内でイメージを思い描くことができない「アファンタジア」とそうでない人の記憶力はどう違うのか?

脳内でイメージを思い描くことができない「アファンタジア」とそうでない人の記憶力はどう違うのか?

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  • 更新日:2021/01/14
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ほとんどの人は「犬を想像してください」と言われれば、頭の中に犬の姿を画像として思い浮かべることができます。ところが、アファンタジアと呼ばれる一部の人々は犬が持つ特徴を言葉で説明することはできても、脳内に犬の姿を画像として思い描くことができません。脳内で視覚的なイメージを思い浮かべることができないアファンタジアの記憶力について、「写真で見た光景を記憶を頼りに絵に起こす」という実験を行った結果が報告されています。

Quantifying aphantasia through drawing: Those without visual imagery show deficits in object but not spatial memory - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0010945220304317

Can’t draw a mental picture? Aphantasia causes blind spots in the mind’s eye | University of Chicago News

https://news.uchicago.edu/story/cant-draw-mental-picture-aphantasia-causes-blind-spots-minds-eye

People With This Rare Brain Condition Can't 'Count Sheep' in Their Mind

https://www.sciencealert.com/people-with-aphantasia-can-t-visualise-sheep-jumping-over-a-fence

脳内で視覚的なイメージを思い描くことができない人々の存在については古くから知られており、1880年にイギリスの学者であるフランシス・ゴルトンによって初めて医学文献で説明されました。アファンタジアと名付けられたこれらの人々は、寝付けない時に羊を数えようとしても羊の姿を思い浮かべることができず、先ほど会った人の姿もイメージできないとのこと。そのため、アファンタジアは過去の体験や見た光景をイメージとしてではなく、言葉による説明として記憶しています。

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頭の中で人物や風景を思い描くことができない「Aphantasia(アファンタジア)」とは? - GIGAZINE

ByAlice Popkorn

アファンタジアに関する本格的な研究は近年になってようやく始まった段階ですが、生まれつきの先天的なアファンタジアもいれば、頭部の外傷やうつ病などをきっかけに脳内のイメージを失う後天的なアファンタジアもいるそうです。先天的なアファンタジアは大人になるまで自分が特殊なタイプだと気づかないケースもあり、一説によると50人に1人がアファンタジアではないかともいわれています。

シカゴ大学でアファンタジアについて研究するウィルマ・ベインブリッジ助教授の研究チームは、アファンタジアの人々が持つ記憶力を調査するため、61人のアファンタジアと52人の対照群を対象に実験を行いました。研究チームは「部屋を映した写真を見て2枚の絵を描く」というタスクを被験者に与え、1枚は記憶を頼りに描かせて、もう1枚は写真を見ながら描かせたとのこと。描いた写真がどれほど正確に写真を再現したのかは、オンラインで募集した約2800人のスコアラーによって客観的に評価されました。

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記憶を頼りに描いた場合、脳内でイメージを想像できる対照群は、部屋の中で最も目立つ家具の色やデザインに注目して描く傾向がありました。一方、アファンタジアの人々は部屋にあった家具をいくつか描くことはできたものの、対照群と比較して絵が単純であり、塗られる色の数も少なかったとのこと。また、詳しい家具の特徴を描く代わりに「window(窓)」「bed(ベッド)」といった単語を書き込むアファンタジアもいたそうです。

しかし、家具の配置といった空間的な精度は2つのグループで同等でした。むしろ、絵の間違いはアファンタジアが3件だったのに対し、対照群では、自分がこれまでに見たことがある部屋の記憶と混同するのか、実験に用いられた部屋には存在しない家具を描いている事例が14件あり、中には存在しなかったピアノを描いた被験者もいました。

ベインブリッジ氏はアファンタジアにおける記憶のミスが少なかった理由について、アファンタジアが「言語的な空間のコーディング」といった、典型的な人と違う戦略に依存していることが理由かもしれないと指摘。視覚的なイメージではなく言葉などに頼る戦略により、記憶違いが生じにくい可能性があるとベインブリッジ氏は示唆しています。

なお、写真を見ながら絵を描いた場合、アファンタジアと対照群で有意なスコアの違いはありませんでした。このことから、研究チームはアファンタジアとそうではない人との違いについて、芸術的な能力や努力、知覚処理に起因するものではなく、記憶に関した限られたものであると述べています。実際に、アファンタジアは芸術的な能力について、対照群と同レベルの自信を持っていたとのことです。

研究チームは、「アファンタジアの人々は画像・記憶・知覚の本質に必要不可欠な洞察を与える、ユニークな精神的経験を持っています。アファンタジアによって描かれた絵は、物体の記憶が損なわれた複雑で微妙なストーリーを明らかにしますが、現実世界の光景を想起する際の言語記憶と空間記憶は無傷だと示しています」と述べました。

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