「代役は久保建英が相応しい」スペイン人戦術アナリストがライバルFWよりもスタメンに推す理由とは?【現地発】

「代役は久保建英が相応しい」スペイン人戦術アナリストがライバルFWよりもスタメンに推す理由とは?【現地発】

  • サッカーダイジェストWeb
  • 更新日:2020/10/16
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開幕5試合はいずれもベンチスタートとなっている久保。」(C) Rafa HUERTA

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ジェラールの代役を務めるのは久保かチュクウェゼ(右)か。(C)Getty Images

今シーズン序盤、ビジャレアルにとってターニングポイントとなった試合が、ラ・リーガ第3節のバルセロナ戦だった。開幕以来、4-4-2を採用していたウナイ・エメリ監督は、0-4という大量リードを許すなか、後半開始からシステムを4-1-4-1に転換。それまでダブルボランチが基本だった中盤の並びも、ビセンテ・イボーラを底に左にダニエル・パレホ、右にマヌ・トリゲロスを配置するという実質、トリボーテの形を取った。

そんな劣勢を強いられる展開のなか、久保建英は後半のラスト15分ほど出場。勝敗が決し、チームの士気が上がらない状況下でもボールを持てば積極的な仕掛けを見せ、改めてクオリティーの高さを示した。

しかし、このアピールは実ることはなかった。エメリ監督が次節のアラベス戦以降、4-1-4-1を継続して採用。中盤の枚数が1枚増えた分、久保が主戦場とするポジションの定位置争いはさらに熾烈となり、スタメン出場の可能性はさらに遠のいた感すらあった。エメリ監督は現在の久保の状況についてアス紙のインタビューで次のように答えている。

「タケは素晴らしい青年だ。向上心が強く、成長するための努力を惜しまない。問題は段階を踏まずに結果を求めることだ。急ぐことはタケのためにならない。まだチームへの適応の段階にあるし、競争力を高めるにはプレーできるポジションの選択肢を増やしていく必要がある」

エメリ監督の現状の評価は、まだレギュラーを任せる段階にないということなのだろう。ただシステム転換の犠牲になったのは久保だけではない。右サイドの定位置を争う最大のライバルで、開幕以来スタメンの座をキープしていたサミュエル・チュクウェゼもバルサ戦を境にベンチスタートが続いている。

代わりに右サイドに入っているのはジェラール・モレーノだ。これは前監督のハビエル・カジェハも昨シーズン、使っていたオプションで、右サイドを起点に頻繁に中央にポジションを移して、攻守のつなぎ役をこなしつつ崩しやフィニッシュの局面にも顔を出すという大車輪の働きを見せている。しかしその攻撃の要が、スペイン代表招集中に左足のハムストリングを負傷。復帰までには3週間ほどかかる見込みで、エメリ監督は攻撃陣の再編を余儀なくされる結果となった。

【動画】久保建英も登場!ラ・リーガ公式が投稿した4~5節の超絶スキル集代役のファーストオプションは、やはりチュクウェゼだ。この序盤、エメリ監督は昨シーズンのチームを土台に戦術を構築してきた。ましてや攻撃の要が欠けたとなると、修正を施す部分を最小限にとどめたいという考えが働いても不思議はなく、そうなるとチュクウェゼが最有力視される。

ただ同時にチュクウェゼにジェラールと同等のパフォーマンスを望むのは酷である。ビジャレアルの攻撃はジェラールを中心に回っていたといっても過言ではなく、4-4-2採用時にはチュクウェゼとも高い補完性を築いていた。ジェラールの右サイドに流れる動きに呼応して、チュクウェゼも細かくポジションを調整。持ち前のスピードで縦に抜けたり、カットインからフィニッシュに絡んだりしてサイドを崩し、ジェラールとともに2トップの左に位置するパコ・アルカセルへのパスの供給役を担っていた。

エメリ監督が序盤、右サイドの人選で久保よりもチュクウェゼを重用したのは、こういった広いスペースを活かせるスピード、鋭く中に切れ込んでのシュートやパス、そしてフィジカル能力で上回っている点を評価してのことだろう。

システム変更によってこの2人によるタンデムも解体されたわけだが、左利きで逆足となる右サイドは、ジェラール向きのポジションでもある。相棒の1人が不在となってこなさなければならない役割が広がった分、自由に動き回れるゾーンも増え、中断直前のアトレティコ戦でも素晴らしいパフォーマンスを見せていた。

しかしその攻撃の要が負傷で戦線を離脱する。前述したようにチュクウェゼがファーストオプションとなるが、ただ彼はジェラールのようなプレーの幅の広さはない。突破力と推進力を武器とするプレースタイルはアグレッシブで迫力もあるが、そのプレーはともすれば一本調子で、彼を右サイドに配置すると、攻撃の選択肢が減少するのは避けられない。

パレホとモイ・ゴメスが主戦場とする左サイドを軸とする攻撃に、切り替えなければならない事態に発展することも十分に考えられる。
そこでクローズアップされるのが久保だ。現時点でジェラールのような周囲への影響力を発揮するまでには至っていないし、ゴール前での怖さも見劣りするが、ボールスキルに優れ、プレーアイデアも豊富。むしろ代役としては彼のほうが相応しいといえる。しかも右サイドバックのマリオ・ガスパールがここ数試合、積極的なオーバーラップの仕掛けから攻撃に厚みを加える働きを見せている。

中盤のパス交換に加わったり、タメを作ってサイドバックの攻め上がりを待ったり、ドリブルやパスで密集地帯を打開するといったプレーは明らかに久保のほうが優れる。マリオのサポートを受けることで得意とするペナルティーエリア近くでプレーする機会が増えれば、持ち味を発揮できる余地も広がってくるはずだ。

形だけの継続路線を推し進めるため定石通りにチュクウェゼをチョイスするのか、戦術の形を維持するために可能性を秘めた久保を抜擢するのか、エメリ監督の決断に注目だ。

文●アドリアン・ブランコ(戦術アナリスト)
翻訳●下村正幸

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